コウケンテツの“食は人なり 出会いなり”
温かい、あまりにも温かい朝ごはん
ミルクティーと揚げパンと揚げたま(卵)。体も心もあったまりますよ。
カトマンズの旧市街にある地元民の台所、アサン市場。ちょうどマーゲサンクランティ(ネパールで、冬の終わりに春の訪れを祝う1月の大きなお祭り)の2日前ということで、寒い中、早朝から多くの人で賑(にぎ)わいをみせていた。
市場の横丁に抜けると、ちょっとした屋台があり、そこからゴルマリという揚げパンの良い香りが。隣に居合わせたパリサさんというヤングな女性に現地のごはん事情を根掘り葉掘り聞いてみる。が、あまりの寒さにガタガタ震えている僕を見て、「家がすぐ近くなので、ご一緒します?」という女神のような提案をしてくださったパリサさん。多民族かつ多宗教国家であるネパールの皆さんは、他者に対して驚くほどに寛容だ。こんな見ず知らずのおじさんをも温かく受け入れてくれる。お言葉に甘えて、屋台の本当にすぐ近くのご自宅にお邪魔させていただくことになった。
私の身長の半分くらいの高さの小さなドアを、腰をかがめて抜けると、そこは真っ暗闇。その当時、カトマンズは毎日9時間ほどの計画停電を実施しており、手慣れたパリサさんは持ち歩いている携帯用の懐中電灯で足元を照らしてくれる。小さな階段を4階まで上がったところが、パリサさんとお母様が2人で暮らすご自宅だ。
お母様にご挨拶(あいさつ)すると、ちょうどチヤ(ネパール式ミルクティー)を作っていらした。こんな風に空気を含ませながら煮出すとおいしいのよ、とチヤをお玉ですくっては鍋に注ぐ、を繰り返す。
塩気の利いたゴルマリに、ほんのり甘いチヤが冷えきった体に染み渡る。さらにこんがりと揚げ焼きした目玉焼き付き。こんなに最高な、こんなに温かい朝ごはんってある?
ネパールの思い出の味
「チヤと揚げパンと揚げたま」
材料(2人分)
- 好みの紅茶のティーバッグ…2パック
- 牛乳、水…各2カップ
- 砂糖…大さじ1~(好みで増量を)
- 卵…2個
- サラダ油…適宜
- 好みの市販の揚げパン…お好きな数
作り方
- チヤ(ネパール式ミルクティー)を作る。牛乳、水を鍋で温め、紅茶のティーパックを加えて吹きこぼれないように弱めの火で沸々と煮る。途中、空気を含ませながら煮出す。お砂糖を加えて軽く煮る。
- フライパンにサラダ油を多めに熱し、卵を割り入れて揚げ焼きにする。
- 器に揚げパン、2の揚げたまを盛り、1のチヤとともにいただく。
(料理・文:コウケンテツ/撮影:在本彌生)
コウケンテツ さん

コウ・ケンテツ 1974年、大阪生まれ。料理研究家。世界30カ国以上を旅して料理を学んだ経験を持つ。3児の父として親子の食育活動に奮闘中。『アジアの台所に立つとすべてがゆるされる気がした』他著書多数。料理家ユーチューバーとしても活躍中。
