全国各地の出光興産のサービスステーションを、より多様なサービスを展開する新たな拠点へと進化させる「スマートよろずや構想」。そんな構想を独自の工夫でいち早く形にしている特約販売店(以下、特販店)の一つが、北海道のなかせき商事株式会社です。同社を率いる中川栄一代表取締役社長と、出光興産北海道支店の原智治さんが、地域の人・暮らしを支えるビジネスの可能性について語りました。

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進化を続ける北海道第1号店
社会のニーズを柔軟に捉え、事業を多角化

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なかせき商事株式会社 代表取締役社長 中川栄一さん

――なかせき商事は、北海道で70年以上にわたって事業を展開されていますね。

中川 なかせき商事は、漁師だった私の祖父が1949年に北海道・稚内で創業しました。漁船の重油を出光興産から買っていたことや、親戚が出光興産に勤めていたご縁もあり、漁業から石油販売業へと軸足を移し、北海道での出光興産の第1号特販店となりました。来年で75周年になります。

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75年の歴史。漁業から石油販売業へ。

地元の方々に支えられながら事業成長し、いまは、稚内・旭川・札幌・留萌(るもい)の道内4カ所で事業を展開しています。とくに需要家さんに直接販売する「外販営業」を強みとしており、全道の工事現場や企業、工場などに灯油・軽油・重油を納入しているほか、潤滑油やプロパンガスの販売も担っています。個人向けには、各家庭に備えつけられている灯油タンクへの配達も行っています。冬場の灯油需要が売り上げの大きなウエイトを占めるのは、本州との大きな違いでしょうね。

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わっかない給油所

――サービスステーションは、稚内と留萌の2カ所で営業されていますね。

中川 2019年に、稚内の2つのサービスステーションを統合し「わっかない給油所」を新規オープンしました。広い敷地を生かして、コインランドリーや精米所などを併設しています。地元の方には、精米したてのおいしいお米を食べられると喜ばれていますし、コインラインドリーは観光客の方にも利用されています。

また、稚内・留萌のサービスステーションは、安心安全な地域づくりを目指し、ともに自家発電設備を備えています。停電時にも給油ができる「住民拠点SS」として資源エネルギー庁から認定を受けています。

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わっかない給油所に併設されたコインランドリーと精米所。
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――ここ20年ほどの間に、多角化も積極的に進めていると伺いました。

中川 地域のお客様のニーズに幅広くお応えしていくため、現在、4社5事業を展開する関連会社があり、なかせき商事を中核とする「なかせきグループ」を作っています。

近年の主な動きとしては、2004年、自動車のEV化を見据え、電気工事・設計・施工などを行う株式会社電建の株式を取得しました。まだEV事業にはつながっていませんが、公共施設や病院、工場、公園など幅広い電気工事を請け負っています。

2006年には、北海道の海産物の通販サイトを運営するノース物産株式会社を旭川に設立し、翌年にはボトルウォーターの製造・販売も始めました。これは、「おいしい海産物や水をお届けしたい」「漁師や海産物事業者の助けになりたい」という思いから実現したものです。

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旭川に拠点を構えるノース物産。
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2011年には、保険部門を分社独立させ、株式会社保険のなかせきを設立。さらに2014年に、生活のお困りごとを解決する「便利」サービスを行うフランチャイズ店をスタート。2017年には、稚内に共生リハビリ株式会社を設立し、リハビリ型のデイサービス施設を開業しました。

灯油やガスの販売先での「困りごと」が
新たな事業を始めるきっかけに

――様々な生活支援を行う便利屋の事業は、どんなきっかけで始めましたか。

中川 もともと、プロパンガスや灯油を契約いただいているお得意先から、色々な頼まれごとをすることが頻繁にありました。例えば、台所や浴室、トイレなどの水回りの設備の修理、暖房器具の取り付けや点検、ストーブや給湯器の販売等々。このような需要が高齢世帯の増加で増えていく中、お困りごとの解決を事業化することにしました。2014年、全国展開している株式会社ベンリーコーポレーションとフランチャイズ契約を締結し、現在札幌で事業を展開しています。

