コウケンテツの“食は人なり 出会いなり”
なんてことのない日常こそ
フェルナンダさんのレシピをより簡単にアレンジ。ベーコンや魚介を加えて炊いてもおいしいよ。
ポルトガルはリスボンのあるお宅では、ママのフェルナンダさんがイワシをこんがりと揚げていた。なんともよい香りがキッチン中に漂う。パパのカルロスさんは帰宅するやいなや、愛する妻がいるキッチンに直行。ただいまのキスをすると、お茶目(ちゃめ)なカルロスさんはご本人には似つかわしくない、かわいいキャラクターのエプロンを身につけ、フェルナンダさんに冗談を言って笑わせながら、洗いもの&玉ねぎのみじん切りを始める。その手つきの鮮やかなこと。
その間に、几帳面(きちょうめん)な長男のロドリーゴくんは丁寧にテーブルセッティング。お皿にフォークとナイフを並べ、「今日は何を飲む?」と両親に聞く。その返答に合わせ、ワイングラスかビールグラスかをチョイスする。
しっかりもののお姉さんのタチアナちゃんは、このファミリー内で「クレイジーサラダ」と呼ばれている、レタスとトマトのサラダを作る。彼女のオリーブオイルベースの特製ドレッシングの配合がなぜかクレイジーだからだそうだ(笑)。
玉ねぎを炒め、トマトとお米を加えて煮ただけのシンプルなトマトのリゾットにイワシのフリット。そしてクレイジーサラダ。質素なディナーだけど、これで十分だとカルロスさんは言う。
「オレたちは仕事や学校で、毎日ストレスを抱えながら生きている。家族でごはんを食べながらみんなで話し合って、悩みを解決するんだ。家族と一緒においしい料理にワイン。それがあればノープロブレムだよ」と笑いとばす。
「でも私が作ったサラダが一番ね!」とタチアナちゃん。それを聞いて大笑いしながらも不覚にも涙がじわりと溢(あふ)れてしまった。こんな日常こそ、最も尊く美しい。決して奪われないよう大切に、大切に守りたい。
シンプルトマトリゾット
材料(1回に作りやすい分量)
- 米…2合
- トマト(小さめのもの)…3個
- 玉ねぎのみじん切り…1個分
- ニンニクのみじん切り…1片分
- ローリエ…1~2枚
- オリーブオイル…適宜
- 塩、粗挽き黒こしょう…適宜
- 好みのハーブ(香菜、パセリなど)…適宜
- 粉チーズ…適宜
作り方
- フライパンにオリーブオイル大さじ4ほどを熱し、玉ねぎ、ニンニクをじっくりと炒める。米を加えてさっと炒め、塩小さじ1を加えて混ぜる。
- 炊飯器に1を入れ、2合分の目盛りよりやや少なめの水を加える。ローリエ、ヘタをとったトマトを丸ごとのせて普通に炊く。
- 炊けたらさっと混ぜて塩で味を調え、器に盛る。刻んだハーブを添え、オリーブオイルを回しかけ、チーズ、粗挽き黒胡椒を散らす。
(料理・文:コウケンテツ/撮影:在本彌生)
コウケンテツ さん

コウ・ケンテツ 1974年、大阪生まれ。料理研究家。世界30カ国以上を旅して料理を学んだ経験を持つ。3児の父として親子の食育活動に奮闘中。『アジアの台所に立つとすべてがゆるされる気がした』他著書多数。料理家ユーチューバーとしても活躍中。
