Life Style
2021.11.18

「過去の自分を拠(よ)り所にせず、どんどん脱ぎ捨てて進む自分であり続けたい」
草刈 民代 さん(俳優)

(撮影:下村一喜/スタイリスト:宋 明美/ヘア:笹浦洋子/メイク:齋藤美紀/取材・文:宮本恵理子/衣装:YOHJI YAMAMOTO)

言い訳無し。コロナ禍にあっても、「制限の中で何ができるか」を考え、行動し続ける草刈さん。その胆力はどこからでてくるのでしょうか。「いつも挑戦し続けているうちに思わぬ道が拓(ひら)ける」と語る草刈さんに10の質問。

Q1 今、何に夢中ですか?

今年はドラマ、芝居、ミュージカル、そして踊りと、私ができる表現の総集編のような活動が続きました。きっかけは、去年の緊急事態宣言中に半ば衝動的に作って公開した動画作品です。踊り手たちの発信が見られないことが気になって、8人のダンサーに声をかけて制作したんです。それがリアルな舞台公演にもつながって。まさか引退公演をしたオーチャードホールでまた踊ることになるとは思いもしませんでしたが、ありがたかったですね。もちろん現役時代のようには踊れませんが、この12年、芝居の世界で挑戦してきた今の私にしかできない踊りになったと思います。実は来年も公演が決まっているんです。

Q2 踊りとお芝居、どんな違いを実感していますか?

大きな違いは声を出すか出さないか。これは想像以上に大きなことでした。身体的な感覚において、別の領域なんだと思います。踊るには筋肉の緊張が必要で、芝居では逆にうまく弛緩(しかん)できないとダメなんです。「演じる体」に変えるために筋肉を落とすのにも10年かかりました。今回のプロジェクトで久しぶりに踊りの指導をしたら、語彙(ごい)が増えていることに気づきました。再び踊ったことで見えてきた「役者としての課題」もあったり。自分の幅の広がりを確認できたことが嬉(うれ)しかったですし、「やっと芝居の世界のスタート地点に立てた」という気持ちにもなれました。

Q3 リフレッシュはどのように?

コロナの前は旅行でしたが、今は「制限の中で何ができるか」を考えて、新しい表現を生み出すクリエーションそのものがリフレッシュになっている気がします。今までの自分が獲得してきたものを振り返って、今の自分に何ができるのか、何にワクワクするのかを真っすぐ見つめる。表現者は、今までと同じことをしていても、人の心は動かせない。

Q4 自分に向き合うためのコツは?

頭の中を空っぽにする時間をつくることは大事ですよね。周りに何を言われても、自分にとって本当に必要なものを決めて、腹を括(くく)ってやっていく胆力は、バレエで主役を演じてきた経験で鍛えられました。

日本人は周りの声を気にして足並みを揃(そろ)える傾向がありますが、そこに依存するのは危険です。特にコロナでいろんな人が同じ条件下にある今だからこそ、自分が何を生み出すかに集中したほうがいい。素直にシンプルに自分と向き合えるようになると、人に対して思うことも変わってくるのでは?

Q5 自分の性格を一言で表すと?

素直であり、頑固です。私は専門分野に関してはこだわるタイプですが、それ以外は割と柔軟です。自分を更新するのは面白いから、過去の自分を拠り所にせず、どんどん脱ぎ捨てていきたい。結果、“幅のある人”になることが、役者として成長し続けるためにも大切だと思ってます。

Q6 素敵に年齢を重ねるための条件とは?

新しいものを受け入れられるしなやかな心を保つこと。長年親しんだ習慣や好き嫌いの基準は簡単には変えられないけれど、それでも変えていけるとしたら、歳(とし)を重ねるのって面白い。覚悟の先にある新たな世界の広がりこそ、歳を重ねる醍醐味(だいごみ)でしょう。人生を楽しむために、自分自身の変化に敏感でありたいですね。

Q7 最近、生活習慣で気をつけていることは?

現役時代に比べれば、それほどストイックに管理していませんが、最近は食べ過ぎないように心がけています。自分が動きやすい最適な体形を保てるように、毎日の食生活を心がけています。

Q8 バッグの中身の定番は?

今の時代ならやっぱりマスク! どんなに小さなバッグでも忘れずに1枚。すっかり習慣になりました。

Q9 ハタチの頃のご自身にアドバイスを。

特にかける言葉はないです。なぜなら、その頃の私はとにかく必死で、人の言葉を聞く余裕もなかった。壁を乗り越えられるのは自分自身だけ。他人の言葉を消化できるのは、乗り越えられた後なのだと思います。

Q10 10年後のご自身に約束を。

いつも挑戦を続けているうちに思わぬ道が拓けていくので、その頃の私が何をしているのかさっぱり想像がつかないですね(笑)。10年後の私の前にどんな風景が広がっているのか、楽しみです。

草刈 民代 さん
俳優

くさかり・たみよ 1965年生まれ。7歳からバレエを始め、81年より牧阿佐美バレヱ団に参加。84年に主役に抜擢(ばってき)され、以後、主要バレリーナとして舞台に立つ。モスクワを始めとする世界各地で客演し、注目を集めた後、映画『Shallweダンス?』(96年)に主演し大ヒット。2005年愛知万博で公演プロデュース・主演。09年にバレエ引退後も映画・ドラマ・舞台と活躍の幅を広げる。