齋藤薫の美しい歳の重ね方
せっかく日本人が一括(くく)りに、まとめて絶賛されたのだ。
それを無駄にしない、きれいな国になりたい。
30分でもいいから、日本人になりたい……誰が言ったか、そんな最大級のコメントも聞こえるほど、海外メディアで絶賛されたのは、W杯で日本代表チームが負けた試合でも“ロッカールームをきれいにして帰ったこと”。
一方にはパフォーマンスではないか、選手ではなくスタッフがやったこと、といった批判めいた意見もあったというが、何よりそれは、日本人にとってとても大きな意味を持つ報道だった。
日本にも、屋外イベントの後はゴミだらけといった現実があって、日本人がみなゴミを拾って帰るわけじゃない。でもだからこそ、日本人という括りで、まとめて褒めてもらうことが大事なのだと、そう思うから。
マナーがいいねと言われると、もっとマナーを良くしなければと思うのが人間。「トイレはきれいに使いましょう」という張り紙を、「いつもきれいに使っていただきありがとうございます」に変えたら、トイレが本当にきれいに使われるようになったと言う話もあるほどだから。
日本人が“清潔好き”であるのは確か。でも、自分が使う洗面台がきれいじゃないと許せない“清潔好き”で、自分が使った後の洗面台をきれいにできる“清潔好き”ではなかったりするきらいも……。立つ鳥跡を濁さず。大切なのは、立ち去った後の有り様なのだということを、彼らが改めて教えてくれた気がする。
そしてもともとは、日本のサポーターがゴミを持ち帰ることが評判になったわけだが、これは選手たちをサポートしたいと言う気持ちの表れだったというし、選手のロッカールームをスタッフがピカピカにして「ありがとう」の言葉を残して立ち去れたのも、もちろん選手のため。
日本人は誰かのためになら面倒なこともきちんとできる気質だ。公共の場でも、その洗面台を次に使う人のことをイメージすると、飛び散った水をペーパーで拭き、落ちた髪の毛を片付けてから立ち去れるはず。ここは想像力を働かせるべき。それだけで日本はもっときれいになる。2020年に向け、日本人は世界中からもらった日本の選手と日本の絶賛をムダにしないために、日本をきれいにしておきたい。何かそこまで思わされた出来事だった。

さいとう・かおる
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイスト。多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。『“一生美人”力』ほか著書多数。Yahoo!ニュース「個人」でコラム執筆中。
