行動から未来を創る 摂南大学で見つける新たな学び
インタビュー:摂南大学 現代社会学部 講師 上野山 裕士先生
「PBL」という学びの方法を知っていますか? 摂南大学では、学部や学科を超えた実践的な学修方法として、PBLが取り入れられています。学生たちが自ら課題を発見し、地域社会や企業と連携しながら解決に取り組んでいます。高校で向き合ってきた探究学習を大学でさらに発展させたいと考えているなら、このスタイルはとても魅力的です。摂南大学でPBLに取り組む上野山先生にご登場いただき、新しい学びのかたちを探っていきましょう。
自分で考え、動いていく新しい学び
摂南大学ならではのPBLとは
――まず、PBLという学習について教えてください。
上野山(以下同):摂南大学では、「人間力と実践的能力をもち、多様な人々と協働して社会に貢献できる人材を育成する。」を『教育の理念』として設定し、本学のミッションとしています。これを実現するために、1975年の開学以来、今でいうアクティブ・ラーニング的な学びを志向しており、各学部の専門科目において、学部の専門性に即したPBL型の授業を展開してきました。
PBLは、「Project/Problem Based Learning」の略で、日本語で「プロジェクト型学習」「課題解決型学習」と呼ばれますが、学生がチームを組み、社会で実際に起きている問題や課題に対して解決策を考え、行動に移していく学び方です。摂南大学では、このプロジェクト型の学びを通して、大学が掲げる理念「人間力」と「実践的能力」を磨いています。学生たちは、自分で課題を見つけ、チームと共にその解決に向けて取り組むことで、課題解決力や協働力を高めています。PBLは「考え、動き、解決する」学びのスタイルなのです。
PBLのカリキュラム概念図
――他の大学でも積極的に導入されていますが、摂南大学の取り組みにはどのような特徴があるのでしょうか?
授業科目として「摂南大学PBLプロジェクト」があります。各学部固有の専門科目とは別に、全学的な教養科目として開講しています。
これは、文部科学省の「大学教育・学生支援推進事業」の採択を受けて2010年度から本格的にスタートしました。全国の大学のなかでも先駆けとして取り組み、10年以上の実績を積んできました。大きな特徴は、学部の枠を超えて進行する点にあります。異なる学部の学生たちが協力し合い、社会や地域の様々な課題に取り組みながら、互いの知識や視点を共有し、社会に貢献する力を養っていくのです。
学部によって得意な領域が少しずつ異なるので、プロジェクトの進行方法やアイデアの出し方にも違いが出てきます。それが、「摂南大学PBLプロジェクト」の面白さのひとつだと思います。例えば理系学部には、専門知識や技術を活かし、綿密なスケジュール管理でプロジェクトを進めることが得意な学生が多い印象です。一方で、文系学部の学生は自由で斬新な発想力を発揮し、新しいアイデアを次々と生み出すことがあり、行動力にも長けているように思われます。これはあくまで一例ですが、異なる視点を持つ学生が「こんな見方もあるんじゃない?」と新しいアイデアを出してくれるおかげで、より豊かな成果が生まれるのです。ときには議論がとっちらかって、収集がつかなかったりして……(笑)。だけど、そこから発想が広がり、良いアイデアにつながることも少なくありません。
――摂南大学では2010年から150以上のPBLプロジェクトが行われてきたんですね。2024年度のラインナップでは、「キッズイベントを創ろう!」「大学生と地方自治体とのSDGs連携プラットフォーム活動」などが目に留まります。
教員が細かく指示を出して進めていくのではなく、学生たちが自分で考え、行動し、成長していくことでやりがいを感じてもらうことを大切にしています。私たち教員は、企業や地方公共団体、地域社会としっかり連携して準備を進めていますが、プロジェクトが始まったら主役は学生たちです。自分たちで考えて、自分たちの「得意」を生かして活躍できる場だと、やりがいや自身の成長を感じやすいですからね。それがPBLの醍醐味だと思います。高校生のみなさんも、自分が主役として活躍できる環境に魅力を感じるのではないでしょうか?
