齋藤薫の美しい歳の重ね方
さらなる不安が続く世の中で
にわかに見直されている力、ぬいぐるみはなぜクマなのか?
2年ぶりの明るい兆しが見えてきたと思ったのも束の間、また次なる不安が押し寄せて、落ち着かない日々が続いている。TVをつければウクライナ情報。現実から目をそらしてはいけないと思う一方で、また別の種類のストレスが蓄積していくのがわかるよう。そんな中でハッとするニュースがあった。ウクライナ市民が逃れているポーランドの避難所で、とても喜ばれている救援物資が「ぬいぐるみ」であるという話題。まさしく着のみ着のまま家を出てきた母子にとってそれは大きな救いになるのだろう。
そこで改めて注目したいのが、ぬいぐるみの力。心地よいものに触れることで、昨今話題の幸せホルモン"オキシトシン"が分泌されることもわかってきたが、それ以前に"ぬいぐるみ療法"というれっきとしたセラピーが存在するのだ。心を癒やす箱庭療法の一つとして好きなぬいぐるみと自由に関わるだけで、ため込んだ心の痛みが自然と和らいでいくらしい。触れたり抱きしめたり、そばに置くだけでも孤独感を癒やし心を安定させる効果に、子どもばかりか大人も救われるのだ。それもぬいぐるみには顔があり、命あるものと錯覚でき、やわらかな体が自分を否定せず包み込んでくれるから。
さて、ぬいぐるみといえばクマ。でもなぜクマなのだろう? いわゆるテディベアは、ルーズベルト米大統領が狩りに出て、けがをした熊をあえて逃がしたことから大統領の愛称を持つクマのぬいぐるみが作られたのが始まりといわれる。それ以来、定番はクマであり続けているが、一説に、大きくて強いクマは、言うまでもなく実際は極めて危険だが、そういう存在が逆に温かく穏やかな表情でそばに居てくれることが、比類のない包容力につながるからとされる。確かにそこはかとない頼もしさを備えている。だからコロナ禍に大きなぬいぐるみを買った大人は少なくないのだ。
さて最新の研究で、幸せホルモン"オキシトシン"は、脳からだけではなく肌でも分泌され、表皮の再生を促す作用を持つことが、資生堂とマサチューセッツ総合病院皮膚科学研究所の共同研究により解明されている。そうした副産物も含め、今この不安の時を乗り越える一つの手段として、心に留めおきたい。
齋藤 薫 さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト

さいとう・かおる 女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイスト。多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。『“一生美人”力』ほか著書多数。Yahoo!ニュース「個人」でコラム執筆中。
