Beauty
2022.06.17

齋藤薫の美しい歳の重ね方
歯の定期検診で、口の中の大掃除をしてもらうと、なぜ幸福感まで得られるのか?

歯だけは自然治癒しない……言われてみると、確かにそう。不養生でも妙に元気な人はいるけれど、歯ばかりはごまかしがきかない。ましてや日本人の多くは虫歯ができないと歯医者に行かないから、成人の歯周病はかなり多いらしい。ここで「歯周病=万病の元」ということがにわかに叫ばれ、国民皆歯科健診の導入検討に向けて、国がようやく動き出した。先進国の多くで常識なのに、日本で定期検診を受けている人は少数派らしい。認知症との関係は指摘されていたけれど、今回糖尿病や動脈硬化など怖い病気との関係が取りざたされ、慌てて定期検診に走る人が少なくないのだろう。

ただ歯科医院はもともとかなり混んでいるイメージがあり、そういう意味で大丈夫だろうかと心配になる。一気に殺到したことで、あわただしい検診にならなければ良いがと。実は今まで歯医者にはあまり恵まれなかったが、10年前から通う近所の歯科医院は素晴らしく、定期検診は当然のように月に1度、毎回口内の大掃除をしてくれ、その丁寧さは驚くほど。しかも何らかの違和感を伝えると、見つけていただいてありがとうございますというスタンス。自分が見つけられなかったものを見つけてくれてと。つまり完全にすべての患者の口の中への責任を負ってくれるわけで、この深い安堵(あんど)感は、他のことではちょっと置き換えの利かないもの。今までそれを「なぜだろう」と思っていたけれど、ようやくわかった。命を預けられる安心感なのだと。本当は命に直結していた歯に、そっくり責任を担ってくれる歯科医師に見守られている安心感。医者こそ人柄だとつくづく思う。今、「ウェルビーイング=心の状態を良くすることが幸せに通じる」とする考え方が話題だが、口内大掃除をすると必ず幸福感に満たされる。大きな盲点として本気で取り組まなければ。

齋藤 薫 さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト

さいとう・かおる 女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイスト。多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。『“一生美人”力』ほか著書多数。Yahoo!ニュース「個人」でコラム執筆中。