コウケンテツの“食は人なり 出会いなり”
星と森とアスパラガス
みずみずしいグリーンアスパラの風味を生かして、シンプルにソテー。アンチョビの塩気がよく合う。
空に煌(きら)めく星々の圧倒的な美しさに魅せられ、人生を変えた方がいる。
佐賀県は太良町。丘を登り、こんもりと木々が生い茂る森の中を抜けると、噂(うわさ)のハウスがあった。中に入るとさらにグリーンアスパラの森がわんさと生い茂る。スラリとしたビジュアルから、すでにただ者ではない感を漂わせる。
「そのまま食べてみてください」
とおっしゃる安東浩太郎さんのお言葉に甘えて、アスパラをポキリと折って、かぶりつく。
「なんじゃこりゃあっ!」
味わったことのないシャキシャキ食感からの、上品な甘みとほのかな青みが抜群においしい、天然のアスパラジュースが溢(あふ)れ出す。えっ! これアスパラなの!? みずみずしいとはこういうことなのかと、ただただ感動。これが“森のアスパラ”だ。
大阪で暮らしていた安東さんファミリー。太良町に帰省したある日のこと。草むらに寝転んで夜空を見上げると、見たこともないような満天の星。視線を下げると、月夜に美しく照らされた有明海が一望できる。
「ここに住もう。今すぐ」
そこから何かに突き動かされるように、まっしぐらにわが道を進んだ安東さんファミリー。
脱サラして移住。いろんな方のご協力のもと、一から農業の勉強をし、急勾配のみかん畑をなんとアスパラ畑に変えた。今までの常識を覆(くつがえ)す試みを次々と生み出す“笑顔の革命児”。
人に言えないご苦労も多いに違いない。でも安東さんは常に笑顔で未来を見据える。“今”を子どもたちが安心できる未来へ紡ぎたい。そのための努力は惜しまない。
ご夫婦が作業に勤(いそ)しむ中、お子さんが森の中を元気に走り回る……。何かグッとこみ上げてくるものがありました。ありがとう。
アンチョビ オリーブ アスパラ
材料(2人分)
- グリーンアスパラ…8本
- アンチョビ…1本
- オリーブオイル…大さじ3
- 塩、粗挽き黒こしょう…各適宜
作り方
- グリーンアスパラは根本の硬い部分の皮をピーラーでむく。
- フライパンにオリーブオイルを熱し、1、刻んだアンチョビを加え、軽く転がすようにして焼く。塩、粗挽き黒こしょうをして、器に盛る。
(料理・文:コウケンテツ/撮影:在本彌生)
コウケンテツ さん

コウ・ケンテツ 1974年、大阪生まれ。料理研究家。世界30カ国以上を旅して料理を学んだ経験を持つ。3児の父として親子の食育活動に奮闘中。『アジアの台所に立つとすべてがゆるされる気がした』他著書多数。料理家ユーチューバーとしても活躍中。
