Life Style
2018.09.15

「“心に寄り添うテクノロジー”に挑戦していきたいです」
スプツニ子!さん(アーティスト)

(撮影:宮本直孝/取材・文:宮本恵理子/ヘア&メイク:河西幸司)

日本から8000km離れた難民キャンプで生活するシリアの人々に「私たちの思いとユーモアを届けたい」と語るスプツニ子!さん。人・社会・テクノロジーの関わりをテーマに創作活動を続ける彼女に10の質問。

Q1 最新プロジェクト「RED CARPET LOVE!」とは?

シリアから逃れた8万人が暮らすザータリ難民キャンプの映画文化を応援する寄付プロジェクトです。

昨年、その地域に映画館が完成したのに一度も上映が実現していないことを知人から聞いて、その難民キャンプに住む映像作家たちを支援できないか、そして、たとえすぐそばで空爆があったとしても、難民たちが映画を楽しむ自由を応援したいと考えました。

日本ではとかく「偽善」と批判されることもある寄付という行動を、もっとオープンに明るく楽しめるものにできないかと“リデザイン”を企画しました。寄付に参加してくださった人には好きな映画シーンを再現して写真を撮ってもらい、レッドカーペットに敷き詰めて、8月の2日間、東京・代々木公園に展示しました。人を巻き込む参加型のアートは、私にとって初めての挑戦でしたけど、思っていた以上に多くの方々が参加、行動してくださり、予想を大幅に上回る募金が集まって。皆さんの写真から溢(あふ)れるパワーに、逆に勇気づけられました。

Q2 アートの魅力は?

私にとって、アートを表現する舞台はキャンバスではなく社会。価値観を問いかける“社会彫刻”という感覚で活動しています。その魅力は、「生産性」や「効率」といった数字の指標では表せない“人間らしさ”を確認できること。会ったこともない誰かに思いを馳せたり、一見非合理に見えることを楽しんだりする営みは、AI(人工知能)にはない人間だけの魅力だなと思います。今回のプロジェクトでは「人って優しいし、遊び心のある生き物だな。私もそういう生き方をしていきたいな」とあらためて感じることができました。

Q3 自由で豊かな発想の源は?

森や海、美術館からダボス会議まで、いろいろな場所から刺激を受けてインプットした情報を、頭の中でブロックみたいに組み立てていく感じですね。決して、「突然降りてくるタイプ」ではないんですよ(笑)。「意外とロジカルなんですね」とよく言われます(笑)。

Q4 休日の過ごし方は?

最近は海でダイビングを楽しんでいます。日頃PCのモニターばかり触れているからか、海に行くとつい「なんて情報量が豊かなんだろう!」と感動してしまいます(笑)。都会で“サイボーグ化”しがちな頭をリセットするために、大自然の環境にできるだけ足を運ぶようになりました。

Q5 心落ち着く場所は?

やはり海ですね。海は誰に対しても平等に、美しく、やさしく、厳しいから。都会では競争や評価にさらされることもありますけど、私がどうあっても、海はずっと海であり続ける。ただそれだけで癒やされるし、無償の愛を感じます。

Q6 気に入っている言葉は?

最近になって父から聞いた私の名前「優美」の由来です。「人の優しさと自然の美しさを分かる人になってほしい」。まさにこれこそ、生きることの喜びそのものかもしれないなって。ずっと名前負けしていると思っていたけど、このメッセージは納得できたし、自分の名前を改めて好きになりました。ちなみに、スプツニ子! という名前は、高校時代のニックネーム“スプートニク”からです。

Q7 好きな家事は?

私は家で仕事をすることが多いので、モニターから離れてリフレッシュできる家事は好きです。ハマっているのは料理の作り置き。緑や赤などカラフルなおかずを揃(そろ)えて並べるのが好きで、気づけば冷蔵庫内は“テトリス状態”に。定番はひじきの煮物とか…すみません、地味で(笑)。この夏はミョウガの酢漬けもよく作りました。

Q8 バッグの中の定番は?

身軽でいたいので、物はあまり持ち歩かない主義。財布と携帯、あとはリップくらいかな。大切な思い出の写真や音楽は、すべてネット上に保管しています。

Q9 憧れの女性像は?

ミランダ・ジュライや、ソフィア・コッポラのようなアーティスト。意志が強くて、社会的な意見も発するけれど、遊び心があって堅物過ぎない感じがカッコよくて憧れます。

Q10 これからチャレンジしたいことは?

「心に寄り添うテクノロジー」に挑戦していきたいと思っています。例えば、心が疲れたり弱ったりした人の悩みを解決できるAIの可能性を広げようと、いろいろと構想中です。

すぷつにこ!
本名、尾崎マリサ優美。1985年東京都生まれ。日本人の父とイギリス人の母の間に生まれ育つ。高校卒業後、英インペリアル・カレッジ・ロンドンに進学し、在学中より音楽や映像作品を介して社会的メッセージを発信するアート活動を開始する。2010年、英国王立芸術学院修士課程修了。13年、米マサチューセッツ工科大学メディアラボ助教に就任。17年より東京大学生産技術研究所 RCA−IIS Design Lab特任准教授を務める。代表作に、「豊島八百万ラボ」など。「RED CARPET LOVE!」は今月20日まで。

インタビュー後記

インタビューは代々木公園で行われた展示の最終間際に。夕日に照らされたレッドカーペットに、コロンと仰向けになって空を見上げ数十秒。酷暑の中、道行く人に声をかけ続けた疲労と安堵が混ざった爽快な表情だった。人懐こく飾りのない語り口が、「アート」が特別なものではないことを感じさせてくれた。