Recipe
2023.05.25

コウケンテツの“名作ごはん劇場”
新しいモノも古いモノも
韓国の絵本『チェクポ おばあちゃんがくれた たいせつなつつみ』
(福音館書店 文:イ・チュニ/絵:キム・ドンソン/訳:おおたけきよみ)より

コウさんが、こころを動かされた映画や舞台、アート、文学を、“食”の視点で描く随筆。
「独断、妄想的タラレバ視点。ご一読を!」(コウさん)

サッカーの勝負に勝っても、スカスカの中身。蓋をした弁当箱を振ってピビンパ(混ぜご飯)にして食べていたそうです。

あまりの切なさで、胸がぎゅ〜っと締めつけられそうになっても、最後はじわ〜っとあたたかく包み込んでくれる。そして、いろんな人を思い出し、感謝したくなる。

そんな素敵な絵本をご紹介します。

オギは多感な時期の小学生の女の子。友達のダヒの、ピカピカに輝く新品の真っ赤な鞄(かばん)が羨(うらや)ましい。それに比べ、鞄なんて高価なものは、自分には望むべくもない。

ごはんとキムチだけの、あまりに質素な弁当と教科書を包む、つぎはぎだらけの“チェクポ”(韓国の伝統的な布、風呂敷)が鞄代わり。

惨めな気持ちで日々を過ごすオギ。思わず母に辛く当たってしまう。しかもそんなオギのチェクポを、よりによってダヒにからかわれ……。あぁ〜、なんてやるせない……。

舞台は1970年代、韓国の農村部。誰もが貧しかったけど、いつの時代も格差は当たり前に存在する。
でもオギは思い出す。このチェクポにはおばあちゃんの優しい想いが包まれていたことを。

富める者、貧しい者。新しい物、古い物。
それぞれ違いはあるけれど、それぞれ違った良さがある。新しい鞄も良し、つぎはぎだらけのチェクポも良し!

どんな境遇に生まれても、悩みもあれば、辛いこともある。大事なのはそれらを共に分かち合う心。
そんな、幸せを呼び込んでくれるような視点を、そっと包み込むように教えてくれる、イ・チュニさんの名作です。

キム・ドンソンさんの、柔らかな色使いで描く、農村部の美しい田園風景に癒やされますし、最後のページでは“ポジャギ”や“チェクポ”についても詳しく説明してくれています。
ぜひ最後まで楽しん読んでくださいね。

今回のレシピは僕の父の学生時代のお弁当。
貧しさ故、空の弁当箱だけを持参し、級友とのサッカーの勝負でおかずやごはんを賭けて、空腹を満たしていたそうです。この作品を読んで思い出しました。

質素なピビンパ弁当

材料(弁当箱一つ分)

  • ごはん…適量
  • ほうれん草のナムル、豆もやしのナムル、キムチ…各少しずつ
  • コチュジャン(好みで)…適宜

作り方

  1. 全てを弁当箱に入れて蓋をし、激しくシェイクする。

★ほうれん草のナムルと豆もやしのナムルの作り方は以下参照。

ほうれん草のナムル

材料(1回に作りやすい分量)

  • ほうれん草…1束
  • しょうゆ、ごま油…各小さじ1〜
  • 白いりごま…大さじ1
  • 塩…適宜

作り方

  1. ほうれん草は根元に切り込みを入れ、しっかり水洗いする。軽く水にさらしておく。
  2. 塩適宜を加えた熱湯で、1を根元に近い茎の方からゆでていく。1分ほどゆでたら冷水に取り、手で水気をしぼって4〜5cmの長さに切る。
  3. ボウルにしょうゆ、ごま油(味をみながら少しずつ量を増やしてください)、白いりごまを入れて、混ぜる。2を加えて和える。

豆もやしのナムル

材料(1回に作りやすい分量)

  • 豆もやし…1袋
  • 塩、ごま油…適宜
  • 白いりごま…大さじ1

作り方

  1. 豆もやしはさっと水で洗う(ヒゲ根が気になる方は取ってください)。
  2. 鍋に1を入れ、水を豆もやしのかさの1/3量ほど加えれひにかける。ひと煮したら、蓋をし、火を弱めて4〜5分ほど蒸し煮にする。
  3. 2をざるにあげて水気をきり、塩をふり混ぜる。粗熱が取れたらごま油、白いりごまを加えて混ぜる。

(文・写真・料理=コウケンテツ)

コウケンテツ さん

コウ・ケンテツ 1974年、大阪生まれ。料理研究家。世界30カ国以上を旅して料理を学んだ経験を持つ。3児の父として親子の食育活動に奮闘中。『アジアの台所に立つとすべてがゆるされる気がした』他著書多数。料理家ユーチューバーとしても活躍中。