
生理も更年期も日常だから
自分らしく働くために
性別を超えて一緒に考えてみた
2026.02.03
ジェンダーにとらわれず、自分らしく働き、生きるために――。神戸市は2024年度から「私らしさプロジェクト」をスタートしました。今回は、女性の健康課題と仕事の両立をテーマに開かれたイベントを、甲南女子大学の和田莉奈(わだ・りな)と清重葵生(きよしげ・あおい)がリポートします。
働く女性なら見過ごせない、生理の問題
神戸市では、SDGsの原則である「誰一人取り残さない社会」や、17の目標の一つである「ジェンダー平等」の理念を踏まえ、神戸とその周辺地域が持続可能なまちであり続けることを目指しています。働き方や生き方の多様な選択をしやすくするために始まったのが「私らしさプロジェクト」です。
この一環として、2025年11月に「女性の健康課題と仕事の両立、どう向き合う?」というイベントが開催されました。月経や妊娠・出産、更年期など、女性特有の健康問題はいろいろとあります。とくに生理は、多くの女性にとって見過ごせない問題。私の周囲にも、つらい生理痛に悩まされる友人もいて、ひとごとではありません。どんなことが話し合われるんだろうと、イベントに足を運びました。
当日は、神戸で働く女性や市内企業の人事・総務部門担当者などを対象に、男性を含めて41人が参加。冒頭に、神戸市から働く女性の健康課題についてお話がありました。生理痛や更年期など、女性特有の健康課題による社会全体の経済損失は、年間で3兆円を超えると試算されているそうです…!
イベントは3部構成で行われました。まずは「生理痛体験」です。これは専用の装置をつないだ電極パッドを腹部に貼り、腹筋に刺激を与えて生理痛を再現します。弱・中・強と三段階の強さがあり、痛みの重さの違いも感じることができるというものです。
参加した人たちからは、さまざまな感想が飛び交いました。女性からは「私が感じる痛みはもっと強い」という声があがる一方で、男性からは「この痛みがずっと続くのは辛い」「体験が終わってからも違和感が続いている」という声もありました。生理痛には個人差があるように、痛みの感じ方は人によって異なるんだな、と実感します。
私も機器を試してみたところ、いつも感じているよりもやや弱い、じんわりとした痛みがありました。実際の生理痛とは感覚が少し違う気もしましたが、機械でここまで不快感を再現できることに驚きました。性別に関係なく生理痛を体験できるため、日常的に抱えている負担について理解しあう、いいきっかけになると感じました。
女性医師からのアドバイス
次に、 産婦人科医の井岡亜希子医師による講演がありました。
井岡医師によると、毎月の月経周期に伴って女性ホルモンは変動するため、症状が重い場合、月の半分を何らかの不調とともに過ごさざるを得ない人も少なくないそうです。月経前や月経中の症状が生活に支障を及ぼす人は約4~7割とされていますが、症状があっても何も対処していない人が多いのが現状です。井岡医師は治療の選択肢の一つとして低用量ピルや漢方にも触れながら「異常を放置すると子宮や卵巣の病気が悪化したり、不妊の原因になったりするため、早期に婦人科・産婦人科を受診してほしい」と強調しました。更年期症状も女性ホルモンの急激な減少が原因。症状には個人差があり、治療も可能なため、無理せずに婦人科を受診するのがいいとのことでした。
また、女性がかかるがんの第1位は乳がん、2位は子宮がんです。「どちらも国が推奨するがん検診の対象なので、積極的に受診してほしい」と話しました。実際、日本の子宮頸がん・乳がん検診の受診率は、他の先進国と比べて低い水準で、早期受診が重要だということが理解できました。
これから行っていきたい取り組みは?
最後に、月経・更年期症状による悩みや、職場で行っていきたい取り組みについて、グループトークを行いました。
女性から困りごととしてよく挙げられた意見は「生理休暇の制度はあるけれど、使いにくい」というものでした。生理自体を知られたくない、知られると恥ずかしいという気持ちがあり、使用しづらい状況があるようです。接客業の女性からは「仕事上、頻繁にトイレに行きづらい」といった切実な声も上がりました。
男性からは、「何か支援したいけれど、どうしたらいいかわからない」という声が挙がりました。ハラスメントへの不安から、どうやって声をかけたらいいのか、悩むようです。女性側も「男性に話していいのか迷う」と悩みを抱えていました。男女双方に「話しづらさ」があるようでした。
次に、働きやすい職場づくりのために必要な支援について、意見交換をしました。「休憩室を設置する」「決まった時間に休憩をとれる仕組みを作る」「相談できる機関を明確に作る」など、さまざまなサポートの案が出ました。
制度を整えることはもちろん重要ですが、一方で、普段から気軽に話しやすい関係を築き、体調や困りごとを相談しやすい「雰囲気づくり」をしていくことも大切なのかもしれないなと思いました。私たちは大学生で、まだ社会で働く立場にないため、「働きやすい環境」がどのようなものかを具体的に理解できていません。しかし、今回の意見交換を通して、話しやすい環境を整えることで、辛いことや大変なことを気軽に言い出せる職場が増えていけばいいなと感じました。
本プロジェクトは、東京の企業・セルソース株式会社様からのご寄附をいただきながら進めているそうです。神戸市の担当者は「多様な生き方や働き方を応援するまちづくり、女性活躍やジェンダー平等の実現は、自治体だけでは成し遂げられません。趣旨に共感いただける企業や団体の皆さまからの参画・支援を得ながら、今後もこの取り組みを広げていきたいと考えています」と話していました。


和田 莉奈
女性の体や健康について多くのことを学ぶことができ、自分自身の体と向き合う大切さを改めて実感しました。これまで何となく受け止めていた体調の変化や不調についても、正しい知識を持つことで理解が深まり、適切に対処する意識が高まりました。同時に、社会に出て働くようになると健康について配慮し、適切な知識をもって行動することが求められると実感しました。この学びを日々の生活や将来に活かし、自身の健康を大切にするとともに、女性の体や健康に対する理解が社会全体に広がるよう、身近な人との対話や行動を通して貢献していきたいです。
清重 葵生
女性特有の問題と仕事の両立の大変さについて、初めて知ることが多く、学びの多い時間でした。特に、女性が働きやすい職場づくりに向けた取り組みは、数年間で急激に進んでいると感じていましたが、実際は企業や職種によって大きな差があることを知り、もっと話し合いの場が必要だと思いました。また、今までは女性特有の身体的な問題があっても、病院に行きづらいという理由で軽視していましたが、身体の問題は生涯にわたって向き合うべきものであると考えるようになりました。これからは、少しでも不安なことがあれば軽視せずに受診していこうと思います。