――リハビリに特化したデイサービス事業を始めた背景を教えてください。

中川 社内で幹部研修を実施した際、「高齢の親が安心して暮らせる街にしたい」と、ある社員が福祉の新規事業アイデアを出してくれたのがきっかけでした。とくに稚内は、札幌や旭川と比べても医療や介護福祉施設が足りていませんから、これは必要な事業だと思いました。

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開業から7年目を迎えたいま、おかげさまで大変多くの利用者に活用いただいています。みんなで輪になって体操をしたり、利用者同士や職員と何気ない会話をしたりと、楽しいコミュニケーションの場にもなっているそうです。職員は日々、本当に頑張ってくれています。

――なかせき商事に伴走してきた出光興産の原さんは、こうした取り組みをどう見ていますか。

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出光興産株式会社 原智治さん

 社会インフラの基盤であるサービスステーションは、ロードサイドビジネスの中でも寿命が長い事業ですが、一方で「大きな変化が起きなかった」という側面がありました。そんな中、なかせき商事さんは、社会の変化とそれによる新たなビジネスの芽を察知し、常に先取りの気概を持って事業をされています。とくに、20年近くも前からEV化を意識していたことは驚きです。

中川社長と私は年齢が近いこともあり、日頃から互いに忌憚なく意見交換をさせていただいています。

中川 そうですね。原さんには、いつも気軽に色々な相談をさせてもらっています。ともに野球好きで、一緒に盛り上がれる共通の話題があるのもうれしく思っています。

グループの総合力を生かして
チャレンジ精神あふれる組織に

――なかせき商事が大事にしている理念やモットーを教えてください。

中川 なかせき商事の名刺には、「あすのくらしを考える」という一文を添えています。石油関連に限らず、お客様の暮らし全体に気を配り、ニーズにきめ細かく応えていこうという思いを表したものです。また10年ほど前から、なかせきグループのテーマとして「共創」という言葉を掲げています。多様な事業を行っているグループ各社が有機的に絡み合うことで、より大きな相乗効果を生み出していきたい、という決意を込めています。

そうした理念の浸透を図るためにも、10人程度の少人数体制での「グループ合同研修会」を年12回ほど、8年前から続けています。会社として目指すものを共有することはもちろん、社員が互いの業務内容や仕事への思いを知ることも、新たな事業を作っていくのに役立つと思っています。

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――社員の方がにこやかに挨拶してくださるなど、会社の明るい雰囲気が印象的です。

 そうですよね。私は石油事業の方と仕事をすることが多いのですが、皆さん非常に元気が良くて活発ですし、チームワークの良さも感じます。会議に一緒に参加させてもらうこともありますが、外部の私に対しても自分の考えや意思をきちんと話してくれます。これは社内教育の成果でもあると思いますね。

中川 ありがとうございます。「もっとしゃべって!」と私がハッパをかけることもありますけどね(笑)。それに、日本のほぼ最北端にある会社が、北海道あるいは全国の企業と肩を並べていくためには、まだまだ努力をしなければと思っています。今後も人材教育にはさらに注力していくつもりです。そして、「こんなことをやりたい」「これが面白いと思う!」と社員がより積極的に動いてくれるような組織にしていきたいですね。

――中川社長は以前、特販店の次世代経営者向け研修「出光経営カレッジ」に参加しましたね。

中川 まだ社長に就任する前でしたが、出光経営カレッジの4期生として受講しました。あの時に学んだ、将来実現したい姿を起点にいまを考えるという「バックキャスト」の思考法は、中長期計画を立てる際にも役立っています。

 それはよかったです。出光経営カレッジの受講では、経営を担う方に経営ビジョンの策定や経営推進するための考え方を学んでいただきますので、受講後に自社の事業戦略を見直される方は多数いらっしゃいます。また、受講を契機に、環境変化などを踏まえて事業構造の変革に挑戦されたというお話も伺います。

