Life Style
2018.09.15

ネットでレシピを即チェック、もいいけれど……私たちが「料理本」から学ぶこと

白い大理石のブックエンド(2個セット)、洋書、ナプキン、ミル、グラス、グラスの中のiceスクープ、ミソマドラー/
すべてリビング・モティーフ TEL:03-3587-2784

今年も「料理レシピ本大賞」が発表されたが、料理研究家の土井善晴さんは「レシピには、考え方から人格まで出てしまう」(平松洋子著/文藝春秋刊『食べる私』より)と語る。

食生活をより豊かに彩るヒントがたくさん詰まっている「料理本」。料理本にまつわるエピソードや手放せない一書をおうかがいした。

(撮影:川上輝明/スタイリスト:茂木雅代/イラスト:ソリマチアキラ/取材・文:林 純子、編集部)

興味津々! 2018年「料理レシピ本大賞」発表

今年で5回目になる、「料理レシピ本大賞」。ボンマルシェで連載中の飛田和緒さんも過去に大賞を受賞。「食は人を養い育て、豊かな心を育む。レシピがその肝になったら。そう思いながら日々作っています」(飛田さん)。今年の受賞作も必読!

Infomation

紀伊國屋書店新宿本店など全国の書店でも「料理レシピ本大賞」フェアを実施中!ぜひ店頭へ!

料理部門 大賞

『みそ汁はおかずです』
瀬尾 幸子 著 学研プラス/1,300円+税

和食の“きほんのき”のみそ汁は、作るのも簡単、時間もかからず、何を入れてもおいしく優れた1品だ。具だくさんにすれば立派なおかずになり、ご飯だけでなくパンにも合う懐の深さもある。みそ汁をこよなく愛する著者が、お馴染(なじ)みの食材を絶妙に組み合わせた絶品のみそ汁を紹介。「料理が苦手な人でも作れるように“見える化”。材料は使う分をそのまま掲載して、どのくらいの量をどう切ればいいのかが一目見ればわかります」(瀬尾さん)

お菓子部門 大賞

『へたおやつ小麦粉を使わない白崎茶会のはじめてレシピ』
白崎 裕子 著 マガジンハウス/1,400円+税

料理やお菓子作りが「へた」でも大丈夫!シリーズ15万部突破、予約の取れない人気教室《白崎茶会》の超入門レシピ集。小麦粉をはじめ、卵、バター、乳製品いっさいナシ。多少ほっといてもいいから、あわてることなく失敗知らず。驚くほどかんたんに、おいしいおやつが作れる!

料理部門 入賞

『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』
有元 葉子 著 SBクリエイティブ/1,500円+税

有元葉子さんはレシピを保存しない、見ない。今ある旬の食材で手早く作る。本書は、レシピを見ずに料理を作れるようになるために知っておきたいことを調理法別に紹介。計量も無し。冷蔵庫にあるもので、ちゃちゃっとおいしい料理を作るコツが満載!

料理部門 入賞

『シェフの家呑みおつまみ』
依田 隆 著 秀和システム/1,300円+税

人気リストランテ「イルマーレ」料理長による、身近な食材と2~3ステップの簡単な調理で作れる、お酒のおつまみレシピ集。チーズを焼いたり、和素材とサラミを合わせたり、シェフならではのアイデアが満載。うちに帰ってからパパッとできるのに、本格イタリアンのおいしさ!

料理部門 入賞

『お手軽食材で失敗知らず! やみつきバズレシピ』
リュウジ 著 扶桑社/1,100円+税

Twitterのフォロワー数は約25万人!(9月現在)。大人気料理家、リュウジ氏の待望の初レシピ本。「今日食べたいものが、家に帰ってすぐできる!」がコンセプト。“手軽な材料で!安く!手早く!簡単に!”作れる、激ウマのおかずとごはん129レシピを収録。Twitter未公開のレシピも多数紹介している。

料理部門 入賞

『ちゃんとおぼえたい和食』
𠮷田 麻子 著 秀和システム/1,300円+税

「予約が取れない料理教室」を主宰する著者が、「おいしいね」と家族からほめられる和食の作り方をやさしく解説したレシピ集。くり返し作りたくなる定番和食から、レパートリーが広がるアレンジ料理までを掲載。「だしのとり方」や「下ごしらえ」など、この一冊で家庭料理の基本が身に付く。

料理部門 入賞

『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』
有賀 薫 著 文響社/1,100円+税

1、2人分からすぐ作れる毎日レシピ。「できればちゃんと作りたい」。でも、料理以外にやりたいこともたくさん……毎日忙しく頑張る人の暮らしを応援するレシピ集。メインのおかずにもなるスープで「一汁一飯生活」を。ヘルシーだから夜遅く食べても罪悪感無し!

