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2026年2月4日

広告特集 企画・制作:朝日新聞社メディア事業本部

PR:小野薬品工業株式会社

がん出張授業 高校生もがんの正しい知識を持とう!大阪の5校で最新動向を学ぶ出張授業

  • 大阪府立 大手前高等学校
  • 大阪の高校5校で、
    「出張授業」を
    実施しました。

  • 大阪府立 清水谷高等学校
  • 大阪府立 交野高等学校
  • 私立 四天王寺高等学校
  • 私立 桃山学院高等学校

日本人の2人に1人がかかるといわれる、
身近な病気となった「がん」。
若い世代にがんに対する正しい知識を伝え、
健康と命の大切さを考えてもらおうと、2025年度も大阪の5校の
高等学校で「がん出張授業」が実施されました。
生徒たちは、がんの特徴や予防・早期発見の重要性をはじめ、
がんへの向き合い方などについて理解を深めました。

大阪国際がんセンター総長・
大阪対がん協会会長
松浦 成昭先生
大阪国際がんセンター
がん対策センター所長
宮代 勲先生

「がん出張授業」では、がんサバイバーからのメッセージ動画を視聴しました

若くしてがんと診断され、キャリアアップの中断や葛藤、さまざまな不安、つらい治療を乗り越えたがんサバイバーからのメッセージ動画。診断から現在までの経緯や、その時々の思い、見つめる未来など、リアルな本音が語られています。

「がんを乗り越えて」声優・タレント 矢方美紀さん

人気アイドルグループSKE48を卒業し、次のステージへと進んだ矢先に25歳で診断された「乳がん」。手術や抗がん剤治療を経て、今なお治療を続けながら声優への道を歩んでいます。

講義テーマ「がんを学ぶ」 授業を行った学校「大阪府立大手前高等学校」「大阪府立交野高等学校」「私立四天王寺高等学校」

POINT がんの特徴

■がんってどんな病気?
知っておきたい特徴と原因

松浦先生は、「がんは、これからの人生で遭遇する可能性の高い病気です。だからこそ、正しい知識を持ってほしい」と呼び掛け、講義をスタートさせました。

まず、「がん」とはどのような病気なのでしょうか。松浦先生は「がんは塊りを作る病気。細胞が増えて塊りになったものががんです」と説明します。医学的に「悪性腫瘍」と呼ばれるがんは、がん細胞がどんどん「増殖」するため、塊りが大きくなり、周囲の組織を圧迫したり、臓器の働きを妨げたりします。さらに厄介なのは「転移」です。転移とはがんが最初にできた所から別の場所に広がることで、広がった所でまた塊りが大きくなります。松浦先生は、実際のがんの写真を示しながら、「増殖と転移という特徴のために、がんは放置すると命にさしさわる病気です」と語りました。

この厄介ながんは、なぜできるのでしょうか。松浦先生によるとがんの原因は、細胞の中にある「遺伝子」の異常だそうです。遺伝子は私たちの体の設計図で、細胞の働きをコントロールしています。

「正常な細胞の遺伝子の一部が変化して遺伝子異常がおこることががんの原因です。遺伝子の変化には、喫煙や不摂生な食事、アルコール、肥満、ウイルス、放射線など生活習慣や環境要因が関係しています。遺伝子異常が長年にわたって蓄積することで、がんが発生するのです」

  • 図:なぜがんができるのか?

さらに松浦先生はこう続けます。「がんが遺伝子の異常で起こると聞くと、『親から子に遺伝するのでは』と不安になる方もいるかもしれませんが、親から子に遺伝するがんは全体の1割程度です」。遺伝子には、親から受け継ぐ「生殖細胞遺伝子」と、遺伝しない「体細胞遺伝子」があります。がんの多くは後者の異常によって起こるため、子どもに直接伝わることは少ないと言います。ただし、生殖細胞遺伝子に異常がある場合は、がんのリスクが高くなることも。その場合は、複数の部位にがんができる可能性もあるため、注意が必要です。

  • 図:がんは遺伝子の以上によりおこるが、親から子に遺伝するわけではない

POINT がんの死亡率・罹患率

■日本人の2人に1人が経験するがん 
今は7割が治る時代に

次に松浦先生は、「日本人の死亡原因の第1位はがんです」と話し、統計データをもとに日本のがん死亡率や罹患率について解説しました。厚生労働省の統計によると、1981年以降、がんによる死亡率(人口10万人あたりの死亡者数)は他の病気を上回り、現在も増加傾向にあります。2022年には年間約100万人の人ががんになり、約40万人が命を落としているそうです。

