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探究×SDGs 地域課題解決のコツ

一般社団法人 日本私立看護系大学協会

一般社団法人 日本私立看護系大学協会

広がる看護の世界から見えてくるもの――未来を見つけるヒントをつかもう

オンライン形式の座談会として、一般社団法人 日本私立看護系大学協会より会長:原 玲子先生(日本赤十字秋田看護大学 学長)、副会長:洪 愛子先生(神戸女子大学 看護学部 教授)、業務執行理事:鎌田 佳奈美先生(摂南大学 看護学部 教授)にお話を伺いました。

「看護」と聞くと、病院で働く看護師の姿を思い浮かべるかもしれません。でも、実は看護の世界はそれだけにとどまらず、私たちの想像以上に広がっています。地域での健康づくりや国際的な医療支援、災害現場での活動など、看護師たちはさまざまな場面で社会の課題解決に貢献しているのです。

今回は、そんな新しい看護のあり方や広がるキャリアについて、日本私立看護系大学協会をリードする先生たちにご登場いただきました。この協会は全国の私立看護系大学が力を合わせて、より良い看護教育を目指して活動している組織です。1976年の設立から現在では209の大学が参加し、未来の看護師たちの育成に取り組んでいます。

座談会では、先生方が見てきた多様な看護の現場や、今注目されているICT(情報通信技術)を活用した看護の新しい可能性についてお話いただきます。看護の世界にはどんな未来が広がっているのでしょうか。その魅力を一緒に探っていきましょう。

看護師が活躍するシーンが広がっている

キャリアの選択肢が広がる「看護」のいま。さまざまなフィールドで専門性が輝く

――「看護師」と聞くと、病院で働く姿を想像する人が多いかもしれません。日本私立看護系大学協会の会長を務める原先生は、最近の看護職のキャリアの広がりを話してくれました。

原:「看護」の領域は、みなさんが想像する以上に広がっています。看護学部を卒業して、看護師の免許取得後も、自分の進みたいキャリアを選択できます。より高度でさまざまな看護の専門性をめざすことができ、社会の課題に向き合います。自分自身の関心から、がん看護、精神看護、老人看護、地域看護、母性看護、小児看護、感染症看護、家族支援看護、災害看護、在宅看護、慢性疾患看護、遺伝看護等の「専門看護師」の資格を取得し、より専門的な分野で活動することもできます。従来の看護師よりも侵襲の高い処置が実施できる「診療看護師」という資格もあります。「行政保健師」に進むことも、企業に勤めて「産業保健師」になることも、「助産師」となり助産所等を起業することも、訪問看護師として看護多機能型介護施設や訪問看護ステーション等を起業することもできます。「養護教諭」になりこどもたちの健康を支援することもできます。英語力を生かして、医療チームで、国際医療等に携わることも、看護の教員になることも、看護政策のために政治家になるキャリアを選択することもできます。

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洪:そうですね。さまざまな現場で看護というキーワードの意味合いが広がっていることを実感しています。私は協会の副会長として、看護師としての経験だけでなく、経済学部で学んだり、外資系企業で働いたり、さまざまな分野で活動してきたキャリアを踏まえて、協会の活動を支えています。病院内では急性期、慢性期、緩和ケア、小児看護など、さまざまな分野で専門性を高めていく動きがありますし、在宅看護や国際的活動で看護師が活躍する局面が増えています。最近は、看護でも「予防」の視点が重要になっていて、医師が関わる前に学校の保健師や企業の看護師がサポートする場面も増えています。

原:鎌田先生、専門で研究されてきた小児看護の分野ではいかがでしょうか。行政に関わる保健師は乳幼児死亡率の低下に貢献してきましたね。

鎌田:我が国の乳児死亡率が世界でもトップクラスの低さを誇っているのは、看護職の存在が見逃せません。現在は生まれた子ども1000人に対して2人程度が亡くなる状況ですが、戦前は1000人に対し100~150人ほどが亡くなっていました。医学の進歩はもちろんですが、看護職が進めてきた母子健康手帳の普及活動、乳幼児健診の浸透が大きいと考えています。

最近は「医療的ケア児」と呼ばれる、医療のサポートを受けて学校に通える子どもたちが増えています。そこで、看護師の資格を持つ養護教諭や学校看護師へのニーズが高まっています。呼吸器を使って呼吸を助けるケアや、胃に直接チューブを通して栄養を与える「胃ろう」による栄養管理など、専門的な医療ケアで子どもたちを支えられるからです。また、保健センターや児童相談所や保健師の役割が重要になってきました。ここでは、異常の早期発見や発達障害などの子どもを養育する家族に、保健師が専門的な知識を活かしてアドバイスを行っています。看護師や保健師が活躍できる場はどんどん広がっているのです。

