
「水戸は水戸でも水戸証券」のCMでおなじみの水戸証券株式会社。2015年6月に同社の社長に就任したばかりの小橋三男氏は、2021年に控えた同社の創業100周年に向けて、早くもリーダーシップを発揮し始めている。社会が求めるリーダーシップや、日本のこれからのリーダーのあるべき姿について、話をうかがった。

専修大学を選んだ理由は、高校時代の先輩や先生の薦めからです。中学の時からずっとバスケットボールをやっていたので、大学に入ってからも、ほとんどはバスケットボールを中心とする学生生活でした。だから、学生時代の他の記憶がまったくないんですよ(笑)。
3、4年生の時は部活でマネージャーをやっていました。その時に、OBの社会人の方々と接点を持つことが増えたのですが、学生同士とは全く違う次元の人付き合いが増えて、本当にたくさんのことを学ばせてもらいました。実は水戸証券に入社するきっかけもバスケットなんです。水戸証券で働いていた先輩に「人が足りないから助けにきてくれ」と呼ばれて、社内のチームに助っ人で行ったのが最初です。
マネージャーというポジションは、結構忙しいんです。地方の大学から試合の招待を受けたり、あちこちに遠征して大会に出たりしていたら、就職活動をしている時間などあるわけがなく、あっという間に大学4年の暮れです。でも、正直言うとそんな深刻には考えていなくて、何となくその先輩に相談したら、「人事と会ってみるか?」って。だから私は同期の中で一番最後の内定者だったと思います。
こんな調子ですから、特に大きな志もなかったし、「将来はこんなふうになりたい」といった野望もありませんでした。ただ縁があった。それだけなんです。

2015年6月から、社長に就任しました。経営トップ、リーダーとして大切にしていることは、安心感を与えることだと考えています。我々のお客様はもちろん、株主、社員といったステークホルダーの皆さんに常に安心感を提供し、かつ公正・公平に接することを心掛けています。
水戸証券は、2021年に創業100周年を迎えます。その時を迎えるにあたって、今年4月に経営ビジョンを策定しました。具体的な経営指標を掲げるとともに、7つの基本戦略を打ち出したのですが、経営者としてそうした方向性を指し示し、きちんと実行できる環境をつくることで、信頼や安心感につなげていく。それが、今の私のやるべきことだと考えています。
当社は銀行系列には属さず、ずっと自主独立の立場を堅持できています。今の証券会社の多くは、合併に次ぐ合併で原型をとどめていませんよね。そんな中にあっても「水戸は水戸でも水戸証券」をずっと続けてこられているのは、何よりの強みだと考えています。そしてその背景にあるのは、やはり地域への思いです。茨城県という確固たる地盤があることが、我々の心の支えであり、収益を上げるうえでも大きな強みとなっています。
少し商品の話をすると、2009年より「ファンドラップ」というサービスを開始しました。これは、簡単に言うとお客様の大切な資産をお預かりし、運用から管理まで一貫してお任せいただくサービスです。時代のニーズに合ったものだと考えているのですが、こういうサービスを多くの人に受け入れてもらうためには、やはり信頼感が大事なんです。「水戸証券にだったらお金を預けてもいい」と言われないといけませんからね。
これからのリーダーに求められるものは、私自身の考えとしては、「ITリテラシーを持つこと」ではないかと思っています。これは、当社がネット証券を目指すということではありません。やはりITというのが大きなビジネスチャンスになっているんです。業務の効率化、コストの削減、お客様へのサービス向上……こういった中にITを積極的に取り入れていかなければ、なかなか難しい時代になってきています。
そしてもう一つ、「倫理観」は欠かせません。リーダーとして日々の行動も含め倫理観をしっかり持つことです。専修大学では報恩奉仕という理念がありますが、マネジメントの世界では、相手に尽くす、奉仕するというのも一つの大きな役割ですから、これもまた、とても大事なことですよね。


証券界に身を置く一人としては、今、アベノミクスでも言われている「貯蓄から投資への推進」に貢献していきたいと思います。そうした未来のための礎を作っていくことができたらいいなと考えています。
あとは、市況に影響を受けやすい業種だけに、経営トップとしては、安定した収益を確保できる仕組み作りにチャレンジしていかなくてはいけません。その一つが、投資信託やファンドラップなどの預り資産に応じた報酬のウェイトを高めていくことです。当社が「ファンドラップの預り資産1,000億円」を掲げているのは、そうした目的のためです。
個人的な今後のチャレンジは、趣味で続けている山登りや魚釣り、温泉巡りなどの旅行をもっと楽しみながら、いろいろなところに足を延ばすこと。国内だけでなく海外にも行きたいです。一生懸命に仕事をするためには、こうした自分を見つめるための時間をちゃんと作らないとダメですね。


地域貢献のためには労力を惜しまない同社。水戸の伝統的なお祭りの一つで、毎年8月に大々的に開催される「水戸黄門祭り」には、社を挙げて参加。熱気溢れる踊りで祭りを大いに盛り上げている。それ以外にも、茨城県内に限らず、各支店の所在する地域の催し物やお祭りにも積極的に参加し、地域との一体化をはかっているという。
また、地元のサッカーチーム「水戸ホーリーホック」のスポンサーとなり、クラブと一緒にジュニアの育成のための大会を主催している。
こうした取り組みを通じて、水戸証券の存在は地域に欠かせないものとなっている。
こばし みつお●1977(昭和52)年、経営学部経営学科卒。新卒で水戸証券に入社し、支店長、営業部長、人事・研修部長、システム統括部長などあらゆる部門責任者を歴任。2005年に同社執行役員、2010年6月に取締役、2013年に常務となり、2015年6月より代表取締役社長に就任。趣味は登山、魚釣り、旅行。座右の銘は「我以外皆我師也」。