「生涯でがんにかかる確率は、日本人の2人に1人。男性では3人に2人とされており、非常に高い確率です」という先生の言葉に、生徒たちは驚きつつ、少し不安気な様子を見せていました。

  • 図:我が国のがん死亡率・罹患率の年次推移
  • 図:がんは日本人の死亡原因の第1位、毎年40万人ががんで亡くなっている

がんは高齢者に多く、男性では7割以上、女性でも6割以上が65歳以上の高齢者です。ただし40〜64歳の女性では、乳がんや子宮がんなど女性特有のがんが多いので、割合が増えています。

「がんは、かつては不治の病と言われていました。確かに今でも命に関わる病気ですが、医療の進歩により、助かる人も増えています」と松浦先生。1975年の段階では、治療成績の指標である「5年生存率」は27%。つまり、4人に1人しか助かっていませんでしたが、2014年には64%にまで上昇。現時点では、7割ほどと考えられているそうです。

「平たく言えば、およそ7割は治るということ。しかし、裏返すと3割は亡くなっているのです。私たちはこれをゼロにしたいと思っています」と先生は語り、治療の進歩に希望を見せつつ、さらなる改善への意欲を示しました。「特に小児がんでは、9割が治る時代になっています。多くのがん患者が元気に回復し、社会で活躍していることを知ってほしい」と話しました。

  • 図:がんの治療成績の向上

POINT がんになったら

■がんとの長い旅路を、
治療と支え合いでともに歩む

では、私たちはがんに、どう向き合えばよいのでしょうか。病院では、「診断」と「治療」の2つを行います。がんかどうかを確定させ、がんがどれくらい進行しているのかを見つける診断。治療では、3本柱である「手術」「放射線」「薬」を組み合わせて対応します。

「手術はがんの塊りを取り除く方法。放射線はエネルギーでがん細胞を破壊し、薬は体の中でがん細胞を攻撃する方法です。最近では特に薬の効果が向上していますが、薬だけでがんをやっつけることは難しく、複数の治療法を組み合わせることが一般的です」

ここで、松浦先生は薬の進歩について、少し紹介しました。まず、昔から使われている「殺細胞性抗がん剤」は、DNAを切断することで、がん細胞を殺す薬です。「ホルモン治療薬」は、ホルモンが関与するがんに対して、ホルモンの働きを抑えます。「分子標的治療薬」は、がん細胞の特定の分子を狙い撃ちすることで、正常細胞への影響が少ないのが特徴です。「免疫治療」は、患者さん自身の免疫を活性化してがんを攻撃する治療法です。このように研究の成果によって様々な薬が開発され、少しずつ治療成績が良くなってきたのです。

  • 図:薬の進歩はめざましい

病院での治療が終わっても、すぐに「完治」とは言えないのが、がんです。「5年生存率」とあるように、がんは再発の可能性があるため、5年間の経過フォローが不可欠です。乳がんや前立腺がんなど一部のがんでは、10年間の経過観察が必要な場合もあります。

  • 図:もしがんが見つかったら

「がんは長い付き合いになる病気です。そのため、がんになったことを、『cancer journey(がんの旅)』と呼ぶこともあります。治療中の患者さんは、身体的な痛みだけでなく、精神的な不安もたくさん抱えています。命に関わる不安はもちろん、手術の痛みや生活への影響、学校や仕事、家族、お金などたくさんの悩みが重なります。がんを治療するだけでなく、治療が終わった後に、元の生活に戻ることが本当のゴールなのです」

そのために不可欠なのが、周りのサポートです。病院をはじめ、周囲の人々の支えが欠かせません。松浦先生は、「もし周りの人ががんになったら、『心配しなくてもいいよ』と励まし、あなたに手伝えることを手伝ってあげてください」と優しく呼び掛けました。

  • 図:Cancer journeyの終点 がんが治ることではない

がんは治る病気になりつつありますが、残念ながら亡くなる方もいます。先生は死についても、静かに語りました。

「人間はいつか、必ず死にます。がんになって亡くなられる方は、普通より早くお迎えが来ますが、交通事故死などと異なり、残された期間が推定できます。だからこそ、残りの時間を有意義に過ごし、悔いのない生活を送れるよう手助けが必要だと思っています」

POINT がんの予防

■がんは誰にでも起こりうる 
正しい生活習慣と検診で未来を守ろう

最後に、がんの予防に言及した松浦先生。まず、がんの主な原因について、「喫煙が3割、食事の不摂生が3割、アルコール、食品添加物、運動不足など、様々な要因が少しずつ関係しています」と説明しました。なかでも喫煙は最大のリスク要因で、喉のがんはリスクが32倍に。「受動喫煙」でも肺がんリスクが約2倍になると指摘しました。

  • 図:がんを予防できないか?

