「なんとなく不調」なあなたへ…
東洋医学で考える、5つの体質と対処法とは

新緑が目に鮮やかな5月。なのにだるかったり、ささいなことでイラッとしたりクヨクヨしたり……これって五月病?さらに、最近は六月病って言葉も聞くし…… この時期の体の不調のことを東洋医学の見地から探ってみました。
(イラスト:加藤木麻莉/取材・文:園田郁子)
教えて下さったのは 丁 宗鐡 先生

てい・むねてつ
医学博士。日本薬科大学学長。百済診療所院長。漢方による難病治療を専門分野とする第一人者
Point 1
春から初夏へ。今時分の体の不安定さはどうして?
東洋医学には自然界に存在する五つの要素を、木・火・土・金・水に分類し、相互に影響を与えながらバランスをとる五行説という理論があります。5月は水の季節の冬を越え、水に育てられた木の枝葉が茂る春。そして来月は「長夏」という季節がやってきます。人間も動物の仲間。この五つの季節と共生する気持ちになると、もっと自分の心と体とうまくつきあえるようになるのかもしれません。
というわけで春。動植物が生き生きとするように、人間も寒さから解放されて背伸びがしたくなります。しかし、ウキウキ気分だけでいられるなら問題ないのですが、冬の間は静かに蓄えていたホルモンの働きが、春になると急に活発になるために、気持ちが不安定になって「楽しみたいのに何だか力が入らない、体が追いつかない」といった状態になることも。これは東洋医学でいう健康の状態、「気・血・水」の「気」がスムーズに流れていないことで起こります。「気」とは、元気や気力など、目に見えないエネルギーのこと。自律神経や食欲や消化吸収を司(つかさど)ります。人間の体内の気も、春は上半身に溜まりがちになって、それも心と体のバランスの不安定さにつながっています。「血」とは、もちろん血液を、「水」とは血液以外のリンパ液や汗などの体液のことで、この三つのバランスが整っていることが健康な状態です。また「気・血・水」を上手に巡らせるために、「肝・心・脾・肺・腎」という五臓が働いていると考えられています。
健康の状態を「気・血・水」の巡りで知る方法があり、体質を右のように六つに分類して考えます。気が逆流している「気逆(きぎゃく)」、気が滞っている「気滞(きたい)」、エネルギー不足の「気虚(ききょ)」、血の巡りが悪い「瘀血(おけつ)」、血が不足している「血虚(けっきょ)」、水分バランスが崩れた「水毒(すいどく)」。自分がどんな傾向があるのかを知っておくと、対処しやすくなります。複合型の場合もあるので、一つに決めつけないことも大切。そして、今時分は空気が乾燥して湿度が低いため、強い紫外線が地面まで届きやすく、たくさん浴びると疲労を感じたり、肌トラブルの原因にもなるので、これもイライラやクヨクヨの一因です。
心身のバランスを測るもう一つの物差しとして、「実証(じっしょう)・虚証(きょしょう)」があります。体質や体力の有無、抵抗力の強弱をみる方法で、「実証」は骨が丈夫で体格がっちり、積極的で徹夜もOKな頑張りすぎるタイプ。「虚証」はやせ型か水太りで胃弱、寒さに弱く消極的なタイプ。強すぎても弱すぎても、どちらかに傾いた未病の状態で、バランスのとれたいい状態は「中庸」といいます。
〈気・血・水〉あなたはどのタイプ?
『本格漢方2017』(朝日新聞出版)より
気逆タイプ

のぼせや動悸(どうき)、頭痛、めまいなど、上半身に不快な症状があり、足が冷える。
〈このタイプの養生〉
ぬるめのお風呂や腹式呼吸でリラックス。足元を温める。
気滞(気うつ)タイプ

のどや胸、お腹(なか)や頭に膨満感やつかえ感があり、気持ちがふさぎ、イライラや不眠がある。
〈このタイプの養生〉
香の強いハーブや柑橘類を積極的に食事に取り入れる。
気虚タイプ

ストレス、過労、睡眠不足が続いている。食が細くなり、お腹を下しやすい。
〈このタイプの養生〉
消化がよく温かいものを食べ、睡眠を十分に取る。
瘀血タイプ

顔色がくすみ、クマやシミができる。女性特有の病気や不調がある。
〈このタイプの養生〉
運動や入浴で血行を促し、食物繊維を多く摂る。冷たい食べものは避ける。
血虚タイプ

髪や肌、爪の艶(つや)やハリがない。睡眠不足や無理なダイエットをしている。
〈このタイプの養生〉
夜更かし厳禁。目の酷使も避ける。黒い食材を積極的に摂る。
水毒タイプ

お腹からポチャポチャ音がする。喉(のど)が渇きやすい。脱水状態にある。
〈このタイプの養生〉
筋肉を鍛えて水分を溜めにくい体を作る。体を温め、利尿作用のある食材を利用する。
Point 2
今は「肝」の働きを整え、養うとき
気・血・水には五臓が対応し、五行説の木=肝・火=心・土=脾・金=肺・水=腎と関係が深いと考えられています。陽気に誘われて「気」が高ぶり過ぎると、のぼせたり、頭痛がしたり、ふらついたりすることも。これは、「肝」の働きが乱れる春の特徴です。感情の度合いが過ぎると五臓にダメージを与えることもあるので、コントロールすることが大切です。
春は「肝」の働きを養うことで、自律神経や情緒をコントロールし、血を蓄え、血流を調節し、きれいな血を体のすみずみまで行き渡らせることができます。また「肝」は目や筋肉、胆のう、胃腸の働きにも関わると考えられるので、「肝」の働きが鈍ると目や筋肉に不調があらわれて疲れやすく、イライラの原因になります。
もうすぐ湿度が上昇する「長夏」。湿気が多くなって体内の「水」が停滞しやすくなると、むくんだり、暑さで体が火照ってのぼせたりします。この、真夏とは異なる暑さの「長夏」は、食欲不振や胃の不快感が起こりやすい時期とされ、湿を嫌う「脾」の働きを助け、食べ物の栄養と「気」を体に巡らせると、不調を防ぐのに役立ちます。

Point 3
無理をしないでコツコツと毎日の食事から
この時期特有の疲れやだるさで「頑張れない、無理がきかない」と思ったら、焦らないで自分らしくコツコツと、を心掛けて。そうはいっても子どものこと、仕事のことなど、自由にならないことは多々ありますが、それでも、出来るだけ自分のペースを心がけて、規則正しい生活を意識してみましょう。早めに起きて一日の始まりに少しだけ多めに時間をとってみるだけでも違います。また、自律神経の交感神経(活動時)と副交感神経(休息時)のバランスをよくするように、生活にメリハリをつけることも「気」の巡りを助けるいい方法。軽く汗をかくような散歩を習慣化してみる、お茶で香りを楽しむのもいいかもしれません。
体の中から温める食事を心がけるのも効果的。「肝」の働きを保つ酸味のある果物や、あさりやレバー。気の巡りを良くする香味野菜のセロリやミントやしそ、そらまめなどを料理に取り入れてみて。「脾」の働きと消化を助けるのは適度な甘みがあるものや、気・血・水の流れを良くするトマトやとうもろこしが有効。体の余分な水分や熱をとる豆腐やナスもおすすめです。
