「公と私、二人の自分のバランスを取りながら生きています」
庄司 夏子 さん(オーナーシェフ・パティシエ)
撮影:天日恵美子/文:宮本恵理子
モード誌のグラビアページにも華やかに登場する庄司夏子さんと、「料理人になってからちゃんと寝たことがない。24時間仕事。だからベッドはいらない」と語る潔い庄司夏子さん。柔と剛、静と動の両極から挑戦し続ける人に10の質問。
Q1 アートのように美しいケーキや1日1組限定のレストラン経営が注目されています。
自分が最高にいいと信じられるものを追求してきた結果、ブランドができ、経営にも良い循環が生まれてきたのだと感じています。24歳で1,000万円の借金を背負って店を持ち、スタッフを雇った時から、私は大きな責任を負いました。私がつくる料理やケーキを楽しみに来てくださるお客様にとって、大切な“人生のパーツ”となれるよう、妥協せずに一心に厨房(ちゅうぼう)に立ってきました。お客様にとって最適なタイミングで料理を出したいという思いから、営業時間や定休日もお客様に合わせる1日1組のスタイルに。結果として、廃棄食材はほぼなくなって無駄が省けましたし、コロナ禍でも選んでいただける店になっています。
Q2 代表作「フルール・ド・エテ」のこだわりは?
独立する前に名店のケーキを数多く試食しながら思ったのは、「本当に心に残るケーキはシンプルで鮮明さが際立つもの」。世界に誇れるマスターピースだと感じてきた日本の果物を、美しくデザインしたタルトで勝負をしようと決めました。3秒で私のケーキとわかってもらえるものでないとダメだと。
Q3 料理や製菓に興味を持ったきっかけは?
中学生の頃、手作りしたシュークリームがとてもうまく膨らんで「おいしい」と褒(ほ)められたことが原体験です。料理人になってからは、一流と言われるレストランで必死に修業していましたが、仕事に没頭するあまり、父の最期に立ち会わなかった自分をふと見つめ直し、一時は厨房を離れました。もう一度この道に戻ったのは、私を求めてくれる人がいたから。お世話になったライターさんから、「今度、結婚パーティーをするの。なっちゃんのケーキが食べたい」と言われたことを機に、オーダーメイドの出張シェフ・パティシエの活動を始めました。やっぱり、「作ったものを喜ばれるとうれしい」という気持ちが、私の原動力です。
Q4 仕事以外で大切にしている時間は?
自分を支えてくれている大切な友人たちと、たわいもない会話をしながら食事を楽しむ時間。食べる料理はなんでもよくて、例えば、中華レストランでチャーハンとか。結局、食の幸せの大半は「誰と食べるか」で決まる。その大切な誰かとの時間に寄り添える料理やケーキを、私は作り続けていきたいと思っています。
Q5 自分の性格を一言で表すと?
潔い人。自分の店を持ち、商売は甘くないと身をもって知ってから、自分の選択に対して一層厳しくなったと思います。感覚的には、「素の庄司夏子」と「étéオーナーとしての庄司夏子」の二人がいて、窮地に立たされると、「été」(エテ)の庄司夏子ならどうする?」ともう一人の自分が問いかけるような感じ。二人の自分のバランスを取りながら生きています。
Q6 ストイックな日常の中での休息法は?
「呼ばれたらすぐに起きられるように」と床で寝ていた修業時代の癖で、ベッドは持っていないし、いまだに熟睡するのが苦手。20歳くらいの頃は3日連続徹夜しても平気でしたが、さすがに今は無理に(笑)。最近、質のいいマットを敷いて寝るようにしてから、疲れは取れやすくなりました。
Q7 バッグの中身の定番は?
私、手ぶらで出かける主義なんです。バッグは持っていたとしても、中身はほとんど空。お金は可能な限りキャッシュレス派です。
Q8 憧れの女性は?
「アジアのベストレストラン50」の最優秀女性シェフにも選ばれた香港人シェフ、ヴィッキー・ラウさんです。料理人としての実力はもちろんですが、結婚したパートナーのサポートによって、子育てもしながら、仕事に100%注力できる環境を実現している。こんな夫婦のあり方が、日本でも広まるといいなと思います。
Q9 最後の晩餐(ばんさん)として食べたいものは?
自分の作品、例えばタルトを一口食べてから死ぬことができたら最高ですね。
Q10 「10年後の自分」に約束を。
“日本で1番の女性シェフ”になっていることは当然として、世界を舞台に闘っていてほしいと思います。そのために、目の前にいるお客様の信頼に応える仕事を、積み重ねていきたいと思います。
庄司 夏子 さん
オーナーシェフ・パティシエ

しょうじ・なつこ 1989年東京都生まれ。代官山「ル・ジュー・ド・ラシェット」で修業を積み、2009年より南青山「フロリレージュ」で、パティシエ兼スーシェフを務める。14年にパティスリー「Fleursd'été」(フルール・ド・エテ)、翌年にレストラン「été」(エテ)を開店。昨年、「アジアのベストレストラン50」のベストパティシエ賞を日本人女性として初受賞。インスタグラム @natsuko.eteも人気。