日本政府は、がん予防のために以下の5つの健康習慣を推奨しています。それは、①禁煙②節酒③適切な食生活④適度な運動⑤適正体重です。

「これらを守ることで、がんのリスクは大きく下がります。たとえば禁煙だけで約3割、運動で約2割、食生活の改善で1割以上減少することがわかっています。すべてを実践すれば、がんのリスクは約半分にまで抑えられるのです。全部を完璧に守るのは簡単ではないかもしれませんが、ぜひ頭に入れておいてください」

  • 図:がんの予防 原因を除いてかからないように

さらに、「がんを早期に発見して早期に治療すると、治療成績が良い」ことをデータで示しながら、「40代以上になれば(子宮頸がんは20代以上)、健康であっても検診に行ってほしい」と訴えました。

最後に松浦先生はこう締めくくりました。「がんは、誰にでも起こりうる病気です。自分がなるかもしれないし、周りの大切な人がなるかもしれません。だからこそ、正しい知識を持って予防に取り組み、もしがんになったときは、支え合ってほしいと思います」

講義テーマ「がんになっても安心して暮らせる社会」 授業を行った学校「大阪府立清水谷高等学校」「私立桃山学院高等学校」

POINT がんによる死亡は増えている?

■死亡数は増加、でも死亡率は減少?
データから読み解く、がんの現状

かつて胃外科で名を知られ、現在は大阪のがん対策のシンクタンクであるがん対策センターを率いる宮代勲先生。少し緊張気味の生徒たちを前に宮代先生は、M-1にも挑戦した甲南大学の漫才ロボットやわろてまえ劇場と名付けた笑いの研究でテレビ等に出演したエピソードなどを明かしつつ、和やかな雰囲気で講義をスタートさせました。

最初に宮代先生は、がんの死亡者数が右肩上がりに増加するスライドを示しながら、「現在、4人に1人が、がんで亡くなっています。数が増えているのはなぜでしょうか?」と問い掛けました。

  • 図:主要死因別の死亡数

理由は、「日本の高齢化」と宮代先生は明かします。

「がんは高齢者に多い病気なので、高齢者が増えるとがん患者数、そしてがんによる死亡数が増えます。がんで亡くなる人の数は増え続けており、がん対策が社会の重要課題であることは間違いありません」

宮代先生はさらに、人口10万人あたりのがんによる死亡数である「がん死亡率」を、人口の年齢構成に影響されないよう過去から現在まで基準人口(2015年)と同じと仮定した「年齢調整」のグラフを示してこう話しました。

  • 図:男性 悪性新生物の主な部位別にみた年齢調整死亡率の年次推移
  • 図:女性 悪性新生物の主な部位別にみた年齢調整死亡率の年次推移

「このグラフをみると、男性ではすい臓がん、女性ではすい臓がん、大腸がん、乳がん、子宮がんなどは減っていませんが、ほとんどのがんで、死亡率が下がってきていることが分かります」

ここで宮代先生は、がんは高齢者に多いとはいえ、80代以上の死因は多岐にわたるため、「死因に占めるがんの割合が増え続けるわけではない」と指摘。つまり高齢者においては、がんに偏った対策にならないようにすることもポイントだとのこと。「治療を軸とする適切ながん医療につなげるには、がんの現状や実情を読み解き、さまざまな角度から考察することが大切です」と強調しました。

宮代先生の説明を受け生徒たちは、「がんによる死亡数が増えている」という1つの事象に対しても、多面的にとらえることが必要だと学んでいました。

POINT がんによる死亡を減らすには?

■「がんで死亡」を減らすには「発見」だけでなく、
「予防」することが重要

人口の年齢構成の影響を考えれば実質的にがんの死亡率は減少してきているとはいえ、生涯で2人に1人ががんになり、日本人の約4人に1人はがんで死亡するという状況に対し、様々な対策が求められています。

がんの対策において最も重要な目標は、がんによる死亡を減らすこと、そして、がんと診断された場合にがん患者さんが元気に過ごす期間を延ばすことだと宮代先生。ここで先生は、こんな質問を投げ掛けました。

