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2025年2月4日

広告特集 企画・制作:朝日新聞社メディア事業本部

PR:小野薬品工業株式会社

がん出張授業 高校時代から正しく学び、知っておきたい!「がん」の最新動向と、今からできること

  • 大阪星光学院高等学校
  • 大阪府立茨木高等学校
  • 大阪府立四條畷高等学校

大阪の高校3校で、「出張授業」を実施しました。

日本人の2人に1人がかかるといわれる「がん」。
若い世代から健康と命の大切さについて学び、
がんに対する正しい知識と認識を持つことが重要になっています。
がんを正しく理解し、
誰もがなりうる身近な病気として向き合えるように、
がんの予防・早期発見の重要性、社会の在り方を伝えるため
大阪の高等学校3校で、がん出張授業が実施されました。


講師:松浦 成昭先生
大阪国際がんセンター総長・
大阪対がん協会会長

講師:宮代 勲先生
大阪国際がんセンター
がん対策センター所長

「がん出張授業」では、
がんサバイバーからのメッセージ動画を
視聴しました

若くしてがんと診断され、キャリアアップの中断や葛藤、さまざまな不安、つらい治療を乗り越えたがんサバイバーからのメッセージ動画。診断から現在までの経緯や、その時々の思い、見つめる未来など、リアルな本音が語られています。

「がんを乗り越えて」
声優・タレント 矢方美紀さん

人気アイドルグループSKE48を卒業し、次のステージへと進んだ矢先に25歳で診断された「乳がん」。手術や抗がん剤治療を経て、今なお治療を続けながら声優への道を歩んでいます。

講義テーマ「がんを学ぶ」 授業を行った学校「大阪星光学院高等学校」「大阪府立茨木高等学校」

POINT❶ がんの特徴・現状

■塊になって正常な機能を奪う、自分勝手な
「がん細胞」

松浦先生の授業では、最初に「がんは確率的に、自分自身あるいは家族・身近な人のだれかが必ずかかりうる病気です」と、生徒が「がん」を自分事として捉えられるようメッセージが発せられました。

次に、がんとはどのような病気か、なぜ命に関わるのか、など専門的な内容について写真やイラスト、図などを用いて分かりやすく解説されました。

「がんは、細胞が異常に増えることで塊を作る病気です。本来、人間の体の細胞は周囲と協調しながら、必要に応じて増えて正しい状態を保っています。例えば、皮膚の細胞は毎日少しずつ死滅し、垢やふけになります。その際、死滅した細胞と同じ数の細胞が新たに作られ、見た目には同じ皮膚が保たれます。このように細胞どうしが協調して、全体を一定に保つ仕組みがあります。これが『健康』な状態です」と松浦先生。

「一方、がん細胞は自分勝手な細胞で、周囲の細胞の増減に関係なく増え続けていきます(増殖)。さらに、もともと細胞にはそれぞれが働く場所や役割が決まっていますが、がん細胞はこれらも無視して勝手に広がってしまうのです(侵入)。また、別の場所で増殖して塊を作る(転移)ことで体の正常な機能を奪ってしまいます。放っておくと死に至るので『悪性』という言葉で表されています」と説明。

発生したばかりの頃はミクロンの大きさで、顕微鏡でなければ見ることのできない、がん細胞。それが増えて塊になることで目に見えるほどの大きさになります。スライドには、実際に皮膚にできたがんが、体のさまざまな部位に転移し、肉眼でも見えるほどの大きさになった状態の画像が映し出され、がんの形状が具体的に伝わりました。

  • 図:正常細胞は仲良く暮らしている(健康な状態)
  • 図:がん細胞は勝手に増えて塊を作る(増殖)
  • 図:がん細胞は勝手に居場所から広がる(浸潤)
  • 図:がん細胞は勝手によその土地に住む(転移)

POINT❷ 罹患率と医療の変貌

■2人に1人が生涯のうちにかかる病気。
治療成績の向上で救われる命も増加

日本人のがんの罹患率や生存率について、複数のグラフを用いて説明されました。人口10万人あたりの死亡者数では、がん(悪性新生物)は、1981年から日本人の死亡原因の第1位となっています。

