Life Style
2018.07.10

「喜びの多い仕事だと思っています」
桜沢 エリカ さん(漫画家)

(撮影:宮本直孝/ヘアメイク:胡桃澤和久(Three PEACE)/撮影協力:東京バレエ団バレエスタジオ/取材・文:編集部)

現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説「半分、青い。」で改めて注目の漫画家という仕事。19歳で漫画家デビューし30年余、多岐に活躍する桜沢エリカさん。新刊『バレエで世界に挑んだ男』が出たばかりの彼女に10の質問。

Q1 新刊『バレエで世界に挑んだ男』とは?

1960年代に東京バレエ団を創設し、日本のバレエを世界水準に高めたといわれる佐々木忠次さんの評伝漫画です。原案となった『孤独な祝祭 佐々木忠次』(追分日出子著/文藝春秋)を読んで、最初の出だしから引き込まれ、あ、これはもう漫画にしなきゃと思ったんです。私は20年以上前、世紀の舞姫と言われたシルヴィ・ギエムを見てバレエに惹(ひ)かれ、天才振付家ベジャールの作品にも興味をもちましたが、佐々木さんはその全部を日本に招聘してくれた人だと『孤独な祝祭』を読んで初めて知り、ありがとうという気持ちでした。戦時中でも舞台を忘れなかった少年時代や、後年、海外の超一流オペラハウスと諦めないで交渉し続ける姿に惹かれましたね。同時に、佐々木さんは可愛い、愛嬌(あいきょう)のある方で、そう描きました。

Q2 バレエ好きです。魅力は何?

日々の鍛錬でつくられたダンサーの肉体と音楽で表現する芸術です。その美しさは半端ではないです。だから他の舞台芸術を見ると、その肉体でいいんですかと思ってしまうことも(笑)。セリフがないからこそ表現できる美しい世界。私も最初、ベジャールを見た時は、笑ってしまってどうしようと思いましたが、見続けることで素晴らしさがどんどんわかっていく世界です。良かった踊りはずっと心に残っています。今回の作品でも、バレエシーンを意識して多く描きました。バレエの入門になったらいいなとも思っています。

Q3 漫画家の醍醐味(だいごみ)は?

喜びの多い仕事だと思っています。物語を考え簡単な絵柄を描くネームができるまでは大変で辛(つら)いですが、ネームが出来上がった時は大きな喜びです。アシスタントが集まり仕上がった時も嬉(うれ)しいし、雑誌に載って嬉しいし、単行本になるとまた嬉しい。何回も嬉しい局面がくる、いい仕事だなと思います。でも漫画家は寝ないで描いているイメージがあり、確かに短命な方も少なくないですが、私は締め切りの日は遅くまでやりますが、夜はちゃんと寝ています。

Q4 夫は専業主夫とか。どんな暮らし?

子どもが欲しいと言っていたのは夫で、彼が仕事をやめたいという時期でもあり、じゃ、やめて子育てしてよという感じで始まりました。子どもが小さな頃は、授乳とおむつを時々替える以外、私は何もやってないですね。だから子どもと二人にされると困りました。息子をベビーカーに乗せて、デパートでも行ってみようと思ったら、大冒険です。その子どもも15歳(娘)と18歳(息子)。夫も子育てが終わった主婦がパートに出るみたいにアルバイトを始めましたが、食事はいまでも夫が作っています。私は子どもをほとんど怒らないですが、相談にはのっていて、いわゆるお父さん的なお母さんかな。

Q5 桜沢さんにとって、家族とは?

うーん、家族がいるから働いているみたいなところがありますね。結婚する前にすごく行き詰まった時期があり、働いている意味がわからなくなった。多少贅沢(ぜいたく)するために働いているのかなとか、なんかつまらないなみたいな。だから子どもができたことで自分が働く意味というか理由ができてすごく良かったですね。

Q6 仕事を離れて好きな時間は?

バレエを見る以外では、お茶のお稽古。陶酔感があります。手順しか考えないから頭が空っぽになるのがいいです。火のついた炭や燻(くゆ)るお香、お湯を入れた時のお茶の香りもいいです。着物を着る機会にもなっています。

Q7 今日も着物です。ファッションへのこだわりは?

今日の着物は宮古上布、帯は対馬麻です。着物は若い頃からずっと好きで10年ごとにブームが巡っていました。今回のブームはお茶と一緒にきました。着物の魅力は形が変わらないところ。だから色と素材で無限に増えていく。洋服も一時期、バカみたいに買っていた頃がありましたが、妊娠して途切れて救われました。いまは立ち寄った駅構内で買う服で十分になってきました。洋服が減り着物が増えてますが、着物は大半、昭和やそれ以前の古着です。生地がいいような気がします。

Q8 最近の買い物でお気に入りは?

この帯締め。道明さんの組紐。いま道明に組紐を習いに行っています。これも何も考えず、手を動かす作業。もう少しゆっくりしたらと言われますが、漫画の週刊連載をやり、あとはぼーっとしていたら、それだけになってしまう。ほかに何かを入れたいんですね。

Q9 落ち込んだ時のストレス解消は?

イライラしないし、あまり落ち込まないかな。でもたまに一人でお店に入ってメロンパフェとか食べますね。

Q10 バッグの中に必ず入れる定番は?

化粧直しも入っていないし、グロス1本だけ。あとは財布、ガラケーの携帯にタブレットくらい。ほとんどものをいれないです。

さくらざわえりか
1963年東京生まれ。10代でデビューして以来、コミック誌やファッション誌など他方面で活躍。女性の心理をリアルに描写した作品を多く手がける。『メイキン・ハッピィ』『天使』『スタアの時代』『バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ』など著書多数。

インタビュー後記

凜(りん)とした着物姿で現れた。背筋が伸び、姿勢がとても良い。それは桜沢さん自身にも通じているように感じられた。好奇心旺盛、興味の対象はとことん極める。しかも気負いなく、不思議なほど自然体。華やかな見た目と違い、さっぱりとした男気のある人、との印象をもった。