Beauty
2021.08.31

齋藤薫の美しい歳の重ね方
「やっているつもり」の最たるもの。
“人への感謝”はおざなりだった。
今こそ、「10倍感謝」のススメ。

一生のうちで、人は何回そのフレーズを耳にすることになるのだろう。「感謝の心を忘れずに」………物心ついてすぐに教わり、道徳の時間にも繰り返し学び、大人になればなったで、生き方の本でも幸福論でも格言でも、必ず目にすることになる。結果“言われなくてもわかっていること”の最たるものとなり、それだけに、ずっと「やっているつもり」になっていた。

そんな中、ある取材で「ウェルビーイング」の研究者、前野隆司氏にインタビュー。ハッとさせられたことがある。極めてシンプルに「よりよく生きること」こそ幸せのカギと説くウェルビーイング。その具体的なテクニックの一つに「ともかく人に感謝すること」という提案があった。正直さらりと聞き流してしまいそうになるものの、“やっているつもりになっていること”を見透かされたのか、さらに前野氏はこう言った。「今の10倍感謝する、そのくらいのつもりで」。今の10倍! その言葉が強烈に刺さったのである。幸福学の学者が10倍という、極端にも思える表現をする、そこに感謝の中にあるとてつもない力が潜んでるのを感じたのだ。その瞬間、今までいかにおざなりだったかに気づかされる。例えば家族に。その日、家に帰ってすぐ、何げないことにいちいち「ありがとう」を言った。それもとても丁寧に朗らかに。不可解に思われたが、構わずに。逆に今までいかに心を込めていなかったか、いかに無表情だったか、感謝というより惰性だったかに気づかされた。

ただ重要なのはここからで、それこそ“10倍感謝”を意識すると、なんでこんなに気持ちが良いのだろうと声にだしたくなるほどの快感と清々(すがすが)しさがある。心が洗われ晴れ晴れする。どんどん前向きに幸せになる。感謝って自分のためのものだったのかと思うほどに。「これはやらない意味が見当たらないほどおススメです」と強調された理由がはっきりわかった。幸せになる方法はこれまで無限に語られてきたはずだ。でもこれほど簡単にこれほど確実に幸せを実感できた例は他にない。だからひたすらおススメしたい、10倍感謝。当たり前の毎日を当たり前により良く生きる……ある意味、最も身近な幸せを取りに行く方法。ウェルビーイングは、偉大なり!

齋藤 薫 さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト

さいとう・かおる 女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイスト。多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。『“一生美人”力』ほか著書多数。Yahoo!ニュース「個人」でコラム執筆中。