松浦先生は「毎年約100万人が、がんにかかります。これは、日本人の2人に1人が生涯のうちにかかるという数字です。つまり、皆さんの隣に座っている友だちと皆さんのどちらかが将来がんになる可能性があるということ。さらに、毎年約40万人、日本人死亡者の4人に1人ががんで亡くなります」。

あまりにも身近にとらえられる大きな数字に、生徒たちにも驚きの表情が伺えました。

次に示されたのは、がん患者の5年生存率のグラフ。緩やかな右肩上がりの線が見てとれます。5年生存率とは、がんの治療成績の指標。治療から5年間大丈夫ならほぼ治ったと判断されるからです。

グラフを検証すると、1976年の5年生存率は2割台なのに対して、2014年では約6割が生存という結果に。かつて「不治の病」と言われたがんが、検査による早期発見や医療の進歩によって治せる病気へと変わってきているのです。

「データから見ると、現在ではさらに5年生存率は上がって7割近くになっていると考えられます。しかし、たとえ7割が治るようになったとしても、3割の人が5年以内に亡くなっているのです。その事実は重いですよね。この数字を減らしていくことが私たち医師の使命のひとつだと思っています」と、松浦先生は医療従事者としての想いを語られました。

  • 図:がん5年生存率の推移(大阪府がん登録データ)

■治るだけでは“不十分”。がん医療の変貌

がんの実情について紹介した後、がんの診断や治療法について説明。がんの治療は、その「発見時期」によっても変わり、大きさや、転移の有無などによって4つのステージに区別されます。松浦先生は「がんの種類にもよりますが、初期なら90~100%治ります。一方、進行したステージ4なら治療が難しいことが多い。つまり、早く見つければ治せるということです」と話されました。

また、がんを取り巻く医療のあり方は、昔と比べて大きく変貌していると話されました。

「がんは治療せずにいると死に至る病気で、以前は死亡率も高かったことから〝不治の病〟と考えられていました。そのため、何より治すことが優先。がんの治療に苦痛が伴っても仕方がないと考えられていたのです。しかし、がんが〝治せる病気〟になりつつある今は、がん患者の心身もケアする医療へと変わっています」

さらに松浦先生は、生徒たちに語り掛けました。

「もし、自分ががん患者になったら、と考えてみてください。死ぬかもしれない病気と直面して大きな不安を抱えるでしょう。がんが治るのか、治っても元の生活に戻れるのか、などさまざまな不安が生まれます。そんな気持ちを抱えながら、手術や薬などのつらい治療に向き合っていくのです。現代の医療は、こうした患者さんの心の痛みの緩和も含めたケアを重要視しています」

昔と現代のがん医療の違いについても説明されました。

「治療の目的はがんを治すことですが、それだけでは不十分。がんが完全に治るまでには経過観察も含めると長い期間を要します。この間、不安を抱えたり体調不良であったりしながら、仕事や勉強などについても普通の暮らしを営むためには、周囲のサポートが必要です。治療のために学業や仕事などで様々なブランクができる場合もあり、治った後に元の生活に戻るためのサポートも要るでしょう。がんサバイバーという言葉はがんが治った人という意味でしたが、今ではがんを抱えながら生きる人もサバイバーと言います。すべてのサバイバーに、ケアやサポートが求められます」と、医療的な側面だけでなく、社会全体でがん患者を支援する必要性について語られました。がんに対して、自分たちにも考えること、行動できることがあることを知り、生徒たちにとっても自分事として理解が深まりました。

  • 図:がん医療の変貌

POINT❸ がんの治療法

■手術・放射線療法・薬物療法が3本柱。
副作用の小さい薬の開発も登場

がんと診断されるまでの検査についても説明がありました。がんは塊を作りますから、Ⅹ線や超音波などの手段で体内の塊を「かげ」のように映し出す画像検査を行います。そこで疑わしい部分が見つかれば顕微鏡で確認する病理検査を行い、がん細胞の有無を判断します。

そして、がんの治療についても解説。「現在は、手術、放射線、薬が治療法の3本柱です。現時点では薬のみで治療することは難しいことが多く、手術が中心になっています。がんの進行状態や部位などによっては3つの方法を組み合わせることもあります。体にメスを入れることは負担が大きいので、できる限り負担や苦痛が少ないように考えながら治療を進めます」と松浦先生は話しました。

