Beauty
2022.01.19

齋藤薫の美しい歳の重ね方
知らないことが沢山(たくさん)あるままでは死ねない
知りたい欲こそ、大切!

「知らないことがあるのは嫌だから」……。わずかな休暇が見つかれば、躊躇(ちゅうちょ)なく世界のどこへでも出かけていく女性が、そう言っていたのを思い出す。むしろ60歳を過ぎてから旅は濃度を増し、危険な秘境まで1人で出かけていったのは、まさに知りたい衝動を抑えられなかったのだろう。

日本初の海外取材番組にして最長最強の旅番組で、31年間に150カ国あまりを旅した伝説の人、兼高かおるさんも番組終了後、60代から晩年まで精力的に世界を歩き、こんな言葉を残している。「知りたい欲こそが、若さの泉」と。コロナ禍となる前年に90歳で亡くなったが、ふと気になったのは、この人たちは健在ならば今のこの事態をどう切り抜けるのか。「知りたい欲」をどこに向けたのだろうということだった。

そう考え始めたら、逆に何かぼんやりしていられなくなった。自分は360度知らないことだらけだからである。改めて、今まで一体何をやっていたのだろうと自分が腹立たしくなるほど、知ろうとする努力をしてこなかった。このままではマズイと強く思ったのだ。なぜか長引くコロナ禍に、そのとても大切なことに気づかされたのだ。動きが取れないからこそ、知ることの価値が見えたのだろう。

だからここ最近、不要不急以外の外出から読み物、観るTVに至るまで、そこに"知る喜び"があるのかどうか? それを最優先に考えるようになった。世界と宇宙と自然界のこと、芸術に歴史……恥ずかしながら、今更ながら、知的好奇心が芽生えてきたのである。

するとにわかに、無駄な時間は少しもないことに気づいてしまう。人生後半、もはやのんびりなどしていられないという気になってくる。なおのこと、知りたい知りたいと、知りたい欲がむくむく頭をもたげてきたのである。

おそらく、人生100年の新しいカレンダーがその知的欲求を後押ししてくれたのだろう。今からでも遅くないというふうに。何に対して遅くないのかは不明。いやきっと何かに大きく役立ったりはしないのだろう。でもおそらく知らないことがたくさんあるままで死んではいけないという、遅れてきた向学心と人間の本能としての知識欲がそうしたエネルギーを与えてくれた。まさに、知りたい欲こそ、大切! 途中で気がついて本当に良かった、と今つくづくそう思うのである。

齋藤 薫 さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト

さいとう・かおる 女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイスト。多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。『“一生美人”力』ほか著書多数。Yahoo!ニュース「個人」でコラム執筆中。