「がんによる死亡を減らすには、どうしたら良いでしょうか?」

答えは2つだという先生に、生徒からはまず、「早期発見」との声が挙がりました。宮代先生はその答えにうなずきながら、こう説明を続けます。

「早期発見は早期治療につながり、がんが“治る人”を増やせます。ですから、がん死亡を減らす方法の正解の1つです」

ただ、早期発見は、がんそのものを減らす訳ではありません。宮代先生が、生徒たちにほかの答えを促しました。すると生徒からは、「がんにならないこと」との答えが出ました。

「そうです。がんによる死亡を減らすためには、早期発見や治療も重要ですが、まずはがんになる人を減らす視点、つまり“予防”が肝心です。がんを予防することが、がんによる死亡を減らす第一歩になります」

■生活習慣改善・ワクチン接種で
がんを予防しよう

日本では2016年から全国がん登録が始まり、新たにがんと診断される数である罹患数が把握できるようになりました。公表されている最新の値である2021年の罹患数は約100万人。1位が大腸、2位が肺、3位が胃と続きます。なお、2020年が少なくなっていますが、いわゆるコロナ禍で診断数が減少したと考えられており、2021年以降にどのような影響が見られるかを注視しています。

  • 図:全国がん登録 日本の罹患数把握が可能に

ここから“予防”にポイントを移した宮代先生は、生徒たちに、「がん死亡に関わる3大危険因子はなんでしょうか?」と質問しました。

生徒たちから珍回答に続けて正解の「タバコ」「お酒」という回答が出ましたが、残り1つが出ません。「それは感染です」と宮代先生。「肝がんの肝炎ウィルス、胃がんのヘリコバクター・ピロリ菌、子宮頸がんのヒトパピローマウィルス(HPV)、白血病に関わるウィルスなど、感染が要因となるがんも少なくありません」と話しました。

続けて、日本人のがん死亡に関わる“予防可能な危険因子”のグラフを示し、「これらの危険因子全体では約40%。つまり、がん死亡の約4割にこれらのわかっている危険因子が関わっているというデータです。これらに気をつけても約6割は防げないとも言えますが、だからこそ防げる4割の危険因子を認識し、賢く行動することが重要です」と強調しました。

  • 図:予防可能な危険因子 日本人のがん死亡

肝炎ウィルスに対する増殖抑制や排除、ピロリ菌の除菌に対し、HPV感染についてはワクチンが重要であるとし、「HPVワクチンを1万人が接種した場合、接種しなければ子宮頸がんになっていた約70人ががんにならずに済み、約20人が子宮頸がんで死亡せずに済むと試算されています」と詳細に語りました。

「ワクチンは健常な人に接種する訳ですし、全員に効く訳ではなく、副反応も低いながらあります。ただネガティブな面だけを見るのではなく、全体のバランスを考えて選択しなければなりません。副反応だけに注目することで、将来の避けられたはずのがん死亡が増える事実を無視してはなりません」

「子宮頸がん検診で十分なのでは?」という疑問に対し、宮代先生は「ワクチンも検診も、両方必要です」ときっぱり。

「検診は、がんが進行している場合に行われる子宮摘出などを避けるために、上皮内がんを含む前がん病変で早期に発見するもので、子宮が温存される円錐切除という手術を受けることになります。年間約14,000件の手術が行われていますが、早産が一般の約4倍の約20%に増え、新生児死亡や低出生体重児など、次の世代にも影響が及びます。日本では男性へのHPVワクチンは国の定期接種対象外であり、女性だけとのイメージが強いですが、HPVは女性だけの感染症ではありません。男性は女性に感染させるだけでなく、男女とも肛門がんや中咽頭がんに関連するウィルスです。」

  • 図:HPVワクチン 子宮頸がん検診

さらに、がん検診についても追加の説明がありました。がん検診は健常な人を対象としていることから益と害のバランスが重要であること、科学的な方法によってがん死亡率の減少が検証されていることがポイントになること、頻度の少ないがんではバランスがとりにくくなるため国によって事情は異なり、日本では、胃、子宮頸、肺、乳、大腸の5つがそれぞれの方法とともに推奨されていることなど。一方、最近、海外で検証された「過剰診断」の例を挙げ、闇雲にがんを見つける対策をすれば良いのではなく、益と害のバランスが大切だと強調しました。

昔は不治の病と言われていた「がん」も、予防や早期発見・治療で死亡を避けられる今の時代。治療においては病気を治すことだけに留まらず、患者さんが元に近い社会生活に戻れるよう支援することが重要です。宮代先生はそのために、「治療だけでなく,仕事との両立支援等,生活を送るなかで必要な支援を受けられる環境の整備が大切」と主張します。

