齋藤薫の美しい歳の重ね方
親しき仲にこそ使える「魔法の言葉」があった!
「あんたは何頼んでも……」と、まさに頼んだことを何もやらない夫に、呆(あき)れ顔の妻がこういうと、「○○は買うてあるで」と、夫はニヤリとしたり顔。すると妻は「そういうとこ好きよ」。このお漬物のCM、見たことはあるだろうか? 夫婦の会話の"あるある"、でも妻による最後の返しの一言が、何とも気が利いていて、ほのぼのする。
夫婦間でなくても、親子であれ、兄弟姉妹であれ、こういう一言でお互いふんわり幸せになるってことがあるのだと、見るたびに嬉(うれ)しくなる作品だ。さらに言うなら、"親しき仲"にこそ使える「魔法の言葉」のヒントが詰まっていると気づかされた。例えば同じように、他は不満だらけでも、「そういうとこ、エライ」と1カ所褒(ほ)めることで、相手も救われ、自分自身も癒やされる。逆に言うなら、「そういうとこは、ダメだよね」と、ダメ出しをする時も、あえて「そこは」と限定してあげることで反発は少なく、効果は大。褒められるにしてもケナされるにしても、自分のことを全て分かってくれているという信頼と納得が生まれ、不思議に愛情が伝わってくる。「そういうとこは」という限定は、まさに魔法の一言なのである。
ちなみに親しい友人や長く共に仕事をしている部下や同僚なら、十分に通じる魔法。やはり信頼と納得が生まれ、心が通じ合う。さらには悩みや相談事を聞く時も、「それ、わかる」と言ってあげるだけで、相手が明らかに安堵したり気が済んだりしてしまうのもまた不思議。むやみやたらに連発するのは逆効果だが、人と人の関係において、全部わかった上で指差してあげる「そこ」や「それ」には、ある種の言霊(ことだま)が宿るのだろう。何だか心に響いてくるのだ。
齋藤 薫 さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト

さいとう・かおる 女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイスト。多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。最新刊『“一生美人”力セカンドステージ──63の気づき』(朝日新聞出版)ほか著書多数。
