齋藤薫の美しい歳の重ね方
「怒ったところを見たことがない人」と言われるのも、また美容である。
喜怒哀楽の中でも、特別厄介なのが“怒り”である。笑いにも、また涙にも、ストレスを体の外に出していく働きが備わっているから、いつも笑顔を絶やさず、でも悲しい時は思い切って泣いてしまえば、自然に免疫が高まって、それ自体がアンチエイジングになるのに、怒りだけは別。「怒りをぶつければ、スッとする」という言い方があるけれど、結果としてそうはならない場合の方が多いからである。つまり激情に駆られて相手に怒りをぶつけた時、多くの場合それは自分に返ってくる。自分の発した言葉が、嫌な記憶として残っていき、ある種の毒素として体に溜(た)まっていく。それ自体がストレスとなって人を淀(よど)ませるのだ。
しかも激しい怒りは、一度でも人に見せると自分のイメージを変えてしまう。「あんな風に激怒する人だったなんて知らなかった」とばかりに“怒る女”のレッテルを貼られ、偏見を持たれてしまうのだ。怒る姿を他人に見せると、人は絶対損をする。一度見せてしまうと、次はもっと簡単に見せてしまえることも含め、怒りは人に見せたくない。生涯一度も怒りを爆発させない生き方だって、その気になれば、できるのだから。少なくとも正義感以外では怒らない、そんな努力をしたいもの。
「あの人の怒った顔を見たことがない」と言われる人は、やっぱり好感度が極めて高く、そしてやっぱり若々しく美しい。怒らないことそれ自体が、美容であり、アンチエイジングとなる証し。もちろん、まともに生きていたら、怒りは避けられない感情。でも自分の中だけで消化することはできるはず。怒りに任せて言葉を発したくなった時、その言葉を声にする前に、まず口の中で10回言ってみる。それが激しく汚い言葉であるほど、それを口にする自分が客観的に見えてきて、これを言ったら自分が汚れると思う。結果として口に出さずに済むはずなのだ。だから、怒らない癖をつけて欲しい。自分のため。自分の未来のために。

さいとう・かおる
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイスト。多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。近著の『“一生美人”力』ほか著書多数。Yahoo! ニュース「個人」でコラム執筆中。
