Beauty
2018.05.16

齋藤薫の美しい歳の重ね方
ハグという習慣のない日本は、人の心の温度を
体で教えるため、「ギューする」から始めるべきである

近頃やたらに耳にするのが、「ギューする」というワード。CMでもドラマでも、「ギューして」という表現がまことによく使われる。多くは、母親が子供を「ギューする」パターン。いわゆる“抱きしめ”である。これが人間関係においてもいかに大切か?、それだけでひしひし伝わってくる。日本の人付き合いに決定的に足りないのはこれであると、ずっと感じていたからなのだ。

日本人はハグをしない。ハグと言う習慣がない。主要国では唯一しない国と考えてもいい。今やアジアでも、若者を中心にハグする国が少しずつ増えてきているほど。それも1つの国際化なのかもしれない。となると、ますます寂しい。

例えば、親しい人のご家族が亡くなったような時、お通夜や告別式で、深めのお辞儀をしながら型通りの言葉を口にするのがやっとである自分に、いつもいつもふがいなさを感じる。むしろこういう時、相手を黙って抱きしめることができたら、多少とも思いが伝わるのにと残念に思うから。日本ではまだまだTPOを問われるから、違和感なくハグを差し込むのはとても難しい。かくして日本はその分だけ、人間関係の心の温度が何度か低い国と思えてならないのだ。

そういう意味で親子間の「ギューする」は、突破口となるかもしれない良い習慣。単なる抱っこではない、明快な意思を持って相手を抱きしめ、愛情をカタチとして温もりとして、日々伝えていく。問題は多分それを一体いくつまで出来るのか? 子供の成長とともに、しなくなるのか、させてもらえなくなるのか? それがないと心が寒くて不安になるほどの暖かさを、肌に体に覚えさせておくことなのだろうと思う。そんな親子間の「ギュー」を「充電」と表現するCMを見た。いや、そのぐらいの使命感を持っていい。日本は親子関係の温度も低めとされるから。言葉なく、気持ちを絡ませ、お互いの温もりで、ほんの数秒間でも温め合う素晴らしさを私たちも知るべきだから。

さいとう・かおる
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイスト。多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。近著の『“一生美人”力』ほか著書多数。Yahoo!ニュース「個人」でコラム執筆中。