齋藤薫の美しい歳の重ね方
日本人の生活習慣は散々不思議がられてきたけれど、
今こそ大切にすべき時!
日本の生活習慣が、期せずして注目を浴びている。言うまでもなく、コロナ禍において“意外な抑え込み”ができているから!? もちろん真相は謎のままだけれど、手を洗う、土足で部屋に上がらない、とりわけ世界一“マスク好き”なことが、その一つの要因である可能性は大きいといわれる。風邪や花粉症予防だけじゃない、なんとなく自分の存在を隠したいという日本人特有の深層心理も手伝って、冬から春に街にマスク姿が増えることが、海外では散々不思議がられてきたが、奇しくもそれが功を奏したということになる。そしてまた、最もハグをしない国の一つであることも影響したとの説も……。ハグはおろか握手もしない、お互いお辞儀をしてもぶつからない距離を保つことがやっぱり欧米では不思議がられていたに違いないのだ。ある意味、人との距離が遠い国であることが、良い結果につながるというのは、皮肉だけれど。
でももう一つ、不思議がられてきたことがある。お風呂である。欧米ばかりか、じつは中国や韓国も入浴はシャワー中心で、毎日バスタブにお湯をためてゆっくり入る国はとても珍しい。それも日本のお風呂は、汚れを落とすだけじゃない、日々心身の疲れを癒やす特別な場所だから。バスタブのお湯につかっている時間は、母親の胎内で羊水に包まれていた時の記憶を蘇らせ、だから無垢な心に戻れるのだと考えることも。そして、日本のお風呂には魂も洗い清めるという意味が今も息づいているのかもしれない。
日本人の清潔好きも、そうした浄化の精神がベースにあり、私たちは毎日のお風呂で知らず知らず身も心も同時に清めているのだとしたらどうだろう。それこそマスクの習慣や他人との距離も、そういう精神性と無関係ではない気がしてきた。だからこれを機に、毎日のお風呂の意味を見直したいのだ。汚れを落とすだけでも、癒やすだけでもない、日々身も心も清めているのだと自覚しながらバスタブに体を沈める。そういう心がけが、より自衛的かつ丁寧な生活様式の核となっていくはずだから。
いずれにしても“日本の不思議な習慣”はどれも素晴らしい意味を持っていた。大切に大切に、生きていきたい。
齋藤 薫 さん

さいとう・かおる 女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイスト。多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。『“一生美人”力』ほか著書多数。Yahoo!ニュース「個人」でコラム執筆中。