サマーボランティア講座で講師役を務める学生
夏休みの子どもの居場所づくりイベントでボッチャを楽しむ
現場で体当りして得る、本当の学び
実践を通じて「じぶんごと」として理解する
――上野山先生が所属する現代社会学部には、FAL(フィールド型アクティブ・ラーニング)と呼ばれるプログラムがありますね。これは「摂南大学PBLプロジェクト」の一環として行われているのですか?
FALは、2023年度に摂南大学に新設された現代社会学部でスタートした、新しい学びのプログラムです。「摂南大学PBLプロジェクト」とは異なる独立した取り組みで、福祉、まちづくり、スポーツ、メディアなど、さまざまな分野で毎年約50件のプロジェクトが進められています。現代社会学部自体も2023年に設立され、各分野の専門家である教員が集結しています。教員は、それぞれの分野に精通しており、専門知識を活かした実践的な学びを提供しています。さまざまな社会課題に「じぶんごと」として向き合い、連携先と協働しながら実践に取り組むことで、実際の社会で役立つスキルや知識を身につけることができるんです。
――「ニュータウンの賑わい創出」「子どもの自然体験教室のサポーター」「マスターズ甲子園のイベントマネジメント」「日本の食をめぐる現状と課題―若者の果物離れに挑む!」など、FALには面白そうなプログラムが並んでいます。どのように進められていくのでしょうか?
そうなんです。オープンキャンパスで高校生にFALについて説明すると、誰でも「これって面白そう!」と目を輝かせるプロジェクトが見つかるんですよ。ここでは、福祉分野で私が担当している「学校へいけない・いかない子たちの居場所づくり」というFALプロジェクトについてお話ししましょう。
これは和歌山県有田市を活動場所として、さまざまな事情で学校にいけない・いかない児童や生徒が活躍できる場づくりに取り組む活動です。もともと、有田市では「学校にいけない・いかない子をもつ親同士がつながる場」が定期的に開催され、そのなかで「子どもには、学校でも家でもないサードプレイスが必要なんじゃないか」という話が出ました。そこで、有田市社会福祉協議会の方から「せっかくなら大学生にも運営に関わってほしい」と提案があり、FALで取り組むことにしたといういきさつがあります。
子どもたちと話すとき、大人だと「好きな食べ物は?」とか「好きな映画は?」といった話題くらいしか思いつきませんが、大学生だとゲームの話やリアルな日常の話ができるので、子どもたちとも自然に話が合うんですよね。対面の参加が難しい子も、オンラインなら参加できるかもしれないという発想から、活動はオンラインと対面を組み合わせて行っています。オンラインでのトークテーマや、みんなで楽しむお菓子づくり、調理からかたづけまでみんなで行うお昼ごはんの会の内容も、季節や子どもたちの関心に合わせて、学生たちがコンセプトを決めています。さらに、SNSでの情報発信も学生たちが自分で企画し、インスタグラムなどに投稿しています。連携する社会福祉協議会にも確認してもらいながら、学生たち主体で企画、運営しています。
連携先担当者から地域の歴史と課題を学び、大学生にできることを協議する
――プロジェクトを通して、活動の成果や学生たちの成長をどのように感じていますか?
FALで大切にしているのは、地域との連携で成果を出すことです。子どもたちのあたらしい居場所ができたことは大きな成果ですし、学生たちも、子どもたちを取り巻く環境やそれぞれの想いを知り、学ぶ機会になっています。2024年度はこのプロジェクトも2年目になり、2年生たちがより主体的にプロジェクトを運営してくれるようになりました。1年目は、企画の内容を決めるだけで満足していましたが、今年は「どうやったら子どもたちがもっと楽しんでくれる?」や「どうやったらもっと多くの子どもたちが参加してくれるだろう?」といった課題を自分たちで設定し、自分たちにできることを考え、実践に取り組むようになりました。ここに大きな成長を感じます。
摂南大学では地域の小学校とも連携して探究学習をサポートしている
「腹落ち」するプロジェクト学習
座学の講義と実践学習の両輪で学ぶ
――学生のみなさんもここまで実践的なプロジェクトには初めて加わることになります。不安や戸惑いもあるのではないでしょうか?
