われら専修人 vol.28 “スプーン1杯の幸せで、多くの人を笑顔に

 下町情緒と最新の流行が同居する江東区清澄白河に、2022年3月にオープンしたスパイスカフェ「Spoon(スプーン)」。木材倉庫をリノベーションした店内で絶品のカレーを味わえると、テレビの情報番組やグルメ雑誌でも度々取り上げられる人気店だ。

 オーナーを務めるのは、お酒と接客が好きで飲食業界に飛び込んだ金井さん。飲食店の経営は、銀座の会員制ウイスキーボトルバー、おでんをメインにした創作和食店に続き3店舗目。「カレーの醍醐味は最初の一口の幸福感」と語り、「スプーン1杯の幸せをぜひ味わってほしい」とほほ笑む。

 日本では、ルーを使用する欧風カレーと、小麦粉を使わずにスパイスのみで作るカレーの大きく分けて2種類が人気を集めている。Spoonで提供するのは、両方の技法を融合させた“第3のカレー”。「欧風カレーとスパイスカレーのどちらの魅力も堪能できる自信作」と胸を張る。

 カレー店開業の構想はコロナ禍のなかで生まれた。経営していたバーが休業を余儀なくされ、逆境を好機に変えるべく、テイクアウトにも対応するカレーの開発に着手。インドの日本大使館で働いていたシェフのもと、スパイスの基礎から学び、1年間かけて第3のカレーのベースとなるルーを完成させた。このルーを使って、さまざまなバリエーションのカレーを考案。現在、店では名物の「えくぼカレー」のほか、フルーツカレーや月替わりカレーなど8種類を提供している。

 「お客様の満足度と同じくらい、従業員の満足度も大切にしている」と話す。一人一人の個性を見極め、積極的に仕事を任せて成長を促すのが金井さん流のマネジメント術だ。従業員の声から生まれたメニューも少なくないという。「『このお店で働くのは楽しい』と言ってもらえることが、経営者として一番うれしい」と語るまなざしは優しい。

 Spoonでは多くの大学生アルバイトが働いている。「『将来、自分の店を持ちたい』という夢を持って働くなど、最近の大学生は目的意識が高くて真面目」と評する一方で、「今を存分に楽しんでほしい」と金井さん。「お店を開くのはゴールではなくスタート。その先にどんな夢を描くかが大事。今を楽しむことが、ワクワクする未来をつくるモチベーションになる」とアドバイスする。

 大学時代は宮嵜晃臣ゼミに所属し、経済について広く学んだ。課題も真剣にこなしたが、「思い出に残っているのは、皆で食事に行ったり、旅行に行ったりしたこと」と懐かしむ。ゼミの仲間とは今も交流が続いている。また、在学中は学食での食事も楽しみで、「一番のお気に入りは9号館CABINで提供されていたかしわ重(鳥の照り焼き重)」と笑う。

 銀座にバーを開業して2年後の2018年に事業を法人化した。「笑顔を分け合う社会の実現を目指したい」との思いを込めて付けた社名は「Dimple(えくぼ)」。これからもおいしい食事とくつろぎのひとときで多くの人を笑顔にしていく。

ニュース専修9月号「専大校友を訪ねて」から転載