Recipe
2023.01.30

コウケンテツの“名作ごはん劇場”
絵本の力と、うさぎのメンタリティー
ジョン・キラカ作/さくまゆみこ訳 絵本『ごちそうの木』(西村書店刊)から

コウさんが、こころを動かされた映画や舞台、アート、文学を、“食”の視点で描く随筆。
「独断、妄想的タラレバ視点。ご一読を!」(コウさん)

ストローはガラス製です~。ミックスジュースは、やっぱりフレッシュフルーツよりも缶詰だよね♪

相変わらず、絵本から多くのことを学んでいます。

日照りのせいで食べ物がない大地に立つ、実がたわわに実った不思議な木。それを誰も取ることができない。そこで小さなうさぎが、賢い亀に教えを請うことを提案し、その役目を志願するが、
“いい考えだね。でも、お前は小さすぎる……”
と一蹴される。代わりに大きな動物が亀の家まで出向き、木の名前を唱えればいいと教えてもらうが、その木の名前がなかなかの曲者で……。

僕自身、このタンザニアの物語に特別な思い入れがありまして……一番末っ子だった僕は大人に囲まれて育った。そんな環境では、家族や親戚の集まりなどで、ちょっとした話し合いや議論が起こった際、年端もいかない子どもの意見などはもちろん論外。

「小さすぎる」と言った理由で、「口を挟むな」、「どうせ〜できないに決まっている」と決めつけられたり、馬鹿にされたり、そもそも相手にすらしてもらえないことは、当時の僕を心底苛立(いらだ)たせた。
子どもにだって、自分の意見や考えを堂々と主張する権利があるんだ。

同じ境遇同士のよしみで(笑)、読み始めてすぐに、どっぷりとうさぎに感情移入してしまう。

しかし、ここで特筆すべきは、そのうさぎのメンタリティー。小さいからと自分を揶揄(やゆ)されても、僕のように憤ることもなく、腐ることもなく、自分を憐(あわ)れむこともなく、静かに現状を受け入れ、静かに時を待ち、穏やかに冷静にことを運ぶ。

そしてついに最後は……。一人の弱者(だと決めつけられていた)が仲間たちを救う!! のか!?

印象に残る、力強くパキッとした鮮やかな色彩。個性的な動物たちのキャラクター。ずっと頭に残ってしまう、謎の呪文のような言葉。子どもにも伝わりやすく、わかりやすいポジティブなメッセージ&ストーリー。

ここには絵本に必要不可欠な要素と、絵本そのものが持つ力がすべて詰まっている。

あぁ……。もしこの名作を当時の自分が読んだなら。きっとうさぎから多くのことを学んだに違いない……。きっと違った自分になれたに違いないのだ。

見た目やサイズなど関係ない。信念を持って行動すれば、自ら道を切り拓(ひら)くことができるんだ。社会にはびこるルッキズムや、意味のない常識なんて打ち壊すことができるんだ! という強烈なメッセージに心が震えたに違いない。

そう、絵本はひとりの人生を変えてしまうくらいの力を秘めている。

実際、我が子たちも、みんなで木の名前を何回も言い合い、「見た目で判断したら絶対ダメだよね!」、「うさぎみたいに強くなりたい!」と、誰に指導される訳でもなく、作者のキラカさんのメッセージを自分自身でしっかりと受け取ってくれていました。

あと、賢者感も長老感も皆無な、気の優しい賢い亀さんの、街を仕切るちょっとしたボス感が、個人的にはたまらなく大好きです。

作者のジョン・キラカさん、訳者のさくまゆみこさんのあとがきもとても興味深い内容です。そちらもぜひご一読いただければ、と思います。

今回のレシピは、『ごちそうの木』に実った美味しいフルーツを使った特製ミックスジュース。実は僕が小学生の時に3分間スピーチで披露したレシピがベースになっております。大阪出身なので、喫茶店で飲むミックスジュースがたまらなく好きでした。

パイン缶詰を加えるとトロピカルなお味に。桃缶詰を加えるとなんだかリッチ感がアップ。甘味が足りなければ缶汁を少し足してください。
僕はバナナとみかん缶詰だけが好きです。ヨーグルトを足すと爽やかさが増します。
ぜひ、木の名前を唱えながら作ってみてくださいね。

2023年は卯年。今年はうさぎのポジティブなメンタリティーと、ミックスジュースで乗り切っていきましょう!

ごちそうの木のミックスジュース

材料(作りやすい分量)

  • バナナ…1本
  • みかん(缶詰の実だけ)…200gほど
  • 牛乳…200mℓほど
  • 好みでみかん缶詰の缶汁、ヨーグルトなど…各適宜

作り方

  1. 全ての材料をミキサーで撹拌する。

※好みで他のフルーツ缶詰も加えてみてください。甘味が足りなければ、缶汁を少し足してみてください。ヨーグルトを加えるとさっぱり感がプラスされます。夏場なら氷を加えてみてください。

(文・写真= コウケンテツ)

コウケンテツ さん

コウ・ケンテツ 1974年、大阪生まれ。料理研究家。世界30カ国以上を旅して料理を学んだ経験を持つ。3児の父として親子の食育活動に奮闘中。『アジアの台所に立つとすべてがゆるされる気がした』他著書多数。料理家ユーチューバーとしても活躍中。