――病院内での看護師の働き方についてはいかがでしょうか? 看護師も医師のように、内科や外科といった診療科ごとに専門性を高めていく印象があります。

原:以前は、内科病棟や外科病棟等、診療科ごとに病棟が分かれていました。しかし、現在では、さまざまな診療科の患者が同じ病棟で治療を受ける混合病棟が主流になり、看護師も特定の診療科にとらわれることなく、幅広い知識が求められるようになっています。また、専門性も高くなり「認定看護師」「専門看護師」「診療看護師」としても活躍しています。

洪:そうですね、病気のなりはじめや手術直後などの急性期やICU(集中治療室)では、患者さんの状態が刻々と変わるため、迅速かつ適切な判断が必要です。ただ、看護は病気のある臓器を看るのではなく、人に対するケアなので、全身の状態の把握に加えて、心のケアにも気を配っています。

鎌田:患者さんによっては、病気の治癒が難しい場合があります。痛みや不安を和らげる「緩和ケア」、最期の時間を過ごす「ホスピス」等においても看護が行われます。また、大切な人が亡くなったことなどによる喪失感や悲嘆を抱える人に対して、寄り添い、その人の回復を支援するグリーフケアも看護の大事な分野です。

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あらためて本質に向き合う、看護とは何か

生命と暮らしに寄り添うとき。心と身体を支える看護の醍醐味

――看護の役割が広がっていることが分かりました。「看護」という分野ならではのやりがいや魅力についてはどうお感じですか?

洪:看護の魅力には、入院中だけでなく病気が再燃しないように、その人の「暮らし」にも深く関っていくところにもあります。普段の生活の中から、本人が気づいていない動きや兆候を見つけ出し、病気の予防や健康の維持につなげていくことができます。患者に伴走しながら、健康を支えていくことが大きなやりがいになります。

鎌田:私も同感です。医師は専門性を持ち、特定の臓器の治療に焦点を当てることが多くなりますが、看護は患者の全体を見ていきます。つまり、身体だけでなく、心や生活全体をサポートするのです。例えば、患者が病気に悲観的になり、治療に前向きになれなくなってしまった時でも、看護師が寄り添って支え、患者が自身で乗り越えていくという場面を何度も見てきました。こうした瞬間に立ち会えることこそ、看護のやりがいだと感じます。

原:お二人の体験談からも、人との関わりを大切に思う看護師の想いが伝わってきます。看護は人との関わりが基本です。患者の立場や気持ちに寄り添いつつ、その人の力を引き出すサポートをしていく。それこそが看護の本質です。

――「人と向き合う」看護の本質が見えてきましたが、変化の激しい時代にあって、看護には新たな役割も求められます。最近はポストコロナや災害時における看護のあり方も注目されていますね。

原:洪先生が先ほど触れたように、看護の中でも「予防」は大切な要素です。コロナ禍以前より、看護師は手洗いやマスクの着用といった基本的な感染対策の重要性と技術を学び、日々実施しています。これまでの看護師の感染予防の知識や技術が、コロナ禍でも重要な役割を果たしたのではないでしょうか。

洪:そうですね。私たち看護師は、コロナ対策を通して「感染予防の大切さ」を体感しました。99人が正しく予防していても、1人の異なる行動で感染が広がってしまう場合もあります。この経験値を活かして、パンデミックにおいても感染予防を徹底し、かつ、社会に対する教育を行うことで、パンデミックを乗り越えてきたと思います。

鎌田:コロナ禍における看護師たちの活動を見て、私はナイチンゲールの精神を再確認しました。彼女は19世紀の戦場で、感染症の拡大を予防するために徹底して衛生環境を整え、多くの兵士の命を救った看護の先駆者です。看護の力の一つは、まさに予防の力です。学生たちにも、この学びを伝え続けていければと思います。

――自然災害が多発し、被災者や被災地の復興は社会の大きな課題になっています。災害時の看護について、掘り下げてお聞かせください。

原:今後起こる可能性が高いとされる南海トラフ地震や首都直下地震など、大地震等は、いつ起こるのか予測が難しいですが、豪雨による水害などは、気象予報の科学的発達により、警報が出される等、ある程度予測し避難できる場合もあります。どのような災害でも、生命を守る行動をとることが重要です。そこに必要になるのは「防災・減災教育」です。看護は、発災時にDMATや避難所における救護に参画します。仮設住宅の訪問等で健康支援も行っています。同時に、命を守るための防災教育をさまざまな場面で行っています。これも「予防」につながる看護の重要な役割です。

