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賢い消費者か、ただのオタクか

2008年10月27日

  • 筆者 小原篤

写真「炎神戦隊ゴーオンジャー」DVD第1巻(東映ビデオ)写真ぐわーんと胴体イラストガキーンと左腕イラストガチョーンと右腕イラストウイーンと頭イラストジャキーンと両脚イラスト合体完了! 実物よりずいぶんスリムに描いてくれた息子に聞きました。「G12どう?」「デカすぎ!」

 G9から今度はG12だそうです。世界的な金融危機に対処すべく主要9カ国に新興国を加え12カ国が緊急の首脳会議を――なんて話では、もちろんありません。毎度おなじみ東映特撮ヒーローもの「炎神戦隊ゴーオンジャー」(テレビ朝日系で放映中)で、主人公たちの相棒であるメカみたいな生き物みたいな炎神(エンジン)たちが大集合、9台合体「エンジンオーG9」を上回る、12台による究極合体巨大ロボ「エンジンオーG12」が、10月19日放映回でその威容を現したのです。この番組にすっかりハマっている息子(小1)に思わず叫びました。

 「お、クリスマスはこれで勝負か!」

 1月か2月に新番組を開始、ファーストアイテムをご卒業・お入学シーズンにぶつけ、さらにゴールデンウイーク、帰省シーズン、クリスマスといったおもちゃ商戦の山に合わせて新アイテムを用意し、先行して番組内に登場させてアピールした後おもちゃを発売。そしてクリスマス・お年玉シーズンが終わると番組終了、すかさず次の新番組が始まる。これぞ、スポンサーであるバンダイが特撮ヒーローものや魔女っ娘もので完成させた、1年ムダなし休みなし究極合体毎度ありロボ〈マーチャンダイジング・キング〉だ!(ロボじゃないか)

 新しいメカや新しいコスチュームや新しい変身アイテムが次から次へ登場してドラマは盛り上がり、子供も盛り上がり、CMも盛り上がって「パパこれほしい!」となるわけで、親にとっては世界征服を企む悪の秘密結社よりも怖い困った作戦ですが、商売としては見事な洗練の極み。私も新聞紙面で何度か取り上げました。

 さて、番組内では炎神12台がガチャンコガチャコンと合体完成。おもちゃの方もエンジン全部買いそろえればガチャンコガチャコンと同じように合体ができるようになっているはず(コンパクトバージョンもあるらしい)。実に大したものです。

 息子「……でかっ!」

 私「……動けないんじゃない?」

 G12、デカイです。トーテムポールみたいに炎神の顔が重なった小さな胴体の左右には、胴体より大きな肩がくっつき、そこからさらに大きな腕が…というか、どこが肩で腕で手なのか? 胴体の下にはその3倍くらいありそうな腰、そしてさらに太い脚、その先にメカがくっついてまたくっついてもっとデカイ足。何というか、跳び箱(小)のような脚に跳び箱(大)のような足がついた、まさに究極合体。ロボットの着ぐるみの中の人は、人がスッポリ入りそうな巨大ポックリをはかされ脚を少し上げるのが精一杯に見えます。すごいぞビックリポックリメカ、これ以上やると小林幸子です(意味不明)。やっぱり年々エスカレートさせなきゃならないからでしょうか。大変だなあ。

 さて、息子には折に触れてこうした「商売」について説いてきかせています。アレほしいコレほしいと騒ぎ出すたびに「いやいや、あれはね」と解説してやるからです。

 「ライダーの変身アイテムがほしい? でも来月でこの番組終わるよ。もうすぐ雑誌に次の新ライダーが出てくるよ」

 「雑誌の付録のレアカードがほしい? カードのパワーなんてただの数字。作ってる会社の人が好きに決められるんだよ。ちょちょいと数字を大きくして印刷すれば、カードの何倍もする雑誌が一緒に売れるんだから」

 字にしてみると、なんだか自分がすごく意地悪な父親に思えてきます。

 あるとき息子が言い出しました。「帰ってきたウルトラマンの特徴って、ぼく知ってるよ」

 「へえ、何だい?」

 「変身アイテムがない」

 「おー、そうだね。でも代わりにウルトラブレスレットがあるよ」

 「あっ、そうか。ヤリになったりするんだよね」

 「そうそう。新しいウルトラマンにはみんな派手なアイテムがあるけど、あれはさぁ――」

 「おもちゃにするからでしょ。かっこいいから、いいじゃん」

 なんて会話をしていると、ふと思います。私は息子を賢い消費者にしようといろいろ教えてきたつもりですが、もしかしたら、ただのオタク教育なのかもしれません。でも、まあいいや。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。08年4月から編集局編集センター員。

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