Recipe
2021.09.15

コウケンテツの“食は人なり 出会いなり”
城壁の街で食べたびしょびしょのパン

ファロの旧市街は城壁が印象的。レモンをキュッといわしにしぼりかけ、パンを皿代わりにしていわしだけ食べる。同じレシピであじもおすすめ! 魚の旨みがしみたパンは最後に。ポルトガルの流儀、たまにはどうですか?

ポルトガル南部、最大の都市のひとつファロには、夏の終わりに毎年開催される「フェスティバルF」という大音楽祭がある。至るところがステージになり、ポルトガル音楽、ショー、ミュージカルなどが催され、街をあげて音楽やさまざまな文化を祝福するお祭りである。

私はというと、音楽はそっちのけ! 屋台にて、目の前に山積みにされたいわしと格闘していた。すると、相席したヤングなカップルが「最高の食べ方を教えてやろうか?」と粋な提案を。

「俺たちはそうだな……いわしを軽く1人10尾は食べるんだ。まぁ、見てみな!」

お皿の裏に平らなパンをのせ、おもむろにいわしを1尾パンにのせた。器用な手つきで皮をはがし(現地の皆さん、魚の皮に対する愛がゼロなんだな)、パクパクと身を綺麗(きれい)に平らげる。同じ作業を10回繰り返し、彼はオリーブオイルやいわしの旨(うま)み汁でびしょびしょになったパンを得意げに指さす。「このぬれたパンを最後に食べるのが最高なんだよ!」彼はまるで何かの儀式のように厳かにパンを口に運び、十字をきって天を仰ぐ。

大音量の低音が、異国情緒あふれる石畳を突き上げるようにズンズンと地響きを立てる。真夏の夜のむんむんとした熱気の中、私はいわしをつまみ、冷えたヴィーニョヴェルデを水のようにごくごくと飲み干す。そして最後に〆(しめ)のパンを。

全ての旨みと、その場の高揚した空気感まで吸ったのではないかと思わせる、びしょびしょパンのおいしさ。

あぁ〜、これだ! これこそが自由だ! 二度と忘れることのできない衝撃的なぬれたパンとの出会い。Obrigado!!

いわしとあじとびしょびしょパン

材料(2~3人分)

  • いわし、あじ…各3尾ずつ
  • 塩、粗挽き黒胡椒…各適宜
  • オリーブオイル…適宜
  • ミックスリーフ…適宜
  • レモン(くし形切り)…2切れ
  • 好みのパン(バゲットなど)…適宜

作り方

  1. いわしとあじはそれぞれ内臓を取り除き、水洗いする。あじは身の部分に切れ込みを入れ、水気をふく。いわしはしっかり水気をふき取る。いわし、あじそれぞれに塩、胡椒をする。
  2. フライパンに多めのオリーブオイルを熱し、1の両面をじっくりこんがりと焼く。
  3. 器に、ミックスリーフ、レモンと共に盛る。
  4. 輪切りのバゲットを皿がわりに、いわし、あじをのせ、好みでレモンをしぼりかけて食べる。最後にパンも食べる。

(料理・文:コウケンテツ/撮影:在本彌生)

コウケンテツ さん

コウ・ケンテツ 1974年、大阪生まれ。料理研究家。世界30カ国以上を旅して料理を学んだ経験を持つ。3児の父として親子の食育活動に奮闘中。『アジアの台所に立つとすべてがゆるされる気がした』他著書多数。料理家ユーチューバーとしても活躍中。