「抗がん剤は副作用が大きいというイメージがありますが、これはがん細胞のように増殖の活発な細胞に効く作用があるため、例えば髪の毛など日々伸びるような活発な細胞にも作用してしまうことが影響しています。しかし、最近はようやくがん細胞にだけ作用する薬も開発が進んでいます」 と医療の進歩についても紹介がありました。

POINT❹ 予防と早期発見が大切

■生活習慣の改善でリスクが減少。
健康なうちから検診を!

講義後半には、がんの予防策にも言及。まずは、がんのリスクを減らす1次予防について。スライドには国で推奨されている5つの行動指針が映し出されました。「禁煙、節酒、バランスのよい食生活、運動、適正体重」。中でも禁煙は重要で、喫煙はさまざまながんのリスクを上げるだけでなく、受動喫煙により家族など周りの人にも影響を及ぼします」と説明。

2次予防は、がんを早期に発見するためのがん検診です。「検診は、健康な時から受けることが大切です。大腸がん、胃がん、肺がんは全員に、女性はさらに乳がんや子宮頸がんの検診を国は推奨しています。いずれも検診で早期発見できれば、生存率が高い。これは非常に重要なことです。市町村は必ず検診を行っていますし、費用の助成などがある所が多いです。皆さんのお父さん、お母さんにも、ぜひ検診の大切さを伝えてください」

授業の最後に、松浦先生はあらためて生徒たちにメッセージを伝えました。「がんはとても身近な病気ですが、治療成績も向上しており、治せる病気になっています。ただ、がんにかかると、さまざまな苦痛を伴うことがあり、精神的にもとても落ち込みます。今、がん患者さんに対してはこれらの様々な苦痛やつらさを和らげ、元の生活に戻れるように、社会全体でサポートするということが重視されています。いつか将来、皆さんの身近な人ががんになったら、支えてあげてください。そして、まずは皆さん自身も、がんにならないために普段から生活習慣を正す、そして定期的にがん検診を受けること。がんについて正しく知り、予防し、みんなで患者さんをサポートしていく社会をつくること。こういうことを、生徒の皆さんも知っていただきたいと思います」

  • 図:5年生存率 大阪府がん登録データ(2007-09年)
  • 図:5つの健康習慣を実践することでがんになるリスクが低くなります国立がん研究センターがん予防・検診研究センター予防研究グループ
    科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

松浦先生へ! 生徒からの質疑応答

大阪星光学院高等学校

2年生195人が参加。がんの治療法や患者への医師の向き合い方など、松浦先生の授業内容に沿った様々な質問が出ました。講義内容を深掘りした質疑に耳を傾けるなど、新たな学びを得ようとする多くの姿がありました。

がんを治療した後の5年または10年の経過観察の間、食事制限や運動制限などはありますか。
一般的には、食事や運動の制限はありません。オリンピック選手が経過観察を続けながら現役復帰できているのが良い例です。ただし、再発への不安や治療にともなう社会活動のブランクなどが負担やネックとなることもありますので、周囲のサポートや協力が重要です。
がんが再発する人と、再発しない人の違いは、どこにあるのでしょうか。
現代の医学では、まだ解明されていません。糸口は見えかけていたり、目印になるものは分かり始めていますが、いずれも研究中です。がん細胞はミクロサイズなので、再発と言うのは、がん細胞が新しくできるのではなく、治療後も検査で見つけられないような少数のがん細胞がまだ残ってしまっているためだと考えられています。
がんが進行しており、治療の見込みがないと分かっている患者さんへの
精神的なケアはどのように行われますか。
治る見込みがない、という状況は患者さんにとって非常につらいものです。個人によって、どのようなケアやサポートが必要かは異なりますので、医師だけでなく看護師や心理士、精神科の医師などで協力して向き合います。患者さんを支えるNPO法人や患者団体などとも協力して、患者さんの望みをかなえたり、前を向いて頂けるように、みんなで支えます。
がんの原因が喫煙の可能性が高い場合に患者さんにとって喫煙が幸せだとしても、禁煙させますか。
喫煙が身体にとって様々な影響を及ぼすことは分かっていますから、禁煙することを勧めます。ただし、強制はしません。どんな治療がしたいのか、どう過ごしたいかは、ご本人が決めることです。リスクを承知の上で、でも喫煙が生きがいだという人もいます。
現在のがん治療の3本柱(手術、薬、放射線)以外に新しい治療法が誕生する見込みはありますか。
現在でも、特定のがんによっては新たな治療法が開発されています。ラジオ波のエネルギーや電場を用いた治療法などがん治療の研究は進んでいますから、これからも新しい方法が出てくると思います。
治療をすれば完治や延命できるにも関わらず患者さんが
ホスピス(終末期施設)利用を望んだ場合はどうしますか。
がんとの向き合い方を決める際には、ご本人やご家族のお気持ちが一番重要です。医療者としては、治療の方法を説明し、治療を勧めますが、決めるのはご本人やご家族です。実際に、がんが見つかっても積極的な治療を望まない人もいます。その人にとって最良な過ごし方を、関係者みんなで考えます。ホスピスは苦痛を和らげる場所ですから、治療や不安でつらい人には必要な場所です。