最後に宮代先生は、「現代ではたくさんの選択肢や情報があるので、どれが適切な方法で、どれを選ぶのか、しっかり判断して決断しなければなりません。人生は約3万日、夢中になれるものを見つけ、尊敬できる人を自分の輪の中に入れ、完璧を目指すのではなく面白く有意義な人生を送ってください」と自分が好きだという言葉を引用して、生徒たちに優しく呼び掛け、講義を終えました。

質疑応答

大阪府立大手前高等学校

  • 豊かな発想と視点から、
  • がん研究や医療の最前線にもフォーカス

がんに対する正しい知識を学んだ1年生360名からは、講義後、未来のがん医療や免疫研究などについての質問が出ました。松浦先生は、若者たちの豊かな発想力や新鮮な視点から出る質問に感心しつつ、丁寧に答えられました。

  • 年齢によって、がんの治療法は変わるのでしょうか?
    基本的ながん治療の方針は、年齢に関係なく同じです。ただし、治療法は年齢や生活背景などを踏まえ、なによりも患者さんのご希望に沿って決定しています。たとえば乳がんの場合、昔は乳房をすべて切除するのが一般的でしたが、現在では部分切除や温存療法が選ばれることもあります。特に若い方は、外見や将来の生活を考え、乳房を残したいという希望が強く、私たちもそれをとても大事なことだと考えています。放射線治療でも、年齢や体力に応じて照射範囲を調整することがあります。
  • ノーベル賞をとるような発見が、がん治療をどのように進化させていますか?
    たとえば、近年ノーベル賞を受賞した研究の中には、免疫反応を制御する「PD-1」分子を発見したものがあります。この発見をもとに、「免疫チェックポイント阻害薬」が開発されました。すでに10年以上前から実際の治療に使われています。こうした研究成果が積み重なり、治療成績が少しずつ進歩しているのです。
  • 大阪のがん検診の受診率は低いと聞きました。受診率を上げるために、どのような取り組みが行われていますか?
    日本全体の各がん検診の受診率は40%ほどで、決して高くありません。ご指摘の通り、大阪は以前、全国最下位でした。私たちは低受診率を改善しようと、行政に働き掛けてきました。たとえば、日曜日や夕方の検診や、託児所の設置などをお願いしていたのです。費用面も同様に訴え続け、現在では大阪府内の43市町村のうち19自治体で無料で受けられるようになっています。こうした取り組みによって、少しずつ受診率は改善されています。
  • 笑うとがんになりにくいというのは本当ですか?
    私たち大阪国際がんセンターも、「笑い」が免疫細胞を活性化し、がん細胞を抑制するのではないかと考え、「わろてまえ劇場」というお笑いの提供をして、その時に「笑いとがん医療の実証研究」を行いました。落語家さんや芸人さんを招いた公演の後、患者さんの血液を採取して変化を調べたところ、少し改善が見られました。ただし、科学的な証明までは難しいところですね。笑いががんに良い影響を与える理由としては、免疫機能の活性化や交感神経・副交感神経などが関係していると考えられます。早くから緩和ケアを行って、つらい症状を軽減すると治療成績が良くなったという報告があるので、楽しく過ごしてもらうことは大切と思っています。「笑っていればがんにならない」「笑えばがんが治る」とまでは言えないのが現状です。
  • がん治療の今後の展望について、教えてください。
    「がんは治りますか?」という質問をよく受けますが、現時点で完全に治すのは難しいと考えています。がんの最大の原因は高齢化であり、長生きすることで細胞にさまざまな変化が起こり、がんが発生しやすくなるからです。「がんにならない=予防」はもっと難しく、だからこそ今は、「早期発見・早期治療」が最も重要です。
    薬だけで大きな腫瘍を取り除くのは、当面は難しいでしょう。ただし、目に見えないがん細胞に対しては、新たな薬などの力で抑えられるようになってきています。外科医だった私ですが、「転移をなくしたい」という夢のために、研究職に転換しました。転移がなければ、手術だけでがんを治すことが可能になりますからね。10年、20年先になるかもしれませんが「転移をなくすこと」はきっと実現できると思っています。いつの日か、薬だけで治療が完結する時代が来ればいいですね。

大阪府立交野高等学校

  • がんの特性や医療を正しく知り、
  • 予防や検診と向き合う姿勢を育む

参加した1年生170名は、松浦先生の講義で、がんの特性や医療の現状への知見を広めました。質疑応答では、がん予防や治療についてより詳しい答えを求めるなど、がんを自分事として捉え、学びを深める姿が見られました。

