コウケンテツの“食は人なり 出会いなり”
曇りなき瞳が見据える未来は?
牛赤身のローストビーフは体にも優しい。おいしく仕上げるコツは余熱にあり。
新年を迎えた1月のはじめ。牛もも肉で、長男が大好きなローストビーフを焼いた。クリスマス前からお正月までの間、大量の牛ももブロック肉がお肉屋さんで販売されるようになったのはいつからだろう。
こんがりとディープブラウンに焼き上げたあと、肉汁を落ち着かせるためにしっかりと休ませて、包丁をす~っと入れてみる。その美しいピンクロゼ色の断面をうっとりと眺(なが)めてから、静かに口に運ぶ。かめばかむほど肉の繊維の奥から溢(あふ)れ出てくれる旨(うま)み。赤身のおいしさを味わうのはやっぱりローストビーフだよなぁ、とひとりごちていると、あるヤングな畜産農家さんのことを思い出した。
松本拓也さんは高知県の室戸で子牛を育てる繁殖農家さん。牧場生活の憧れと、幻の和牛と言われる「土佐あかうし」にほれ込み、脱サラ。いろんな方の支援も受けて新規就農したという。
「今現状にある基準ではなく、あかうしの、赤身の良さを評価できる格付けを作っていきたい」。あかうしにそっくりな(笑)曇りのない澄んだ瞳で熱く語る松本さん。
「まだまだ生活も大変だけど、毎日が楽しくてしんどいとかつらいとか全く思わないです」 先の見えないコロナ禍の中、こんな風に夢を抱き、閉塞(へいそく)感を打ち破るように新しい道を切り開く若者がいる。そして今、日本には彼のような尊敬すべき熱きヤングたちがゴロゴロいるんだ。
どうか情熱と才能を持った彼らに、光り輝く未来が待っていますように。
ローストビーフ
材料(1回に作りやすい分量)
- 牛ももかたまり肉(厚さ4cmほど)…400gほど
- 塩…小さじ2/3
- 粒マスタード、塩、粗びきこしょう…各適宜
- クレソン…適量
[ソース]
- 赤ワイン…大さじ2
- バルサミコ酢…大さじ3
- はちみつ…小さじ1
- しょうゆ…少々
作り方
- 牛ももかたまり肉は2等分に切り、常温にしばらくおいてから塩、粗びきこしょうを全体にすり込む。
- 1を両面焼きグリルで10分ほど焼いたら、アルミホイルで2重に包む。火を消したグリルにのせて、余熱で20~30分ほどおく
- 小さめのフライパンに赤ワインを加えて煮立て、アルミホイルに出た肉汁と残りのソースの材料を加えて中弱火でとろりとするまで数分煮詰める。
- 2を薄切りにして、クレソンと、3のソース、粒マスタードを添える。
(撮影:在本彌生/料理・文:コウケンテツ)
コウケンテツ さん

コウ・ケンテツ 3児の父親として子育て、食育にも尽力。You TubeでKoh Kentetsu Kitchen(料理研究家コウケンテツ公式チャンネル)を開設中。「ボンマルシェ」の連載“アジアの台所から”(2016年4月~2019年3月)に大幅加筆収録した新刊、初旅エッセイ『アジアの台所に立つとすべてがゆるされる気がした』他著書多数。
