Life Style
2020.04.11

「冷静に、自分を客観視する意識を持つことが大切」
中野 信子 さん(脳科学者)

(撮影:天日恵美子/取材・文:宮本恵理子)

感染予防のため、撮影は最少人数で、インタビューは「オンライン方式」となった今回。快く対応くださった中野さんの画面越しの表情は豊かで、どんな質問にも気さくに答えてくださいました。高度な専門用語を一切省いて伝えるこだわり。私たちの日常と科学をつなぐ架け橋。「そう言われるのが嬉しい」と語る笑顔が印象的な中野さんに10の質問。

Q1 非常時の今、不安を感じる時の対処法を教えてください

誰にとっても未経験の大変な状況が続き、疲れを感じている方が多いと思います。大事なのは、「心配になったり、不安になったりするのは、人間として正しい反応だ」と受け止めること。不安を感じると、他人に対しても攻撃的な感情が生まれることもありますが、冷静に自分を客観視しようとする意識をもちたいものですね。

Q2 最新刊『空気を読む脳』にも、対人関係のヒントが満載です。

そうですね。私たちは時に合理的でない行動をとってしまうことがある。それを理解しているだけでも、気持ちが落ち着くのではないかと思います。誰かに対して苛立って何かを言いたくなったとしても、「言っても意味がないかも」と一度立ち止まってみる。余計な糾弾ではなく、より建設的な行動にエネルギーを注げるほうが、ストレスが溜まりにくくなるはずです。

Q3 今日からできるイライラ解消のコツは?

心の安定や快眠につながるホルモン「セロトニン」の分泌活性のために、朝の光を浴びることが有効だとわかっています。私も朝起きたらまずカーテンを開けて日光をたっぷり浴びるのが日課です。

それから、お風呂にゆっくり入るのもおすすめです。手軽にリラックスできますし、家族が長く一緒にいる時期だからこそ、“ひとり時間”を確保するのがお互いのため。朝でも夜でも時間が取れるタイミングで、ゆっくりとバスタイムを。仲の良い家族でも、あえて“向き合わない時間”をとることが大事です。

Q4 ご夫婦で共通の趣味は?

楽器を演奏したり、映画やドラマを観たりするのが好きです。ただし、好みのジャンルは夫婦で違って、私が好きなのは『スリラー』や『ウォーキング・デッド』などのホラー系。対して夫は、クラシックなフランス映画派。でも、夫婦で趣味が違うほうが、世界が広がって楽しいです。

Q5 おこもり生活でハマっているアイテムは?

入浴剤です。もともと好きでしたが、今まで以上に買い込んでいます。特にバーベナなどシトラス系の香りが好きです。香りは脳にダイレクトに作用するので、気分をスイッチするのに便利なんですよ。入浴剤もちょっと贅沢して、一時ストップしていた香水コレクションも再び加速しそうです。お出かけに使わない分のお金を、おうち生活を楽しむために使っています。

Q6 ご自身の性格を一言で表すと?

エコ。全然動かないし、外出も嫌いで3日間家から出なくても平気なタイプ。唯一の趣味であるダイビングを楽しむ時も、いったん海の底まで沈んでしまうと全然動かないんです(笑)。じっと海底の生き物を観察しています。だから、実は今のおこもり生活は嫌いではありません。

Q7 本を書く時に意識していることは?

脳科学が専門ですが、あまり専門用語を使いすぎないように。正確性を重視するあまり論文のような文章になってしまっては、たくさんの人に届かない。できるだけ平易な表現を使って、「科学は一部の人たちのものではなく、誰もが日常で使えるものですよ」と伝えられたら嬉しいです。

Q8 脳科学研究の魅力とは?

人間は多面的で自分自身も理解していない部分がたくさんあります。脳科学は“外に見せたい自分”とは違う“本当の自分の中身”をのぞける手段。不安や後悔、飽きっぽさなど、自分では嫌だと感じる感情も、脳科学を通せばすべて意味があるのだと分かります。例えば、傷つきやすいのは自己防衛能力が高い証拠ですよね。ネガティブな感情をポジティブに読み換える訓練になるから、脳科学は面白くて役に立つんです。

Q9 10年後のご自分に約束を。

今よりさらに楽しい人生を送ってほしい。今の私には想像できないことをやっていてほしい。思いもよらない場所で、楽しく生きていたいです。

Q10 今気になっているテーマは?

「美しいもの」の価値。コロナの影響で美術館が閉館したり、アートにとっては厳しい時期となりました。一方で、アートをいかに守っていくか、各国の姿勢の違いが浮き彫りにも。私はアートが好きだし、これからの国力にもつながっていくと思っています。数字に表れにくい価値や目に見えない価値に、私たちはどう向き合っていくべきなのか。考えるきっかけを作る挑戦をしたいと思っています。

中野 信子 さん
脳科学者

なかの・のぶこ 1975年東京都生まれ。東京大学工学部応用化学科卒業後、同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)の勤務を経て、2010年に帰国。13年、東日本国際大学客員教授に就任し、15年より教授。脳の働きや心理学をわかりやすく解説し、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍する。著書多数。最新刊は『空気を読む脳』(講談社)。