  • がん予防のための良い生活習慣には、どんなことがありますか?
    がん予防には、タバコを吸わないこと、アルコールをほどほどにすること、食事の内容に気をつけること、体を動かすこと、そして体重を適正に保つことが重要です。一言で「良い食生活」というと難しいですが、塩分の多い食事は胃がんのリスクを高め、脂っこいものばかり食べると大腸がんになりやすいとされています。塩分の高いものや、脂っこいものを完全に控える必要はありませんが、野菜や果物をたくさん摂って、様々な食品をバランスよく食べてくださいね。
  • 若いうちから受けるべきがん検診はありますか?
    日本政府が推奨しているのは子宮頸がん検診で、20歳からの受診が勧められています。それ以外のがん検診は、基本的に40歳以上が対象です。30代まではがん発症率は低く、積極的な検診は勧められていません。若いうちは、検診よりも生活習慣を整えて、予防に努めることが大切です。40歳になったら、たとえ健康でも検診を受け始めるのがよいでしょう。
  • 子宮頸がんのワクチンには、どんな効果がありますか?
    子宮頸がんは、主にHPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスが原因で起こるがんです。子宮頸がんワクチンは、このウイルスを予防するためのもので、HPVに対する抗体をつくることで、がんの原因を断つことができます。ウイルスを退治できる薬はほとんどないため、ワクチンは非常に重要な役割を果たします。ただし、HPVには多くの種類があり、ワクチンだけで100%予防できるわけではありません。HPV以外の原因による子宮頸がんもまれにあるため、ワクチン接種に加えて定期的な検診を受けることが推奨されています。
  • がんが薬だけで治る日は来るのでしょうか?
    現時点では、大きな腫瘍を薬だけで小さくするのは、簡単ではないと考えられています。そのため今は、手術や放射線治療によって腫瘍を取り除いたり、縮小させたりする方法が中心です。小さな腫瘍であれば薬で対応できる場合もあります。未来では、もしかすると、薬だけでがんが治るようになっているかもしれませんね。
  • 一生がんにならないようにすることは可能ですか?
    残念ながら、がんを一生完全に防ぐことは難しいと考えられています。子宮頸がんはワクチンで予防できるがん(100%ではない)ですが、それ以外のがんについては、現時点で予防できるワクチンはありません。ワクチンは体がウイルスを記憶する免疫という仕組みを利用して予防する方法ですが、時間が経つとその記憶が薄れてしまうこともあります。講義でもお伝えしたように、生活習慣を整えることでがんのリスクを半分程度に減らすことはできますが、完全に防ぐことはできません。ですから、現時点でのがん対策は、予防とともに検診によって早期に発見することが大切なのです。

私立四天王寺高等学校

  • 「なぜ?」が導く深い学び
  • 講義を通して知ったがんと向き合う大切さ

参加した1年生407名は、自分の生活や家族のことを思い浮かべながら、松浦先生の話に真剣に耳を傾けていました。講義で疑問に思ったことについて積極的に質問を出す姿勢からは、がんに対する関心の高さが伺えました。

  • 検診以外で、がんはどうやって見つかるのでしょうか?
    検診以外では自覚症状によって気づきます。たとえば乳がんでは乳房やわきのしこり、大腸がんでは血便や便通の異常、胃がんでは胃もたれや不快感などが挙げられます。ただし、これらの症状が現れる頃には、ある程度がんが進行しているケースが多いとされています。がんは初期段階では症状が出にくいため、症状がなくても定期的に検診を受けることが、早期発見につながります。
  • 緩和ケアでは、具体的にどのような対応が受けられるのでしょうか?
    緩和ケアは、がんによる身体的・精神的な苦痛を和らげるための医療です。痛みや吐き気、しびれ、脱毛などの身体症状に対しては、薬や処置によって緩和を図ります。また、精神面では不安や抑うつなどに対して、心理士や精神科医などの専門職が支援します。がん患者さんは、自殺リスクが高まる傾向があることも報告されており、精神的ケアの重要性が強調されています。緩和ケアは、治療の終末期だけでなく、診断直後から必要に応じて受けることができます。
  • 遺伝するがんには、どのようながんがありますか?
    がんのほとんどは遺伝しませんが、1割くらいのがんは遺伝すると言われています。講義でも説明したように、「生殖遺伝子」の異常は高い確率で遺伝します。遺伝するがんとしては、乳がんや大腸がんの一部がよく知られています。遺伝子の変異によって起こる乳がんの一部は、同じ遺伝子異常が卵巣がんをおこすというように複数のがんに関係することもあります。ただし遺伝子の異常があっても必ずがんになるわけではありません。また、親子はがんを含めて同じ病気になる確率が高いですが、それは遺伝ではなく、生活習慣が似ているためのことが多いと言われています。
  • がんの罹患率が上がっているのは、高齢化が要因ですか?
    はい、そのとおりです。高齢化はがん罹患率の上昇に大きく関係しています。がんは年齢によって細胞の遺伝子異常が蓄積されることで発症しやすくなるため、高齢化に伴って患者数も増えています。また検査技術の進歩により、以前は見つけられなかったがんが診断されるようになったことも影響しています。ただし、高齢化の影響を除いてもがんの発症は増えており、食生活や生活習慣の欧米化にも要因があると考えられています。
  • がんはどのくらいの確率で再発しますか?
    がんの種類にもよりますが、全体としては約3〜4割の方に再発が見られます。再発の多くは「転移」によるもので、元の部位とは異なる場所にがんが発生するケースが多いです。以前は再発すると治療が難しいとされていましたが、現在では薬の進歩により治療成績が向上しています。再発をできるだけ抑えられるよう、さまざまな取り組みが行われており、私たちも全力を尽くしたいと思っています。

