どんな壁も、だいたい笑って乗り越えられます(笑)
鈴木明子 さん(プロフィギュアスケーター)
選手の魅力や成長を引き出す振り付けを考えたい
「予想以上にいろんなことにチャレンジするチャンスを与えられていて、本当にありがたいと思っています」
黒い瞳を真っすぐ、そらさずに話す鈴木明子さん。2014年3月に22年間のフィギュア選手生活にピリオドを打ち、現在はプロフィギュアスケーターとして、さらに振付師や解説者としても幅広く活躍している。振付師デビューは、一昨年の本郷理華選手のショートプログラム「キダム」。昨シーズンの本郷選手のフリープログラム「アラビアのロレンス」も担当した。番組のコメンテーターとしても登場する。
「憧れていた振り付けの仕事も、やるとは思ってもいなかった解説の仕事も、どちらも難しいですね。最近はジュニアの選手の振り付けを頼まれることも多いので、選手の魅力や成長を引き出せる振り付けを考えたいといつも思っています。解説では見ている人が何を求めているかを意識しながら、演技の邪魔をしないように簡潔に、希望が持てる表現を心がけています。もっと語彙(ごい)力をつけようと研究中です」
背中を押しているのは「フィギュアを好きな人を増やしたい」「選手の頑張りが報われてほしい」という思いだ。そのフィギュアを始めたのは6歳の頃。小学校時代は、電車を乗り継ぎ往復3時間以上かけて、自宅の豊橋から名古屋のリンクへ毎日通った。摂食障害に陥った大学時代も、選手生活を諦めなかった。遅咲きだったが、2度のオリンピック出場を果たした。
「上を目指して自分を追い込む厳しい毎日でした。それでも続けられたのは、見ている人と滑っている人の集中力が一つになれた演技が終わった後の、会場がわっと沸くあの瞬間を味わいたかったから。どれほど練習が苦しくても、“やって来て良かった!”に変わるんですよ。あの経験があるからこそ、今、どんな壁にぶつかってもだいたい笑って乗り越えられるんだと思います(笑)」
得意料理はだし巻き卵
今年3月に入籍した。お相手は3年前、母親が経営する飲食店で18年ぶりに再会した小学校の同級生。「目的地を決めずに旅に出られるタイプ」で、「お互いに無理せず自然体でいられる」と話す。初めて車で旅行をした時、立ち寄るのを楽しみにしていたパン屋の店先の“長期休業”の知らせを見て、「こんなこともあるよね」と笑い合えたというから、どこか似てもいるのだろう。料理人のご両親直伝の煮魚や得意料理のだし巻き卵などのレシピを携え、2人の地元・豊橋で新生活を始める予定だ。
「夫婦って同じ目的地に向かって延びる2本の道を並走するイメージ。お互い、仕事もやりたいこともあるだろうから、譲り合ったり励ましあっていけたらいいなと思います」
夫はフィギュアに懸ける鈴木さんの想(おも)いも理解してくれているそうで、今後もあまりペースを変えずに仕事を続ける予定だ。
「全く違う人生を歩んできたわけですから、大変なこともあると覚悟しています。でも、自分で楽しくしようって思って。スケートの練習も、どうしたら楽しめるかをいつも探してきた。これからもそうしていきたいですね」
このしなやかな強さが、これからも鈴木さんを輝かせていくのだろう。
(撮影:渞忠之/ヘア・メイク:加藤圭〈竹邑事務所〉/文:木村由理江)
鈴木さんへ
- いつもバッグに入っているものは?
- 携帯、充電器、財布、イヤホン、タオル、歯ブラシ、ティッシュ。あとリップクリームと家の鍵。
- 好きな花と色は?
- マーガレット。シンプルだけど華やかな感じが好きです。色は白。心がスッとする色だからかな。
- 好きな場所は?
- スケートリンク。喜怒哀楽を含めすべての私の感情を知っている、鏡のような場所です。

すずき・あきこ
1985年愛知県豊橋市生まれ。6歳の頃からスケートを始め、15歳で全日本選手権4位に。東北福祉大学在学中の21歳でユニバーシアード冬季大会優勝、24歳でグランプリシリーズ初優勝。以後、日本を代表する選手の一人として活躍。バンクーバーオリンピック(2010年)、ソチオリンピック(14年)に出場。14年の世界選手権を最後に、現役を引退。現在はプロフィギュアスケーターとしてはもちろん、フィギュアスケートの解説者、振付師としても活躍中。昨年、小学校の同級生と婚約、今年2月に入籍した。