大阪府立茨木高等学校

生徒たちが企画・運営する授業として、51人が参加。松浦先生の授業の後には、講義の内容についてグループでディスカッションしたり、身近な人ががんにかかった想定でのケーススタディをしたりと、学びをさらに深めました。

がんによる死亡率が上がり続けているのはなぜですか?
医療によって5年生存率が高くなっているのに、不思議です。
がんに掛かる人も増えているからです。もっとも大きな要因は高齢化です。高齢者が増えているからです。1950年頃の平均寿命は50~60歳ですが、2022年は84歳。高齢になるとがんの罹患率が高くなるため、全体として高齢化の影響でがんの罹患率、死亡率も上がっています。生活習慣が欧米化していることや、運動不足、飲酒や喫煙なども影響しています。
子どもと大人で、抗がん剤の効き目に違いはありますか?
大人と子どもでは効き目に差がありますが、それよりも、がんの種類によって薬の効きやすさが違います。子どもは、薬でがんが治っても、薬の作用により将来、別のがんを起こすリスクがあるので、治療法としては薬を避けて手術を優先する傾向にあります。放射線もまた将来的にがんをおこすリスクがあるので、放射線治療はできるだけ避けますし、放射線を使った検査の回数も減らします。一方、増殖性の速いがんには、抗がん剤が効く場合もあります。
がんの原因に「食品添加物」が1%とあります。日本では食品添加物の使用は規制されているのに、どうしてでしょうか。
1960年の古いデータでは原因として挙がっていましたが、現在は改善されています。とはいえ、発がん性が特定できていない添加物もあります。がん対策という点では、添加物を使用しない食品がおすすめです。
がん治療は手術、放射線、薬が3本柱ですが、放射線治療でがんを小さくしてから、
手術でがんを取るのでしょうか?放射線治療ができない部位はありますか?
放射線治療で小さくすると手術で取る範囲も小さくなりますから、時々行われています。放射線治療は全身どこでもできます。(リンパ節などへの)転移のないステージ1なら、放射線治療のみで治すこともできます。放射線の効き方は臓器によっても違いがあり、抗がん剤治療も併せて行う場合もあります。
食品に含まれる発がん性物質が気になります。今、食べてはいけないものはありますか?
昔は、発がん性物質が多量に含まれた市販品もありましたが、今は使用規制があるので何を選んでも大丈夫です。それよりも、タバコやアルコール、食事で言えば、脂っこいものや塩分の多いものは、体に悪影響を及ぼします。野菜や果物を摂取して、バランス良く食べましょう。
抗がん剤は特定の細胞に作用するのですか?
がん細胞のように増殖の速い細胞を狙った薬が一番よく使われますが、髪の毛や爪、皮膚、胃腸、血液の細胞も細胞分裂が活発なので、細胞が障がいされて副作用が起こります。分子標的治療という手法ではがん細胞にしかない標的を狙うのですが、よく似たものが正常な細胞にもあって、なかなか難しいのです。
抗がん剤の研究は、どのように進化していくのでしょうか?
サイエンスの進歩に伴って、様々ながんに対する薬が開発されています。最近では免疫を利用した薬の研究が進んでいます。免疫は本来、異物に対して作用し、がん細胞も異物なのですが、がん細胞は免疫にブレーキをかけてしまいます。そこで、免疫にブレーキをかけないようにする薬の研究・開発が進められました。
免疫はもともと体を守るものなのに、どうしてがん細胞に作用しないのですか?
免疫は自分と他人を区別して、他人を排除するシステムです。免疫がなかなか働かないのは、がんが自分と似たところもあるからです。今の薬は免疫を高めるものですが、研究開発中の薬は、正常な細胞と違うところをがんで見つけて、そこに作用するものを追求しています。
がんはどういう経路で転移するのですか? 転移先はどうやって調べるのですか?
がんは、血液やリンパ液の流れにのって移動して、転移します。がんの転移を調べる方法は、よく転移するところをX線や超音波などで調べる画像検査を用います。全身をチェックできるPET 検査もあります。これらの検査は目で確認できる大きさの転移しか検出できませんが、遺伝子を用いた検出法の研究が進んでおり期待されています。