そうですね。教室での学びを離れることもありますから、活動について「一体どんなことをやるの?」と思う学生もいます。例えば「福祉」という言葉を聞いてもその内容や考え方を説明できる学生はそう多くありません。しかし、「子どもの居場所を作りたい」とか「地域で活動したい」といった具体的な取り組みに興味を持ち、気がつけば「福祉」をテーマにしたプロジェクトに参加していたりする。そんな学生たちが、現場での実践を通じて、「これが福祉なんだ」とか「地域ってこうなってるんだ」というように、さまざまなことを学び、理解を深めていくわけです。学びにおける実践の価値は、福祉にかぎらず、文化やメディア、スポーツのプロジェクトにも共通するものです。
私は、講義のなかで「福祉」「地域」「居場所」などの基本的な考え方を伝えていますが、それだけでは学生にとってなかなか実感がわきにくいものです。しかし、実際に体験を通じて学んでいくと「これって授業で聴いたことだ!」と気づく瞬間があります。この「腹落ち」する瞬間こそ、学生にとって大きな学びになるのだと思います。もちろん、座学で基礎的な知識を学ぶことも重要です。そして、現場でのさまざまな活動に「じぶんごと」として取り組むことで、さらに深い理解につながります。知識と実践から学ぶことが、学生たちの深い学びや成長につながるのだと思います。
高齢者のためのスマホ相談会の実施
――最後に、高校で探究学習に面白さを感じた高校生に向けてメッセージをお願いします。
高校時代の探究学習とFAL、そしてPBLには深い関連があります。最近では、高校生もアクティブに探究学習を進め、実践型の学びを取り入れることが多くなっていますよね。摂南大学のプロジェクト型体験学習も、まさにその延長線上に位置する取り組みです。入学した多くの学生が「高校で探究学習を経験して、さらに深掘りしていきたいと感じました」と話します。高校生のみなさんに伝えたいのは、大学には探究学習をさらに発展させるだけではなく、さまざまな連携先とともに考え、ともに汗を流す協働的実践の場が整っている、ということです。私たち教員と大学関係者は、これらのプロジェクトを通して、みなさんが主役として活躍できる環境をしっかりと準備しています。
摂南大学をはじめ、多くの大学でアクティブラーニング、つまり主体的・対話的で深い学びに力を入れています。私たちが目指しているのは、大学全体で教育理念に基づいた質の高い学びを提供すること。そして、高校生のみなさんに知ってほしいのは、大学合格や就職がゴールではない、ということです。大切なのは、単に成功することや役職を得ることではなく、自分で人生を選び、自分らしく生きる力を身につけること。これこそが本当の意味で「社会で活躍する」ことなのです。
私のプロジェクトに参加したある学生が、「福祉の魅力に気づいた」「就職してもこんな活動を続けたい」と言ってくれました。こういった声を聴くとき、このプロジェクトを立ち上げて本当によかったなと思います。1、2年生のうちから、具体的なキャリアの方向性を定める必要はありませんが、プロジェクトの体験を通じて「自分にはこんな一面がある」「こんな分野に興味がある」といったように、新たな自分の可能性に気づくことができるのです。大学では、FALやPBLのような課題解決型の取り組みを通して、「自分らしく生きる力」を養います。大学生活には、これまでに培った探究心をさらに深め、みなさん自身の可能性を最大限に引き出す学びが待っています。