洪:災害時の活動で印象に残っているのは、2011年の東日本大震災です。被災地に向かった私たちは「何ができるのか」と自問自答しながら、その場に必要な役割を見つけ出し、避難所やトイレの衛生環境を整えるといった活動を行い、避難生活を少しずつ良い方向に導くことができました。

鎌田:災害直後に命を救う救命活動から、仮設住宅に住む際の健康管理の支援まで、看護師はあらゆるプロセスで支えていくことができます。何より、からだ(身体)だけではなく、こころ(メンタル)にも寄り添えるのが看護師の強みです。目の前の患者だけでなく、その方の生活全体にも目を向けてサポートできるのです。

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東日本大震災時のA地域の安否確認行うために、すべてのお家を訪問します。
その家庭訪問の事前準備のために、地図で、行政区間を確認しているところです。

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東日本大震災のA地域における被災者の家庭訪問による健康状況等を把握します。
地区別で見やすいようにファイルを作成したところです。

デジタルやICTの活用で広がる、未来の看護のかたち

デジタル時代の看護を目指して。ICTが未来を広げていく

――看護の醍醐味や向き合い方が見えてきました。時代に合わせて看護も進化していますが、AIやICTはどのように活用されていくのでしょうか。

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看護師がオンライン診療を補助している場面

原:これからはデジタル技術に精通したZ世代やアルファ世代(これから成人する世代)が看護を担っていくことになります。現在も健康管理や看護に特化したアプリの開発が進み、健康管理をスマホ等で行うことも可能です。タブレットを使った在宅訪問や健康教育等が導入されています。AIを活用して患者さんの状態をモニタリングし、異常を早期に察知するシステムも研究されています。こうしたテクノロジーによって新しい看護やケアのかたちが創られていくでしょう。

洪:病院では、カルテや看護記録がデジタル化されて情報共有がスムーズになり、看護師の業務が効率化されています。ICTを使った遠隔診療が進んでおり、医師と連携しながら住民の健康をサポートする取り組みが広がっています。

鎌田:多くの業界と同じように、看護の現場でも働き方改革が進んでいます。ICTによって、血圧測定や投薬チェックなど機械で対応できるプロセスも増え、看護師の負担が軽減されています。教育現場でもシミュレーターを使った実習が進められるようになりました。ただし、患者とコミュニケーションを取ってケアするのはAIではなく、私たち看護師です。人と向き合い、対話を重ねていく看護の本質は変わることがありません。

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VRを用いた授業の様子

――最後に、看護でキャリアを考えていくためのヒントや学びについてお聞かせください。

鎌田:看護師はかつて医師の補助者という位置づけでしたが、看護学という学問が確立され、自立した医療者として存在感を発揮しています。もちろん血圧を測る、点滴を行うといったスキルも学んでいきますが、看護の本質は、患者とどのように関わり、その人が持っている自然治癒力や免疫力を高めるかを考えていくことにあります。看護学部での学びを通して、人との関わり方を深めていくこと。それが自身を高めていくためのステップになるでしょう。

洪:ここまでお話してきたように、看護師としての将来の道筋は実に多様です。病院で働くだけでなく、特定の分野に特化した専門看護師や認定看護師になったり、地域の医療に携わったり、さらには国際的な医療活動に参加したりと、様々な選択肢があります。看護師を目指す中では、大学で幅広い分野の知識を学びながら、自分が特に興味を持てる分野を見つけていくアプローチもあります。鎌田先生がお話しされたように、看護師には人との関わり方や上手なコミュニケーションを取る能力が大切です。看護を学ぶ過程で、人として生きていく上で大切なスキルが身につけられるよう、私たち教員も全力でサポートしていきます。

原:看護師に求められるのは、一人ひとりが自立して判断し、行動できる力です。例えば、患者の様子に異変を感じたとき、そこで適切なアセスメントし、患者に何が必要かを医師や医療チームとディスカッションして、最適な医療へと導いていきます。そうした活動ができることも看護の大きな魅力です。自分の好奇心と思いを大切にしながら看護を学ぶ学生たちの前には、大きな可能性が広がっています。

――看護が持つ幅広い役割と、キャリアの多様な可能性について理解が深まりました。本日はありがとうございました。

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