「我をなくす境地にまでたどり着くことが生涯の目標です」
小松 美羽 さん(現代アーティスト)
(撮影:宮本直孝/文:宮本恵理子)
きゃしゃで美しいたたずまいの彼女が生み出す作品は、圧倒的な存在感と強烈なパワーで見るものをひきつけて離さない。その深い精神性を秘めた世界観で、今、注目を集める現代アーティスト、小松美羽さんに10の質問。
Q1 小松さんが表現している「大和力(やまとぢから)」とは?
「大和力」というと、「日本らしさ」を意味すると考えられがちですが、そうではありません。日本にはもともと、異なる思想や文化を織り交ぜて神体化する風習がありました。その象徴の一つが「狛犬(こまいぬ)」ですが、そのルーツをひもとくと、旧約聖書に描かれる様々な神獣にまでさかのぼる壮大な歴史に触れることができます。
一つの存在には、いろいろな異なる存在の融合や調和が溶け込んでいる。一人の力は、無数の力の融合体なのだと知るほどに、私は敬虔な気持ちになれます。
Q2 小松さんにとって「表現すること」とは?
インスピレーションをいただける対象は無数にあり、筆さえ持てばすぐに描き出せる感覚なんです。天からいただいた「絵を描く」という役割を果たせるよう、無心になって描いています。我をなくす境地にまでたどり着くことが、死ぬまでの目標です。
Q3 アーティストになったきっかけは?
美大の先生からは「就職活動しなさい」と言われ、先生を安心させるために40社くらい受けたのですが、全部落ちちゃいました。神が画家になれと全部落としたのでしょう、きっと(笑)。師匠と呼べる方々とのご縁があって、道が開かれていきました。
Q4 コロナ禍によって作風に影響は?
ありました。これまで、目の前に開けた道を進むのに夢中で、自分の過去を振り返ることはあまりしなかったのですが、ステイホームを機に振り返ってみたのです。すると、これまでたくさんの出会いがあり、恵みを受け取れて今の自分があるのだとあらためて気づけて、力が湧いてきたんです。無意識でしたが、最近はより明るい色を選ぶようになったみたいで、「作品が一層カラフルになった」と言われたことが何度も。きっと、過去を振り返ることで、未来への希望が見えたのだと思います。
Q5 大和力はどのように身につけられるもの?
大げさに考えず、日々の出会いに感謝して、何事も学びとして受け取っていく姿勢が大切だと思います。そして、やはりお勧めしたいのは「振り返ること」。たとえ苦しい過去だったとしても、今ここで生かされているということは、何らかの恵みがあったはず。大和力を身につけると、全てを肯定していけるようになると思います。
Q6 これから挑戦してみたいことは?
パブリックアートの活動をもっと広げていきたいです。例えば神社に作品を納めさせていただけるなら、アートはもっと日常の中で出会える存在になれる。今、海外で進行中のプランもあるので、じっくりと準備していきたいです。
Q7 リフレッシュ法は?
2匹の愛犬と遊ぶこと! 写真を見るだけで「かわいいね〜!」と声が上ずっちゃうくらい(笑)。小さい頃から動物が大好きで、実家でもいろんなペットと一緒に暮らしてきました。子どもの頃は、よく動物図鑑を見ながらスケッチして過ごしていたんです。
Q8 ご自分の性格を一言で表すと?
純粋になりたい人。身近なスタッフは私のことを「純粋な人」だと言ってくれて、そうありたいなと思いました。この世にある祈りを集めて、できるだけ研ぎ澄ませて表現していきたいですし、私自身の魂も磨いていきたい。まだまだ邪念だらけですけれど、年をとるごとに純粋になっていけたらいいですね。
Q9 好きな家事は料理派? 掃除派?
どちらかというと料理です。すごく好きというわけではなく、生きるために必要だから(笑)。家ではベジタリアンなので野菜中心の料理を。掃除は……動物のためになら頑張れます(笑)。
Q10 10年後の自分に約束したいこと
今、田舎の方にアトリエを建てているんです。10年後は、自然の中でゆっくりと絵を描けていたらいいなというのが希望です。もう一つ、「40代になったら始めよう」と決めていることがあって、私の原点でもある版画にもう一度取り組んでみたいんです。一度しか刷らない、すべて〝一点もの〟の作品にして。描くものはやはり狛犬さんになるでしょうね。その時の私ならではの「大和力」の表現に挑んでみたいです。
小松 美羽 さん
現代アーティスト

こまつ・みわ 1984年長野県生まれ。女子美術大学短期大学部卒業。出雲大社へ「新・風土記」を奉納(2014年)、有田焼を支持体に制作した作品「天地の守護獣」が大英博物館に永久所蔵される(15年)など、国内外で評価を集める。11月8日(日)まで、ウッドワン美術館(広島県)にて個展「自然への祈り」開催中。