料理部門 エッセイ賞

『もうレシピ本はいらない人生を救う最強の食卓』
稲垣 えみ子 著 マガジンハウス/1,400円+税

作りおき不要、準備は10分!アフロえみ子の1食200円、驚きの食生活を大公開。玄米、味噌汁が中心の一汁一菜で、こんなに充実したごはんが作れるとは。旬の野菜を干したり漬けたりするだけで、バリエーションが無限に広がる。目からウロコの料理術、大満足の料理エッセイ。

こんなノミネート作品も!

『夫はホテルオークラ元総料理長、妻は料理家 ふたりのごはん』
根岸 規雄 石原 洋子 著 KADOKAWA/1,450円+税

食を極めた二人がたどりついたのはシンプルな料理。夫はホテルオークラ東京の第四代総料理長(2001年~2009年)。妻は料理研究家として活躍し、料理教室歴40年以上。食を極めたシニアのご夫妻が、ふだんの食生活を豊富な写真とレシピで綴(つづ)った、豊かな食ライフへの手引書。

だから、料理本が好き!

家族の記憶を紡ぐための箱

阿古 真理 さん(作家・生活史研究家)

以前、小著に「料理研究家を語ることは、時代を語ることである」と書きました。料理本は日本人の暮らしの変化を描き出す現代史でもあります。ただこれは私の研究者としての視点であり、一般の読者にとって料理本は、「家族の思い出」が詰まった箱として存在するのだと思います。お気に入りのレシピが決まれば繰り返し作り、カスタマイズした味付けを書き込むことができます。本についたシミが記憶となり、やがて息子や娘に手渡す人もいるのではないでしょうか。

あこ・まり
1968年兵庫県生まれ。食や暮らし、女性の生き方などをテーマに執筆。著書に『小林カツ代と栗原はるみ』(新潮社)、『昭和育ちのおいしい記憶』(筑摩書房)など。

「食」は文化であり科学です

森枝 幹 さん(シェフ)

僕は小さい頃から、父に多様性に富んだ食生活と世界中の食べ物や生活の話を聞かされて育ち、気づいたら料理人になっていました。今回紹介したい『モダニスト・キュイジーヌ』は、調理中の状態などを見た事の無いビジュアルで見せてくれますし、様々な調理の工程が科学的に事細かく記載されています。食は文化でありながら科学でもあって、どちらもの理解を深めていくのが、これからの料理人ではないのかなぁ。

もりえだ・かん
1986年東京生まれ。2014年にレストラン「Salmon & Trout」を開業。シェフを務めるかたわら、雑誌の発行や、店舗のプロデュースも手掛ける。父は食文化研究家の森枝卓士氏。

普遍性を大事にするデザイン

縄田 智子 さん(グラフィックデザイナー)

1980年に友人とデザイン事務所を立ち上げました。そこである企業の冊子『奥様手帖』のリニューアルを担当することに。横組みの文字や真俯瞰(ふかん)から撮影する写真など、当時としては実験的なことにトライしました。料理本は、レシピという実用のためだけでなく、ライフスタイルを映すものとして美しくありたいと考えたからです。今でも目標は、時代を超えるデザイン。料理という生活に根ざしたものを表現するとき、普遍性が大切だと思っています。

なわた・ともこ
1953年東京生まれ。デザイン事務所「レスパース」を若山嘉代子さんと主宰。実用書であった料理本に、美しくグラフィカルなデザインを導入したことで知られる。

古(いにしえ)の時空に飛ぶ料理秘伝集

川邊 りえこ さん(美術家・書道家)

食は人生の楽しみ。料理本も凝りだすとキリなく買い集めました。なかでも手元に置き、大切にしているのが古の食とことわりが学べる『原典現代語訳日本料理秘伝集成』です。室町時代から江戸時代に至る80余点の料理文献を分類した全19巻。トレンドやスタイリッシュなことが溢(あふ)れている今、基本に立ち返りたくなった時や、迷った時に古の時空に飛び、当時の習わしやしきたりに学ぶところは多く、読むたびにワクワク感が高まり続ける宝物です。

かわべ・りえこ
神奈川県生まれ。幼少より日本の伝統芸能全般を学ぶ。「日本の美の本質は総体にある」というコンセプトを元に、1995年に会員制倶楽部「日本雅藝倶楽部」を設立。

現代食文化の貴重な資料

平野 紗季子 さん(フードエッセイスト)

『進化するレストランNOMA(ノーマ)─日記、レシピ、スナップ写真』は、北欧にあるレストラン「ノーマ」の秘密を解き明かしていきます。たった一口からおいしいを超えて風景が立ち上がる料理。今、地球のどの場所にいてどんな季節の中にいるのか感じさせてくれる料理。それらの誕生と、その創造的かつ野心的なプロセスが克明に綴られた書は、食というものが“グルメ”を超えて、もはや“クリエイティブ産業”であることを教えてくれます。

ひらの・さきこ
1991年福岡県生まれ。小学生から食日記をつけ続ける生粋のごはん好き。学生時代に始めたブログが話題に。著書に『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)がある。