講義テーマ がんになっても安心して暮らせる社会を 〜行政と協同で取り組むがん対策〜 「大阪府立四條畷江東学校」

POINT❶ がんによる死亡は増えている?

■死亡数は増、でも実質は減?データから読み解く、現代社会のがん

講義は、宮代先生の自己紹介と大阪府のがん対策のシンクタンクと言えるがん対策センターの紹介からスタート。宮代先生が胃がんの名医として歩んでこられた軌跡を、ユーモアを交えて語り、緊張していた生徒たちの表情が一気にほぐれました。

最初に示されたスライドは、年々、右肩上がりに増加を示すがんの死亡数推移のグラフ。日本における死因、特にがんに関わる状況について、さまざまなデータを用いて説明されました。

「今から40年以上前の1981年、がんは日本人の死因の第1位になりました。それ以降、がんで亡くなる人の数は増え続けています。がん対策が社会の重要課題であることは間違いありません。ただし、ここで見逃してはいけないポイントが日本の高齢化です。人口推移のグラフから一目瞭然ですが、日本では若い世代が減り、高齢者の人数が増えています。がんは、高齢者に多い病気ですので、高齢者が増えるとがん患者数、そしてがんによる死亡数も増えます」

「人口10万人あたりのがんによる死亡数であるがん死亡率、そして人口10万人あたりの新たに診断されたがんの数であるがん罹患率が上がり続けているのかを、高齢化の影響を除いて検証するには年齢調整、つまり人口構成を過去から現在まで同じと仮定して比較します。今は2015年の人口構成が基準に用いられるのですが、人口構成をそろえて推移をグラフ化すると、実際にはがん全体、そしてがんの種類別にみてもその多くで死亡率が減っていることが分かります。また、がんは高齢者に多い病気ではありますが、80代以上の死因は多岐にわたり、死因に占めるがんの割合が増え続けるわけではないため、高齢者においてがんに偏った対策にならないようにすることもポイントになります。このように、がんの現状や実情を読み解くには、さまざまな角度から検証することが大切です」

宮代先生の分かりやすい解説で、1つのデータや視点からではなく多面的にがんをとらえることが必要であることを理解し、生徒たちにも納得の表情がうかがえました。

  • 図:我が国における死亡率の推移(主な死因別)出典:文部科学省がん教育推進のための教材
  • 図:全がん 男女計出典:第4期大阪府がん対策推進計画

POINT❷ がんによる死亡を減らすには?

