「本当の意味で人生の完熟期を味わうための何かを見つける“旅”を続けています」
齋藤 薫さん(美容ジャーナリスト・エッセイスト)
(取材・文:宮本恵理子)
「ボンマルシェ」の2010年8月号から続く連載随筆「美しい歳の重ね方 “一生美人”力」は、22年6月号で144回に。この間、15年に連載を中心に編んだ『“一生美人”力』を、そして、この6月には続編ともいうべき最新刊、『“一生美人”力 セカンドステージ──63の気づき』(朝日新聞出版)を刊行。
ともするとこぼれ落としてしまいがちな日常の大切なコトやモノを丁寧に拾い上げ、さまざまな角度から気づきを与え続けてくださる齋藤薫さんに10の質問。
Q1 人生第2章への“一生美人”力。最新刊で一番伝えたいことは?
人生の後半、セカンドステージを迎えた女性たちに向けて、「さあ、むしろここからが本番ですよ」と伝えたいと思います。
私自身も40代後半を迎えた頃に、肉体的な衰えを感じる場面が増え、辛い更年期も経験し、次々と蓋(ふた)が閉まっていくような焦燥を抱きました。でもここ10年ほどで世間の空気は随分変わって、「人生は長い。年齢を重ねることは悪いこと、怖いことではない」という風が吹いています。けれど、元気であればいいというわけではなく、やみくもに趣味を増やすだけでは、人生は満たされませんよね。本当の意味で人生の完熟期を味わうための何かを見つける旅を続けています。
大切にしたいのは好奇心。なんでも知っている気になりがちだからこそ、未知の世界の扉を開き、貪欲(どんよく)に吸収したいもの。コロナ禍前は旅がその機会になっていましたが、この2年半は自宅で“教養のレッスン”が習慣に。歴史やサイエンスの番組に夢中です。年齢を重ねて、ようやく知識欲が湧いてきました。
Q2 人生後半における美容の極意は?
私が考える「40代後半以降の美しさ」の定義は、いかに“光”を放てるか。まるで内側から光が溢(あふ)れるような輝きを感じられる人っていませんか。光とは、つまり生命感。久しぶりに会った人に「元気そうね」と言われるかどうかが、一つの基準になると思います。
そのために重視したいのは、やはり内なるケア。特に私は「腸活」に注目して、せっせとビフィズス菌サプリを飲んでいます。腸はホルモン分泌や脳や免疫など全身の健康の要。性格も左右するといわれています。
Q3 最近取り入れた習慣は?
心がけているのは、自分の精神に目を向け、良い感情を養う時間を持つこと。「マインドフルネス」というと少々難しく感じるかもしれませんが、呼吸や瞑想(めいそう)を通じて、頭のなかをカラにし、1日何万回も湧き上がるネガティブな感情を意識的に除去すること。仕事中や寝る前に、気軽にトライしています。
Q4 今憧れる女性像は?
例えば女優のダイアン・キートンのように、若い頃に一世風靡(いっせいふうび)し、ブランクを経て60歳を超えてまた活躍。ファッションが素敵で、笑顔がとにかく明るくてハツラツとしている。それでいてナチュラル。まさに“光を放つ人”です。生来、利他の心を持っている人に加えて、周りを照らして幸せにする存在も「ライトワーカー」と呼ぶと聞き、まさにお手本のような女性だなと憧れています。
Q5 家族との関係を心地よく保つコツは?
ウェルビーイングの先生に取材に伺った際、「感謝は相手に伝わらないと意味がない。今の10倍感謝しなさい」と言われて、帰宅後にさっそく家族に対して実践してみると、効果絶大。家族が感謝を伝え合うことがこんなに幸福感を高めるのかと驚きました。
Q6 美しく暮らすためのヒントを一つ。
断捨離だけではなく住み慣れた家を魅力的に整えることで、家で過ごす時間に愛着を持ち、喜びをより感じられるように。家の中の1カ所でもいいので、「惚(ほ)れ惚れするコーナー」を作ってみるといいと思います。
例えば「光」に注目してみる。朝の透明な光、昼のシャープな光、夕方の柔らかい光、それぞれの時間で心地いい光を集める場所はどこか?と探してみてください。人と同じで、家も可愛がられてこそ輝くもの。日常にも美意識を持って暮らしていきたいですね。
Q7 好きな「旅の楽しみ方」は?
テーマのある旅が好きですね。私の場合は「音楽に浸る旅」。コロナ禍前には毎年のようにドイツのリゾート地・バーデンバーデンで開催される音楽祭を訪ねて、教会や美術館で日がなコンサートを楽しむ旅が定番でした。
一方で、計画から外れて自由に時を過ごす一人旅も、また違った魅力がありますね。かつてひょんなことからウィーンの街を独りで過ごす時間ができたとき、もう一人の自分が私を客観的に見つめているような、不思議な感覚を持ったことを覚えています。
Q8 バッグの中身の定番は?
目薬各種。潤い、かすみ、充血対策など目的に応じて使い分けています。白目の白さは歯の白さ以上に大事。充血のないピュアで透明感のある瞳を保つことは、相手を不快にさせないための礼儀でもあると思うから。
Q9 20歳の自分に何か贈るとしたら?
「留学、つまり広い視野」です。若い頃は恋愛に忙しく(笑)、自分に投資することの価値に気づいていませんでした。その価値に気づいた頃には仕事に忙しく、海外で視野を広げるゆとりを持つことが難しくなってしまいました。もっと早く世界を見ていたら、今の何倍も人生が充実していたのにと、大後悔しているから。
Q10 10年後の自分への約束を。
最終的な人生の財産はやはり友人。信頼できる“一生もの”の友人に囲まれて10年後の日々を過ごせるよう、大切に関係を育んでいきたいと思います。
齋藤 薫 さん
美容ジャーナリスト・エッセイスト

さいとう・かおる 女性誌編集者を経て、美容ジャーナリスト・エッセイストとしてファッション誌やウェブ記事で執筆するほか、美容記事の企画、化粧品開発アドバイザーなど幅広く活躍。美容やファッションカルチャーを通じて、女性の生き方をリードする。最新刊『“一生美人”力 セカンドステージ──63の気づき』(朝日新聞出版)が好評発売中。

