齋藤薫の美しい歳の重ね方
例えば、わざわざ遠い所に住んで、通勤時間を長くする、
そんな生き方もありな理由
なるべく都心に住みたい、なるべく職場に近いところに……誰もがそういう思いを常に持っているのだと、決めつけていた。かつては、マイホームを持つこと=郊外に住むこと、通勤時間2時間以上もいとわずに……そんな方程式があったが、今や通勤時間はそっくり“人生の無駄”という価値観が世の中を支配しているのだとばかり……しかし、時間の使い方における全く新しい発想が生まれていたことを、最近知った。結論からいえば、わざわざ職場から遠く離れたところに住みたいという人が、今再び増えているというのである。でもなぜ?
意外だけれど、“読書のため”。あるいは何かしらの“勉強のため”。一方で、職場でも、家でも1日中デジタル画面を見ている事に疲れてきている人も少なくない、と同時に電車の中では他人に覗かれても恥ずかしくないものを読んでいたいという思いもあるのか、昔ながらの“電車の中で読書”に復活の兆しがあるのだ。通勤電車の中は“自分の時間”でありながら、人の目もある公共の場、社会人としての良識も問われるわけで、そうした緊張感がほどよく働く電車の中は、読書や勉強にとても向いている、ということなのだろう。逆に言うなら、職場でもない、家でもない、ある意味誰にも邪魔されない場所をわざわざ作って、自分の勉強時間に当てるという新発想。だから通勤時間は人生の無駄どころか、自分を磨く大切な時間になるとまでいわれるわけで、むしろそういう通勤時間を持っている人が羨ましいとまで思えてしまうから不思議。唐突だけれど、人生は短い。毎日の2~3時間を、ぼーっと生きるか、無駄なく生きるか、ちょっとした考え方、ちょっとした心がけで大きく変わるはずで、無駄なく有意義な1日を送ると、一年であっという間に、500時間1000時間の差がついてしまうことに気がついてほしいのだ。

さいとう・かおる
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイスト。多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。『“一生美人”力』ほか著書多数。Yahoo!ニュース「個人」でコラム執筆中。
