齋藤薫の美しい歳の重ね方
なぜ、大人にも夏休みが必要なのか。
日常を喜べない人ほど、非日常も喜んでいないから?
何でもない日常に、喜びを見いだせることこそが幸せ……そういう意味の名言格言が少なくない。それは何げない日常を愛せよという教えが、時代を問わずあったのを裏付ける。深読みすれば、人間分かっていても、なかなかその境地に至れずにきたということ。
ただ日常を喜べない人ほど、非日常も喜んでいない。気がつけば寝だめに使い果たしたりする。休暇にゴロゴロしていた時ほど、翌週に疲れが残るのを思い出してほしい。日常と非日常の精神的なメリハリ、そのバランスこそが人生の充実に繫(つな)がるのに。
人間も、また世の中の仕組みも上手(うま)くできていて、多過ぎても少なすぎても辛い非日常。週末と長期休暇、それを完璧な非日常にすれば、日常もがぜん有意義でハリのあるものになるはずなのに。
そもそもが日常と非日常を劇的に分け、二つの時空を行き来する事自体が、人間にとって無上の喜びとなる。お互いがお互いを照らし、輝かせる。どちらかしかなかったら、どちらも嫌になり、無い物ねだりとなるのだろう。つまり正しい休暇を取れば、平日に何も起きないこと、朝から天気が良いことにも、幸せを感じられるのだ。例えば、次の休暇にどこに行って何をするか、それを精査して詳細に計画を立てることさえ、日常の喜びになるし励みにもなる。だからこそ大人にも夏休みがあるのだ。子供の頃、全身全霊で夏の非日常を生きた日々を思い出し、あの高揚感をなぞれれば、きっと日常との心のバランスが取れるはず。難しいけれどやってみたい。
齋藤 薫 さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト

さいとう・かおる 女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイスト。多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。最新刊『“一生美人”力セカンドステージ──63の気づき』(朝日新聞出版)ほか著書多数。
