日本医師会シンポジウム 採録 全ての子どもが、
健やかに成長できるために
~小児在宅ケアの推進を目指して~

動画パネルディスカッション

パネル
ディスカッション
前田浩利先生 自見はなこ先生
内多勝康さん
松本吉郎先生
【司会進行】竹内由恵さん

医療的ケア児を、
みんなが支える

写真:パネルディスカッション

ケア児と家族を支える
「支援法」に期待

竹内 医療的ケア児と家族の日常生活はどのようなものですか。

写真:前田浩利先生

前田 人工呼吸器や胃ろう等の重いケアが必要でも、活発に動き回る子もいます。医療機器のポンプで遊んだり、いたずらで呼吸器を外そうとしたり。元気なことは喜ばしいのですが、ひとときも目が離せません。あるお母さんの話では「トイレもろくに行けない。自分の食事は一日一食」だとか。本当に大変な日常を送っています。

内多 「もみじの家」ではこうした動けるケア児も喜んで受け入れていますが、いまの制度下では、人件費の都合で赤字になります。今後さらなる制度の拡充を望みます。また時折、東海や東北など遠方からの利用もありますが、移動だけでも家族に大きな負担がかかります。各都道府県に最低1カ所はケア児を安心して預けられる短期入所施設を整備してほしいものです。

自見 こうした方々を支えるべく今年6月、「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が成立しました。画期的なのは、ケア児と家族の支援が、国や地方公共団体、学校や保育所の設置者の「責務」であると明記された点です。また、各都道府県に設置される「医療的ケア児支援センター」では、家族の就労も含め、彼らを取り巻く環境をサポートしていきます。

写真:松本吉郎先生

松本吉郎 先生 日本医師会常任理事
まつもと・きちろう/浜松医科大学卒業。同大皮膚科等を経て、松本皮膚科形成外科医院理事長・院長。2011年埼玉県医師会常任理事。14年大宮医師会会長。16年より現職。

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松本 日本医師会でも、2016年度から小児在宅ケア検討委員会を立ち上げ、小児在宅ケアの推進に必要な政策の提言や予算要望を行ってきました。例えば、動けるケア児に対する支援は、今年から通所実態に見合った評価がなされました。また、障害児は現状、重度訪問介護サービスの対象外ですが、例えば親がケア児の兄弟姉妹の学校行事に行く際などにも利用できるよう、引き続き要望していきます。

登校は? 災害時は?
立ちはだかる多くの壁

竹内 ケア児は、学校には通えているのでしょうか。

前田 登校を望む切実な声は多いですが、一部地域を除いてあまり実現できていません。登校できる場合でも、親の付き添いを求められるため、親が離職せざるを得ないケースもあります。

写真:自見はなこ先生

自見 先進的な取り組みで知られるのが、大阪・豊中市です。教育委員会が看護師の人員配置を担っており、市内のどの学校にケア児が通う場合でも市がサポートします。教育委員会が当事者意識を持って取り組んでいる素晴らしい事例です。

松本 厚労省の研究事業では、保護者から離れて学校生活を送ると、ケア児の自立心が養われ成長・発達が見られたとの報告があります。周りの子どもも、看護師に質問してケア児を理解しようとしたり、校内の移動を手伝ったりするように。「インクルーシブ教育」の教育的効果は大きいと思います。

竹内 災害時の対策についてはいかがでしょうか。

写真:内多勝康さん

内多 ケア児の家族からは「避難自体ができないかも」との声を聞きます。医療機器や車椅子だけで相当の重量ですから。一方、在宅避難の場合でも、「電源喪失は命に関わる」「酸素ボンベがなくなったら」など、多くの不安を抱えています。

松本 今年5月の災害対策基本法等の一部改正では、要配慮者にケア児を含めて支援を強化すること、また、福祉避難所では医療機器の電源を確保すること等がガイドラインに盛り込まれました。ご家庭、行政、関係者が一緒に考え、備えていくことが重要です。

地域が連携し、誰もが
幸せに暮らせる社会を

写真:竹内由恵さん

竹内由恵 さん (タレント)

竹内 今後、ケア児を地域で支える必要がありますね。

前田 限られた医療資源の中で医療体制を維持するには、ケア児が病院から地域へ帰っていくことが必要です。

内多 そのためには、病院だけでなく、保育や教育、就労の場など、社会のあらゆる場で医療的ケアの担い手が必要とされます。ただし、看護師や介護職員はすでに人材不足。担い手の確保は喫緊の課題ですよね。

前田 はい。ケア児だけでなく、地域包括ケアシステムにもかかわる問題ですね。

自見 担い手の確保には、財政支援が重要です。これは国全体の課題であると我々も認識していますので、対策を進めていきます。

松本 愛知の瀬戸旭医師会では、ケア児と家族向けのイベントを定期的に開催しています。行政担当者や医学生らも参加しており、小児在宅ケアのすそ野を広げる一助となっているようです。日本医師会は地域の医師会と協力しながら、ケア児と家族への支援に引き続き尽力していきます。

内多 「世界一安全に赤ちゃんが生まれる国」である日本が、「世界一子どもを守る国」にもなれるよう、オールジャパンで取り組みましょう。

前田 「生まれてきて良かった」とケア児が思える社会はきっと、あらゆる人がそう思える社会です。そんな社会を皆さんとともに、作っていければと思います。