大阪府立清水谷高等学校

  • がんで迷わない社会へと
  • 知識と支え合いの大切さを学ぶ

参加した3年生280名に対し宮代先生は、クイズやデータを交えながら、がんに関する正しい知識を分かりやすく解説。予防の重要性や周囲の支えの大切さを熱く伝えた先生のお話に、生徒たちは真剣な表情で耳を傾けていました。

  • がんのなりやすさは、性別によって異なりますか?
    新たにがんと診断される割合は、全体としては男性の方が高いです。ただし、がんの種類(部位)によって性差があります。全国がん登録の2021年に新たにがんと診断された数(罹患数)で最も多かったのは「大腸がん」でしたが、性別ごとに見ると、男性では「前立腺がん」、女性では「乳がん」が最も多く診断されています。50歳代半ばまでは乳がんの影響もあり、女性のがん罹患数が男性を上回っています。
  • がん検診は、どこで受けられるのでしょうか?
    自治体(市町村)が実施するがん検診は、指定された医療機関で、年齢や性別などの条件を満たす対象者が、費用の補助を受けて受診できる仕組みになっています。また、職場での定期健康診断や特定健康診査に追加する形でがん検診が実施されることも。ただし、がん検診は基本的には任意であるため、受けるかどうかは自分で判断する必要があります。なお、検診は健常人を対象としたものですから、体調に不安がある場合や症状があるときは、検診ではなく、かかりつけ医に相談するのが適切です。
  • 民間療法に頼る人を説得するには、どうすればよいでしょうか?
    がん治療の基本は、外科療法・薬物療法・放射線療法の3本柱です。近赤外線と薬剤を組み合わせた「光免疫療法」のような新しい治療法も登場しており、開発の初期の段階で私自身も関わった経験があります。一方で、科学的根拠のない民間療法に頼る人もいます。これは、「確証バイアス」という自分の信じたい情報ばかりを集め、反対意見や不都合な事実を無視してしまう心理的な傾向が関係しています。このような場合には、頭ごなしに否定するのではなく、信頼できる情報源や専門家の意見に触れるよう促すのがよいと思います。
  • 子どもと大人の治療法は、どのように違いますか?
    体の大きさに応じて薬剤の量が異なってきますが、子どもは大人のミニチュアという単純な話ではありません。小児やAYA世代(15~39歳の思春期や若年成人)のライフステージは成長段階にあり、様々なライフイベントに直面する時期です。がん経験者として過ごす期間が長期にわたるという視点も重要で、大阪府は「小児がん治療経験者長期フォローアップ支援事業」を実施しています。

    がんと診断されても、学びや仕事を諦めず、社会復帰を目指す前向きな気持ちになれることが大切です。他の国に比べて公的医療保険制度が整っている日本でも完璧とはいきませんが、経済的な不安を抱えすぎることなく治療が受けられます。全国のがん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」も不安や悩みに寄り添ってくれますので、頼ってみてください。