中川 そうですね。経営に関して、同じ志を持つ経営者の皆さんと知り合えたことも貴重な機会でした。いまも年に1回は会って、意見交換や情報交換をしていますよ。

原 変化の時代を勝ち抜いていくためのアイデアを様々な視点で意見交換する機会は貴重ですね。出光経営カレッジでは、受講者向けのフォローアップ研修も実施していますので、社長に就任されたいま、また新たな気持ちで受講していただくのもおすすめです。

――稚内をはじめ、様々な地域貢献活動にも精力的に取り組まれています。

中川 そうですね。例えば、稚内の中学校や高校からの依頼を受けて、わっかない給油所での「職業体験学習」を実施しています。車が好きな生徒が仕事について考えるきっかけになればと思いますし、もしも将来、なかせき商事に就職してもらえたらもっとうれしいですね。

それから、稚内で開催している「クリクラ杯・少年フットサル大会」は来年で12回目となりますし、稚内Jr.カーリングクラブの活動にも協賛するなど、スポーツに励む子どもたちのサポートもしています。今後も、色々なかたちで地域に恩返しをしていきたいですね。

北海道の人たちに喜んでもらえる
「スマートよろずや」を目指して

――「スマートよろずや構想」の可能性をどう見ているか、それぞれの立場からお考えをお聞かせください。

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 脱炭素化の流れの中で、出光興産のビジネスも、大きな変化の時を迎えています。「スマートよろずや構想」とは、全国各地のサービスステーションを、バイオ燃料や電気、水素などの多様なエネルギーの拠点、EVやEV三輪バイクなどの多様なモビリティの拠点、そして、地域の課題・ニーズに合わせた多様なサービスの拠点とすること。それによって、地域の暮らしを支えてきたサービスステーションという貴重なインフラを、新たなかたちで次の時代へとつなげていこうというものです。 

いま、北海道内の多くの地域が、少子高齢化や過疎化、医療・福祉施設の偏在といった問題を抱えています。これらの問題を根本から解決することは難しくても、そこで生じる様々な「困りごと」に対して、我々ができることはあると思っています。なかせき商事さんが取り組んでいる便利屋やリハビリの事業、出光興産が実証実験を進めている脳機能測定などはその好例といえるでしょう。 

中川 社長に就任する前までは、私自身も建設現場を営業して回っていました。ですから、「油屋が油を供給するのは当たり前。その周辺でお客様の望むことにどれだけ応えられるかが勝負」という思いは染み付いています。その積み重ねが地域からの信用・信頼につながっていくと思いますし、そうした姿勢は「スマートよろずや構想」にも通じるところがあると思います。

それから、我々が担っているプロパンガス事業はお客様の自宅にお邪魔して作業をしますし、灯油の配達ではお客様と配達員が顔なじみになりますから、サービスステーション以上に「お客様との距離」が近いのです。そういう関係性の我々だからこそ気付けること・役に立てることは、大いにあると思っています。

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――最後に、今後の事業展開に向けて意気込みをお聞かせください。

中川 エネルギーもモビリティも変わっていく中、その変化に対応するための体力を蓄えつつ、今後も果敢にチャレンジを続けていくつもりです。ちょうどいまも、新たな事業の展開を2〜3つ、温めている最中です。なかせき商事は来年75周年を迎えますが、さらにその先の100周年に向けて、地域にしっかりと貢献できるよう、グループ一丸となって頑張っていきたいと思います。

 「スマートよろずや」は、地域の課題やニーズに合わせて作り上げていくものであり、そこには決まった正解も完成形もありません。特販店さんが築いてきた地域とのつながりやチャネルをフル活用して、これまでにない新たな価値を地域の皆様に提供できたらと思っています。そのためにも、特販店さんと思いを一つに、ともに汗を流して取り組んでまいります。

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