Beauty
2018.11.07

齋藤薫の美しい歳の重ね方
ともかく行くだけで安心してしまっていないだろうか?
“絵画鑑賞”をちゃんと内面磨きに変えるコツ

内面を磨くって、何をすること? その答えとしてしばしば筆頭に挙げられるのが、“絵を観に行くこと”だったりする。有名な作品がかかるような鳴り物入りの絵画展は常に大盛況、今やある種の“絵画鑑賞ブーム”と言っていいが、それだけに話題の展覧会には行くだけで安心している人が少なくないとも言われる。もちろんどう観ようと自由、足を運ぶだけでも充分なのかもしれないけれど、これで本当に内面が磨かれているの?と奇妙な不安に苛(さいな)まれるなら聞いてほしい。絵画展に一体何を観に行くか。

あなたは一回でも、絵の前で立ち尽くした経験があるだろうか? まだないなら、それを体感するためにこそ絵画展があるのだと考えてみて欲しい。とてつもなく美しい景色に、言葉を無くして立ち尽くすという経験はきっと誰にもあるはずだが、絵画展でも同じ瞬間を見つけて欲しいのだ。いや見つかるまでいろんな絵画展に通い続けてほしいくらい。その時、自分の中の美意識の扉が突然開き、様々な感慨がそこからあふれ出してくるはずだから。

しかもそこで、それを描いた画家はなぜそれを描かなければいけなかったのか、そこへの興味が一気に噴き出してくるはずだから、きっとあなたは調べ出す。たとえそれが商業的な理由で描かれたものであったとしても、その創作行為に興味が湧くだけで、絵画の見方ははっきり変わるはずなのだ。もちろん、調べてから見に行く方法もある。しかしまずは立ち尽くしてほしいのである。

コンサートでも、ある瞬間、滂沱(ぼうだ)のごとく涙があふれだす体験をした時から、音楽を聴く意味が分かったという人も少なくない。対象が何であれ、人はそうした情感のエクスタシーを一度でも体験しないと、何を観ても聴いても、内面が磨かれていると言う実感を得ることはできないのかもしれない。いずれにしても、家の中で印刷物をいくら眺めていても、そういう体験は得ることができないわけで、まずは探しに出かけて欲しい。一枚の絵画の前で、言葉なく立ち尽くす瞬間を探しに。

さいとう・かおる
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイスト。多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。『“一生美人”力』ほか著書多数。Yahoo!ニュース「個人」でコラム執筆中。