■「がんで死亡」を減らすには「治る人を増やす」だけでなく「予防」することが重要

医療の進歩などによりがんで亡くなる方は実質的には減少してきているとはいえ、生涯で2人に1人ががんになり、毎年、日本人で亡くなる方の約4人に1人はがんで死亡するという状況に対し、様々な対策が求められています。

がんの対策において最も重要なポイントは、がんによる死亡を減らすこと。加えて、がん患者ががんと診断された後、闘病中だけでなくその後の社会生活においても患者・家族を支援することもポイント。そこで、宮代先生から生徒たちに投げかけられました。

「がんによる死亡数を減らすには、どうしたら良いでしょうか?」

先生の問いに、生徒からは「早期発見」との声が挙がりました。多くの生徒が同意するようにうなずきます。宮代先生はその答えにうなずきながら、説明を続けました。

「早期発見は早期治療につながるので、がんが治る人を増やすことにつながります。がん死亡を減らすことになるので、これも正解の1つです。ただ、早期発見はがんそのものを減らすことではありません。がんによる死亡を減らすには、早期発見や治療により治る人を増やすことが重要ですが、まずはがんになる人を減らすという視点、つまり予防も重要です。がんを予防することが、がんによる死亡を減らす第一歩になります」

■生活習慣改善・ワクチン接種でがんを予防しよう

生徒たちにとっても、がん予防という忘れがちな視点に、講義への関心がさらに高まりました。宮代先生からは、どのような要因が予防につながるのかについても説明がありました。「予防可能な危険因子」のグラフには、上位から「喫煙」「感染」「飲酒」と続きます。

「このグラフに示されたものは、日本人のがん死亡に関わる予防可能な要因、集団寄与危険割合、と呼ばれるものです。がん死亡の約4割を占めるというデータが出ています。要因を除いて生活しても完全に避けられるわけではないということでもありますが、4割も防げるかもしれないというのは大きな数字です」と、行動によって多くのがんを防げる可能性があると話します。

「たばこやお酒は分かりやすいと思いますが、『感染』はイメージできない人も多いでしょう。実は、ウイルスや菌の感染でがんになることもあります。日本人では、B型やC型の肝炎ウイルスによる肝臓がん、ヘリコバクター・ピロリ菌による胃がん、ヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸がんなどが挙げられます。たとえば、HPVワクチンを1万人が接種した場合、接種しなければ子宮頸がんになっていた約70人ががんにならずに済み、約20人が子宮頸がんで死亡せずに済むと試算されています。接種後の副反応が存在するのも事実ですが、物事においては益と害があるので、そのバランスを考えなければなりません。副反応だけに注目して、避けられたはずのがん死亡が増える事実を無視してはなりません」

喫煙とともにがんによる死亡の大きな要因の一つに「感染」があること、そして、ワクチンの接種などにより、避けられるがんを防ぐことの重要性が、しっかりと伝えられました。

さらに、がん検診についても説明がありました。がん検診におけるポイントは、早期発見等によってがん死亡率が減少することが科学的に検証されていることであること、検診においても益と害のバランスが重要で、適切に行われないと害の方が大きくなることがわかっていると具体例を示して説明がありました。一方、昔は不治の病と言われていた「がん」ではあるけれど、早期に治療を行うことでがん死亡を避けられると、適切な検診を受ける意義が語られました。

「人生は約3万日です。そう、3万日しかないのですから、完璧に生きなくても良いけれど、意義のある人生を面白く送って欲しいと思います」と、宮代先生から生徒へのメッセージが伝えられ、講義を終えました。

  • 図:指針で定めるがん検診の内容
  • 図:全がん死亡における各リスク要因の人口寄与危険割合(%)出典:第4期大阪府がん対策推進計画

宮代先生へ! 生徒からの質疑応答

大阪府立四條畷高等学校

1年生351人が参加。さまざまなデータを用いた宮代先生の授業は、所々にクイズなどを交えながら、先生と生徒とが活発に対話しながら進みました。質疑応答では次々と手が挙がり、授業への関心の高さが伺えました。

