Recipe
2020.10.19

コウケンテツの“食は人なり 出会いなり”
極寒の湖の救世主

塩と、“隠し味噌”で調味する、極旨のしじみ汁。

青森は五所川原市の十三湖が今熱い。なぜなら、全国の美食家たちを唸(うな)らせる「寒しじみ」があるからだ。

若きしじみ漁師の松崎さんは言う。「このしじみのおかげでずっと地元で生活できる」と。

昔の漁師さんは、4月から10月までの暖かい時期に漁をして、冬は出稼ぎに行かれたそうだ。ベテラン漁師の上野さんは、そんな両親の苦労を見て育ち、早くから寒しじみ漁に力を注いできた。「一年中漁をして食っていける。それが幸せさ」と語る。

春にとったしじみを蓄養に放ち、さらに育てる。これで栄養と旨(うま)みをたっぷり含み、あさり並みの大きさに育つ。値段も通常の倍! だからこそ、しじみ漁だけで生活が成り立つ。

だからといって重労働であることに変わりはない。じょれんという重さ10キロ以上の道具を、カラダ全体を使って絶えず動かしながらしじみをとる。収穫したしじみは、じょれんごと担ぎ上げ、小さなボートに落とし入れる。これが重いのなんのって!

この日は気温マイナス1度。時間を追うごとに体力を奪われ、手足の感覚はなくなる。しかし「全然暖かい」(松崎さん)のだそう。湖が凍る日には、チェーンソーで氷を切り開き、漁をするのだそう……。想像を絶するな。

作業後、小さな小屋でこの寒しじみの汁をいただいた。鍋にどっさりと寒しじみを放り込み、水を注ぐ。煮立ったらアクをとり、塩とほんの少しだけの“隠し味噌(みそ)”で調理。たったそれだけ。そしてそのたった一杯の汁で、天国に誘ってくれるほどの圧倒的な癒やし力。豊かな湖の恩恵と人の叡知(えいち)が生んだ、究極の寒しじみ。まさに救世主です。

しじみ汁

材料

  • しじみ(砂抜き済みのもの)…小鍋にたっぷり(分量は好みで決めてください)
  • 塩…少々
  • 味噌…大さじ1ほど

作り方

  1. しじみはしっかり洗い、鍋に入れる。かぶるくらいの水を入れてひと煮立ちさせる。
  2. 上に浮いたアクをしっかり取り、隠し味の味噌を溶き入れ、塩を入れて味を調える。

※冷凍のしじみの場合は、水からではなく、まず湯を沸かし、そこにしじみを加えて火を通します。

(撮影:在本彌生/料理・文:コウケンテツ)

コウケンテツ さん

コウ・ケンテツ 3児の父親として子育て、食育にも尽力。You TubeでKoh Kentetsu Kitchen(料理研究家コウケンテツ公式チャンネル)を開設中。