SDGsを学校へ!~先生のためのSDGs勉強会~
日時:8月17日 場所:朝日新聞大阪本社

[講演+ワークショップ]
SDGsを学校へ!
~中学校におけるグローバルシチズンシップの可能性~
埼玉県上尾市立大石中学校(英語科)教諭
上智大学博士前期課程(教育学専攻)
認定NPO法人開発教育協会(DEAR)理事
松倉 紗野香 氏
中学校におけるシチズンシップのあり方を研究
松倉先生の前勤務校である埼玉県上尾市立東中学校は、平成27年度から平成30年度にかけて、文部科学省「研究開発校」の指定を受け、新教科「グローバルシチズンシップ科」を創設し、中学校におけるシチズンシップ教育のあり方の研究を行った学校。研究の分野として、1・カリキュラム開発、2・教員研修、3・外部連携、4・評価・研究と四つに分けて取り組んだ。特に教員研修では、「TeacherからFacilitatorへ」と、先生同士が学年や教科を超え、共に学びあう研修をたくさん実施した。
どんな話題、内容、題材であっても、全ての内容が「自分ごと」として捉えられるように授業形態を工夫し、3年間を通して「知る」「学ぶ」「行動する」の3ステップを意識したカリキュラムを作成した。
学年ごとの詳細なカリキュラムの具体的な説明に、参加者たちは食い入るように見つめていた。また、講師の問いかけに対して参加者同士で話し合いをする場面も多く見られた。
次に、「15年前と今の世界」というワークシートを活用したワークショップ「2030の世界を考えよう」を実施。日本と世界の現状を比較し、参加者が表の空白を埋めていった。真剣な表情の参加者が多く、議論が白熱し最後まで項目を埋められない参加者もいた。
最後の質疑応答では、多くの質問が出て、松倉先生も予定時間ギリギリまで対応していただいたが、途中で打ち切らざるをえないほどだった。

まつくら・さやか/2015年〜2018年の4年間、研究開発学校である上尾東中学校にて研究主任として「グローバルシティズンシップ科」の教材開発、評価研究、教員研修の企画・運営を担当。そのほか教員研修ワークショップのファシリテーター、小学校への出前授業を実施しながら国際理解教育・開発教育の手法を紹介している。現在は、大学院にて教育学を専攻し、持続可能な社会の創り手を育むためのカリキュラムについて検証を行っている。
[実践報告]
なぜ、私たちは世界史を学ぶのか?
過去・現在・未来をつなぐSDGs
立命館守山中学校・高等学校教諭
ワン・ワールド・フェスティバル for Youth 運営委員
田辺 記子 氏

SDGs達成にとって、
歴史を知ることは改善・解決の糸口
まずは、田辺先生がこの勉強会の直前まで参加していたJICA教師海外研修先であるルワンダでの出来事を、写真を交えながら紹介。参加者はリラックスした雰囲気で、時折笑顔を見せていたが、本題に入っていくと、次第に田辺先生の話に引き込まれていった。
授業の狙いは、「日常的・継続的に地球的規模の諸問題に関心を持ち続ける生徒を育成すること」。SDGs策定の背景には、「持続不可能」なことを続けた歴史があり、SDGsの達成にとって、歴史を知ることが改善・解決の糸口となると考えた。それぞれの単元やプリントに17ゴールを紐付け、生徒同士がディスカッションすることで、意見が違うことに気づき、自分本位・日本本位ではなく、世界の問題に対して自分は何をできるか、産業・文化の発展によって生じた問題を繰り返さないためにはどうすればよいかを学び、「私たちはなぜ世界史を勉強するのか」の結論付けを行った。生徒たちが作成した「SDGsレポート」では、「自分ごと化」した社会課題が、自らの意見とともに17目標のアイコンを使って「見える化」されている。
田辺先生は、「SDGsを授業に取り入れる利点は、授業の目的がはっきりし、歴史を通じて現代の問題につなげることが容易になること。そして、教科の横断的な学びが可能になること」と指摘。SDGsをツールとし、探究をコアとした授業を実践し、それを共有した結果、学びの本質を生徒に伝えることができるようになり、生徒の主体的で深い学びを促すことができるようになった、とまとめた。
学校・教師の意識改革の苦労話では、学校にSDGsを取り入れる際の難しさについて共感する参加者が多く、様々な学校で起きている現状の課題をあらためて浮き彫りにした実践報告となった。

たなべ・のりこ/学校設定科目「国際協力」の授業担当を機に、国際理解教育に取り組む。バンコクで貧困層支援のための住居建築を行う海外研修国際ボランティアコース、アウシュヴィッツやベルリンで多文化共生社会について学ぶピース・スタディツアーなどを企画・実施。2017年度より立命館大学教職大学院に現職派遣され、2019年3月、教職修士(専門職)の学位を取得。
参加した先生の感想

大阪府立今宮高等学校 校長 上野 佳哉さん
最初の歯車をどう動かしたかに興味がある。最初の一歩が大事。今年4月から、朝日新聞社に協力いただきながらSDGsに取り組んでいるが、それを全校的な取り組みにどう発展させていくのか、この10月のSDGs研修が最初の一歩と考えている。SDGsというものを学校教育の中で、まず大きな要素として位置付け、特に、今宮高校は総合学科なので、探究学習にどう位置づけていくのかが重要。さらに修学旅行など大きなイベントやキャリア教育にもSDGsの視点をどう採り入れていくのか。
各学年の一連の学習の中に一本筋を通さないといけないが、それが通っているのかと言われると、なかなか通っていない。そこにSDGsという視点を入れたときに、一本筋が通っていくと考えている。

高槻中学校・高等学校 教頭 前田 秀樹さん
本校はSSH・SGH指定校で積極的に取り組んでいるが、SDGsに紐付けてやることが、子どもたちの学びを繫げることになることが凄く分かり、勉強になった。最初にSDGsのフレームをきちんと紹介し、今本校で実施していることを活かしていけば、ひとつひとつのプログラム、例えば、フェアトレードの問題を考えるということにも、横のつながりができ、社会的な課題を解決していく広がりを持てると分かった。