Beauty
2018.03.15

齋藤薫の美しい歳の重ね方
“ベッドを綺麗に整えて、心残りなく試合に臨む羽生選手”に、 心して大人が学ぶ人生の見直し方

文字通りの“一挙手一投足”が日々ニュースになるのは、言わずもがな羽生結弦選手。この23歳はどこから現れたのかと思うほど、人格が完成してみえる。とりわけ「ベッドのシーツや枕は綺麗にしてから出る。心残りがない状態で試合に行くということは常にしています」と語った時は、一体ナニ者?!と、感心を通り越してゾクッとした。

こういうことは、親の躾で習慣化しても“精神論”として23歳が語れる種類の話じゃない。散々(さんざん)経験を積んだ女性が人生を見直し、きちんと生き直さなきゃと思った時、改めて心に決める生き方のルール。それが未だできない大人にとっては衝撃だった。ある心理学者が、羽生選手は“時間と空間を完全に自分のものにしている”と分析していたが、まさにそれ。すでに、言動のすべてにいちいち明快な意味がある生き方をしているようだ。

単純に、自分が寝ていたベッドの乱れを見ると、誰もが後ろめたい。それはそっくり自分自身の乱れ。暮らしと心、両方の乱れを形にしたものだから。でもその分だけ、自分で整えた時の快感と達成感は日常の中でも格別のもの。身繕(つくろ)い以上に、自分が整った喜びをもたらしてくれる。生涯の3分の1を横たわる場所には、客観的に自分を見るような感覚が生まれるからなのだろう。ましてやそれは、“1日をきちんと始める自信”はもちろん、自分が整えたベッドが1日の最後には大きな安らぎに繋(つな)がることにも気づくはず。毎日のベッドの有り様は、何と多くの意味を持つのだろう。

でも、たとえ家のベッドは毎日整えても、ホテルのベッドまで完璧に整える人はどれだけいるのか。どうせすべてを取り替えるのだしと、見苦しくない程度にごまかすのがせいぜい。「心残りのない状態で試合に臨むため」のベッドメイキングを語った羽生選手は、遠征先でも客室係を何かと感動させているのだろう。朝は忙しいから……と言うエクスキューズはもう使えない。あの天才は、日本人の生き方さえ正そうとしているのか?

さいとう・かおる
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイスト。多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。『“一生美人”力』ほか著書多数。Yahoo!ニュース「個人」でコラム執筆中。