「大腸がん」はどうして「欧米のがん」というイメージなのでしょうか。
日本人には胃がんが多く、欧米人には大腸がんが多い、と長らく言われてきたからでしょう。現在、日本で最も多いがんは大腸がんであり、食生活の欧米化によるライフスタイルの変化が要因と考えられています。今や、大腸がんの死亡率や罹患率が減っているアメリカよりも状況は悪いのですが、大腸がんは欧米のがんと思っている人も少なくないようです。
大阪は全国と比べてがん検診の受診率が低いのはなぜでしょうか。
複数の要因が挙げられています。たとえば、大阪には町工場や中小企業、自営業の人なども多く、人手や時間の都合がつかなくて受診のタイミングを逃す人が多いかもしれません。一方で、検診で精密検査を受診するよう指摘された際の精検受診率は検診受診率ほど低くないので、最初の検診受診を促す対策がより効果的と考えられます。
複数の国どうしが協力しあってがん対策をすることは有効でしょうか?
国際機関があって大阪府も協力しています。一方、がん対策は国ごとや地域ごとなど範囲をある程度絞って行うのが有効だと考えています。地域によって多いがんの種類が異なっていることや、生活習慣や規制なども異なってくるので、それぞれの地域で対策を考える必要があるからです。国内においても、たとえば大阪府と東北地方や沖縄県などでは罹患するがんの傾向が異なります。地域ごとの特性や要因を検証して取り組むことがポイントになります。
がんによる死亡の要因として「感染」が挙げられていましたが、
具体的にはどのような感染症ですか?
日本人では、B型やC型の肝炎ウイルスによる肝臓がん、ヘリコバクター・ピロリ菌による胃がん、ヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸がんなどが挙げられます。喫煙とともにがんによる死亡の大きな要因となっている感染に対しても、ワクチンや除菌などの対策があります。まずは避けられるがんを防ぐことが重要です。
子宮頸がんになってしまった場合、卵子には悪い影響を受けるのでしょうか?
子宮頸がんに罹ることと、卵子への影響とは別の話です。ただし、がんを治療するために子宮や卵巣を切除する場合や薬物療法などを受ける場合、影響が懸念されるため、治療を受ける前に、卵子を温存しておくかどうか、説明を聞いて判断するということが重要です。
体力のない高齢者でも、副作用がつらい薬物治療に耐えられるでしょうか?
薬物療法が臨床現場に導入される際には、RCTと呼ばれる無作為化比較試験、つまり研究対象者の背景をそろえて比較するという方法を主軸に検証が進められるのですが、臨床試験においては多くの場合、要因が複雑になる高齢者は含まれません。そのため、副作用や効果などの臨床試験のデータが高齢者においてどのようにあてはめられるかを検討し、全身の状況を考慮して治療法を決めることになります。
「二次がん」というのは、最初のがんと類似した特徴を持っているのでしょうか?
それとも別物なのでしょうか?
二次がんは、もとのがんの治療が原因となってできる新たながんを言います。治療によって別のがんが必ずできるわけではありません。たとえば、通常の放射線治療によってがんが発生する可能性は、治療を受けていない人より若干高いことはわかっていますが、重粒子線治療では必ずしもそうではありません。一方で、治療の有無によらず、複数のがんを同時あるいは後日発症する場合もあり、多重がんと呼ばれます。

講義を終えて

今回の出張授業を終えた後、参加した高校生に行ったアンケートをご紹介します。

「今回の特別授業を受けて、がん患者さんに対する支援・サポートついての意識は変わりましたか?」と質問したところ、この設問に回答した3校の生徒数合計(524人)のうち、24.4%が「大きく変わった」と答え、「少し変わった」と答えた43.1%と合わせて、70%近くの生徒の意識に変化があったことがわかりました。

また、「今回の特別授業を受けて、行動してみようと思うことはありますか(複数回答可)」という設問に対しては、3校とも60%以上の生徒が「大人になったらがん検診を受ける」と回答。続いて「家族や友人・知人に授業で学んだことを話す」「家族や友人・知人にがん検診を受けているか聞く」の回答が順に多くを占め、生徒一人ひとりが講義や質疑応答の内容をふまえて、がんに対する知識や対策の輪を広げていこうとする意欲が伺えました。また、「がんについてさらに詳しく調べてみる」と回答した生徒も多く、生徒が今後の進路を考える上でも大きな力になったことがアンケート結果から分かりました。

図:がん患者さんに対する印象やイメージは変化しましたか?
【共 催】
小野薬品工業株式会社・朝日新聞社メディア事業本部
【後 援】
文部科学省、大阪府、大阪府教育庁、日本医師会、大阪府医師会、大阪対がん協会、日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会