WELL-BEING ACTION!

ウェルビーイングな旅がもたらす「心身の充足」とは ジャパンモビリティショーで識者が語る

ジャパンモビリティショー2025 トークセッション(前半)

旅と健康の深い関係を科学的に解明

2025年11月5日、ジャパンモビリティショーのステージで「ウェルビーイングとSBNRが織りなす『心の旅』〜地域文化を活かした持続可能な地方創生のあり方〜」と題したトークセッションが開催された。主催したのは、朝日新聞社や株式会社SIGNINGなどを中心に構成されるWELLBEINGACTION実行委員会。あらゆる人が自分らしくウェルビーイングな社会の実現を目指す活動の一環として実施された。

ファシリテーターを務めた株式会社博報堂 生活者発想技術研究所の伊藤幹さんは、まずウェルビーイングという概念について解説した。「ウェルビーイングとは、一瞬しか続かない幸福や幸せ、今楽しいといったハピネスではなく、持続する幸福のことを指す概念です」。WHO憲章の英訳文によれば、肉体的にも精神的にも、そして社会的にも全てが満たされた状態を意味する。わかりやすく言えば「よく生きること」「自分らしく生きること」だという。

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古来から知られていた旅の癒やしの効果

最初の登壇者、株式会社JTB総合研究所 地域交流共創部 主任研究員の臼井香苗さんは、旅とウェルビーイングの関係について研究してきた知見を披露した。JTBグループでは約20年前にヘルスツーリズム研究所を設立し、旅がもたらす健康への効用を科学的・文化的に調査してきた。

「実際に旅に出かけていくと、脳機能が活性化したり、自律神経のバランスが整ったり、免疫力が向上したりといった様々な良い影響が期待できることがわかりました」と臼井さん。非日常的な空間に行き、日常から離れることで新しい刺激を得る「転地効果」によって、脳の機能が活性化し、副交感神経と交感神経のどちらにも良い刺激がもたらされ、バランスが整うという。旅先での地元の人々との触れ合いや身体を動かすことなどの影響があるが、何より自然環境からの刺激が人の心身の健康に大きく寄与している。

しかし興味深いのは、こうした効果が決して新しい発見ではないという点だ。温泉文化を例にとれば、日本では温泉利用の記録が西暦720年から残されており、戦の傷を癒やす場として湯治文化が広がってきた歴史がある。海水浴も心身や皮膚の回復効果が高いとされ、山や森では修験道として古くから心身を整える実践が行われてきた。

現在では様々な調査から、「温泉の成分や温度、海のミネラルや海洋性気候、森のフィトンチッドや標高、といったものが心身に影響をもたらしていることがわかっています。鳥のさえずりをはじめとする自然の音も、人の耳に聞こえる音だけでなく、耳には聞こえないような音の振動も影響を及ぼしているようです」と臼井さんは語る。近年では森林浴が睡眠の質の改善やメンタルヘルスの向上等に寄与することが明らかになっています。

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3つの「つながり」で実現するウェルビーイングな旅

株式会社YeeY 共同創業者・代表取締役で、アステリア株式会社CWO、一般社団法人日本ウェルビーイング推進協議会 代表理事を務める島田由香さんは、ウェルビーイングな旅の本質について独自の視点を提示した。

「今日のWELLBEING、心の旅、SBNRという3つのキーワードは全部連動しています。ここでこのテーマでお話ができるのは、かなり先進的なこと」と島田さん。忙しい日々の中で自分のことをなおざりにして置き去りにしている人は多い。だからこそ旅の中で自分とつながり直す瞬間が重要だという。

島田さんが展開する「TUNAGU」という研修プログラムでは、3つのつながりを大切にしている。第一に「自分とつながる」こと。第二に「人と地域とつながる」こと。必ず地域を訪れて、そこで暮らす人々を知り、特に一次産業にフォーカスを当てている。「東京で暮らしていると、一次産業への感謝や意識を向けることがなくなってしまう。だからこそ必ず一次産業に関わって貢献して帰るという旅を推奨しています」。

そして第三のつながりが「未来につながる」こと。1回行って終わりではなく、また行きたい、誰かを連れて行こうという次の旅が紡がれていく。この継続性が地域との持続的な関係を生み出す。

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地域資源とウェルビーイングの密接な関係

株式会社SIGNING Business Producer / Co-Creatorの山縣太希さんは、地域創生の文脈からウェルビーイングを語った。SIGNINGは博報堂グループの中で社会課題をテーマに取り組むソーシャルデザインカンパニーとして設立された企業だ。

「地方は社会課題の先進エリアであるという仮説から取り組んでいます。様々な地域に行かせていただく中で、地域ならではのものが実はウェルビーイングにすごくつながるケースが非常に多くなってきていると感じています」と山縣さん。地域資源とウェルビーイングの密接な関係の先に、新たなビジネスチャンスも生まれているという。

山縣さんは仕事柄、様々な地域で山に登ったり海に行ったりすることが多い。「物理的に体を使いながら旅すると、頭の中をリフレッシュできるという経験が数多くあります」。さらに個人的にも、「妻の実家が湯布院で観光業を営んでおり、旅とSBNRは生涯付き合っていくテーマ」と語った。

伊藤さんは「旅とウェルビーイング・SBNRと聞くと新しく感じますが、温泉に入るとリラックスするというような旅がもたらす身体的・精神的な効果は、古くからみんなが実感してきたところではないでしょうか」とまとめた。

科学的なエビデンスと古来からの知恵が融合し、改めて「旅」の持つ力が注目されている。ウェルビーイングな旅は、単なる観光やレジャーを超えて、私たちの心身を根本から整え、人生を豊かにする可能性を秘めている。

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