コウケンテツの“食は人なり 出会いなり”
過去、未来、自由、変わらない味、そして……
ソーセージは皮あり、なし、フライドポテトあり、なしなど、いろいろ選択できる。ケチャップもお店によってこだわりがある。
ベルリンに到着後、僕はすぐに壁に向かった。旧西側、東側。双方の壁沿いを何度も何度も練り歩き、30年前のこの場所で起こったこと、そしてそれ以前の世界について想(おも)いを馳(は)せる。
気のせいだとは思うけれど、ザ・観光スポットになっている西側よりも、東側から見た、壁は、なんだか重い空気が漂っているように感じてしまう……。
小腹が空(す)いたので、ドイツの皆さんの国民食「カリーブルスト」の人気店へ。朝から晩までお客さんが絶えないと言われているが、その評判通り、中途半端な時間なのに列に並ばないと食べられない。しばらく待つと極太ソーセージに、たっぷりのスパイスと特製ケチャップがかかったそれが出てきた。
「うん! うまい!」のだが……。なぜこれほど人気なのかはさっぱり分からない。偶然隣に居合わせた、ハンチング帽が渋い初老の男性に話しかけてみる。
「壁が崩壊して、我々東ドイツの人間はまず何をしたと思う? ここのソーセージを大挙して食べにきたんだよ。あの瞬間は忘れないさ。これこそが自由と未来の味だと思ったね」
東ドイツ出身の彼は、壁崩壊前と後の激動のドイツをリアルに生きてきた。そんな人々にとって、伝統的なソーセージを斬新にアレンジした西側の「カリーブルスト」は、味を超えた自由の象徴のような存在だったのかもしれない。途端に、食べるそのひと口ひと口に重みが増すのを感じた。
「世の中はすっかり変わったさ。だけどここのソーセージの味と、人間の愚かさだけは変わらない。これからもね」
そう予見した彼は、今の現状をどう見ているだろうか?
カリーブルスト
材料(1~2人分)
- 好みのソーセージ…3本
<ソース>
- オリーブオイル、塩、こしょう…各適宜
- にんにく(みじん切り)…1/2片
- 玉ねぎ(みじん切り)…大さじ1
- ケチャップ…大さじ5
- 好みのオレンジジュース…大さじ3〜4
- カレー粉…小さじ1
- 好みで唐辛子…適宜
作り方
- ソースを作る。小さめのフライパンにオリーブオイルを熱し、にんにく、玉ねぎを炒める。<ソース>の残りの材料をすべて加えて煮詰める。塩、こしょう各少々(分量外)で味を調える。
- 別のフライパンにオリーブオイルを熱し、ソーセージをこんがりと炒める。取り出して食べやすい大きさに切り、器に盛る。カレー粉適宜(分量外)をふりかけ、1をたっぷりかける。
(料理・文:コウケンテツ/撮影:在本彌生)
コウケンテツ さん

コウ・ケンテツ 1974年、大阪生まれ。料理研究家。世界30カ国以上を旅して料理を学んだ経験を持つ。3児の父として親子の食育活動に奮闘中。『アジアの台所に立つとすべてがゆるされる気がした』他著書多数。料理家ユーチューバーとしても活躍中。
