コウケンテツの“食は人なり 出会いなり”
泣きたくなる日は粕汁を
鮭の粕汁
中学3年の終わりにテニスを始めたコウケンテツ少年は、ラケットを持ったその瞬間から本気でプロテニスプレーヤーを目指そうと決意した。
部活では到底間に合わないと考えた当時の私は、地元大阪の隣町、神戸にあるジュニア強化チームがある有名なテニスクラブに入会した。チームメイトどころか小学生にすら勝てなかったど素人の私だったが、情熱だけは人の10倍!
そんな私の初公式大会の日がやってきた。場所は赤穂市。あの赤穂浪士の赤穂か!決戦の地にふさわしいではないか。勝って浅野内匠頭の仇を……ではなく、華々しいデビューを飾るとするか。ふふふ。しかし淡い期待は裏切られるというのが世の常で。結果は1ゲームも取れずまさかの惨敗。
私のあまりの落ち込みように、気の良いチームメイトのMが言った。
「大阪は遠いし、今日はうちに泊まっていけよ。オレのばあちゃんの料理めちゃうまいぞ」と。
茫然自失状態の私は言われるがままに彼の家へ。そこで待っていたのはファミリーの歓待と、おばあちゃんの粕汁。
生まれてはじめて食べる酒粕の心地よい香りに、体と心が芯まで温まる濃厚な旨味汁。じ〜ん……。ひと口食べるごとに全てが癒やされていくような不思議な感覚に。ごちそうさまをする頃にはすっかり元気印の自分に戻っていた。おばあちゃんは、「悪いことの後は良いことがきっと来るよ。でもその逆もある。それが人生。また辛いことがあったら食べにおいで」と名言までいただく。おばあちゃん、M、ご家族のみなさま、心から感謝っす。
鮭の粕汁
<材料>(2人分)
- 酒粕…100g
- 甘塩鮭…2切れ
- 大根… 80g
- にんじん…60g
- ごぼう…1/4本
- コンニャク…1/3本
- 昆布水…4カップ(4カップの水に昆布4~5cmを浸したもの)
- 万能ねぎ(小口切り)…適宜
- 味噌…大さじ3〜4
<作り方>
- ボールに酒粕、昆布水1/2カップほど入れて混ぜ、ペーストにしておく。
- 大根、にんじん、ごぼうは各々皮をむいて小さめの乱切りにする。コンニャクは手でちぎる。甘塩鮭は一口大に切る。
- 2の野菜とコンニャクを熱湯で軽く下茹でして取り出し、鮭は熱湯にさっとくぐらせる。
- 鍋に残りの昆布水、3の野菜とコンニャクを入れてひと煮たちさせる。昆布を取り出し、野菜が柔らかくなるまで弱めの中火で7〜8分ほど煮る。
- 2の鮭を4に加え、1の酒粕、味噌を溶き入れてひと煮たちさせたら、さらに10分ほど弱火に煮る。器に盛って万能ねぎを散らす。
(料理:コウケンテツ/撮影:在本彌生)

コウケンテツ
大阪府出身。テレビ、雑誌、講演会など多方面で活躍中。3児の父でもあり、親子の食育、男性の家事・育児参加、食を通してのコミュニケーションを広げる活動に尽力。