  • 家族や友達ががんになったとき、どのように励ませばよいでしょうか?
    「これまで通りに近い形で過ごしたい」という気持ちは、多くのがん患者さんにとって自然な願いです。励ましすぎるよりも、そばで静かに支えてくれているという安心感が、何より心強く感じられるのではないでしょうか。がんと向き合う中では、確証バイアスに陥りやすく、科学的根拠のない民間療法に惹かれてしまうことも。残念ながら、そうした心理につけ込むような情報やサービスが世の中に存在するのも事実。だからこそ、非合理的な選択に流されないよう、医療従事者とともに支えられるとよいですね。

※清水谷高等学校では生徒から提出されたアンケートを
もとに、
宮代先生に書面で後日回答をいただきました。
生徒の顔写真と質問は直接関係ありません。

私立桃山学院高等学校

  • 身近な話題から関心高まり
  • がんへの理解を深める豊かな時間に

2年生160名が参加。宮代先生は、がんに関するクイズなどを通して生徒たちの興味を引き出しつつ、がんに対する正しい知識を伝えました。質疑応答では、疑問を素直に問う生徒たちの姿が見られ、豊かな学びの時間となりました。

  • 人間以外の動物もがんになりますか?
    人間以外の動物もがんになります。犬や猫のようなペットだけでなく、野生動物にもがんは見られます。しかし、ハダカデバネズミのようにがんが発生しにくい動物もいます。その謎を解き明かす研究も行われており、新たながん予防や治療法へつながるかもしれないと期待されています。
  • 大腸がんでの死亡数が多いのはなぜですか?
    大腸がんの死亡数が多いのは、新たにがんと診断される数、つまり罹患数が日本で最も多いがんが大腸がんだからです。一方、肺がんは大腸がんより罹る数は少ないものの治る割合が下がるため、がん死亡数の順位では、1番悪いのが肺がん、続いて、大腸がん、膵がんの順になります。
  • 日本人に「大腸がん」が多いのは、なぜでしょうか?
    食生活の欧米化によるライフスタイルの変化などが要因と言われています。一方、アメリカでは、大腸がんの死亡率や罹患率は減っています。これは、大腸がん死亡に危機感を持ったアメリカで、がん対策が進められたためだと考えられています。例えば、日本では大腸がん検診の受診状況は改善してきているものの高いとは言えません。
  • 家族にがんの人がいれば、自分もがんになりますか?遺伝子検査をした方がよいでしょうか?
    家族にがんの病歴がある場合でも、必ずしも自分ががんになるとは限りません。遺伝的な要素は確かに存在しますが、むやみに心配する必要はありません。遺伝性のがんが原因となる割合は、実際には5~10%程度と低いのです。家族性を疑う状況や心配な場合は、公的な相談窓口を利用して、専門家と話し合いながら適切な対応を考えていきましょう。
  • HPV(ヒトパピローマウィルス)ワクチンに対して、国の方針が変わったのはなぜですか?
    HPVワクチンに関する国の方針は、ワクチン接種後の副反応に対する懸念や報道の過熱から、接種の推奨を控える措置が取られた時期がしばらく続いていました。しかし、その後の調査により、ワクチンの安全性と予防効果が再確認されています。接種の機会を逃した世代に対しては「キャッチアップ接種」が導入されるなど、HPVワクチンによる子宮頸がん予防の重要性が改めて認識されています。

講義を終えて

今回の出張授業を終えた後、参加した高校生に行ったアンケートをご紹介します。

「今回の特別授業を受けて、がんに対するイメージは変わりましたか?」と質問したところ、この設問に回答した5校の生徒数合計(936人)のうち、44.9%が「変わった」と答え、「どちらかというと変わった」と答えた26.6%と合わせて、71.5%の生徒の意識に変化があったことが分かりました。そして100%近くの生徒が、「がんに対して知っておく必要がある」と答えたのも印象的でした。

「今回の特別授業を受けて、行動に移してみようと思うことはありますか(複数回答可)」という設問に対しては、6割以上の生徒が「大人になったらがん検診を受ける」と回答。続いて「家族や友人・知人に授業で学んだことを話す」、「家族や友人・知人にがん検診を受けているか聞く」などの回答が多く、講義や質疑応答を通じて、生徒一人ひとりががんに関する理解を深め、知識や予防意識を周囲に広げようとする前向きな姿勢が見受けられました。「がんについてさらに詳しく調べてみる」と答えた生徒も多く、今回の特別授業がより深い学びや進路選択につながるきっかけとなっている様子もうかがえました。

図:講師の講義を受けて「がん」に対するイメージは変わりましたか?
【共 催】
小野薬品工業株式会社・朝日新聞社メディア事業本部
【後 援】
文部科学省、大阪府、大阪府教育庁、日本医師会、大阪府医師会、大阪対がん協会、日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会