「いつも自分が人生の主役であることを忘れないで」
高尾 美穂さん(産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター)
(撮影:宮本直孝/取材・文:角田奈穂子)
はつらつとした笑顔と温かな語りかけで、女性の体と心を力強くサポートする高尾美穂さん。「明るい未来の方向へ、悩める女性たちの背中をちょっと押すのが私の役目」と語る高尾さんに10の質問。
Q1 不安なことも多い更年期。ポジティブに向き合うには?
正しい医学知識を学ぶことが役に立ちます。不調の理由を冷静に考えられますし、対処法も見つけやすくなるからです。平均寿命を考えると、更年期以降、つまりは人生の半分は、女性ホルモンのエストロゲンが卵巣で作られていません。卵巣が働き始める10歳頃から閉経までの約40年間は妊娠出産が可能だったり、生活習慣病にかかりにくかったり、特別ボーナスをもらったような期間なのです。そして、閉経後はエストロゲンの影響を受けない、ほぼ初めての“凪”(なぎ)の時期に。体調が安定しているからこそ、得られる楽しさも多いんですよ。
Q2 女性の体に関して積極的に情報発信されている想いは?
クリニックを受診するのは、困っている女性の半分程度。月経や更年期のつらい時期が過ぎればなんとかなると考えている女性が多い。でも、「我慢せず、困っていることをよくすることが大事だよ。そのためには受診したり、セルフケアの知識を得たりする必要があるよね」ということを、受診をためらう人にも伝えたい。私がメディアに出演し、本を書き、ブログや動画で発信しているのは、求めている人に必要なタイミングで必要な情報を届けたいからなんです。
Q3 産婦人科医を志したきっかけは?
臨床研修医として、さまざまな診療科を回って勉強しているとき、自分に向いていると気づいたのが、患者さんの話を聞くことでした。じっくりうかがうことで気持ちの整理がつき、納得して帰られた更年期の患者さんの姿を見たとき、達成感を感じたんです。それに産婦人科医は、女性の一生に寄り添えます。治療だけではなく、生活の悩みを一緒に考えたり、喜びを分け合ったり、素敵なことがたくさんあるんですよ。
Q4 ご自身も更年期。大切な習慣は?
睡眠をしっかり取ること。今は、夜11時には寝て、朝6時頃に猫に起こされるようにして目が覚めます。十分に寝ると、翌日の昼のパフォーマンスがぜんぜん違います。ご機嫌で過ごせて周囲にもやさしくできます。今は、屋外プールで泳ぐことも。3日に1度、1時間半くらい泳いでいます。運動で意図的に交感神経が優位な時間を作ると、そのあと、必ず副交感神経が優位になるので、リラックスして、よく眠れます。暑いときは交感神経が過剰に優位になりがちです。運動で交感神経のスイッチを切り替えるといいですよ。
Q5 好きなリラックスタイムは?
朝にシャワーを浴びたあと、猫と触れ合いながらヨガをすること。私にとって、ヨガは歯磨きと同じくらい日常的な習慣。それから、水泳、シャワーやお風呂。水に触れることで気持ちをリセットするのも好き。私のバッグにはいつも水着が入っています。
Q6 最近、読んだ本は?
常に、4冊ほど並行して読んでいますが、最近おもしろかったのは『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)です。自分で選ぶと哲学系が多くなるので、視野を広げるため、人からすすめられた本は必ず買うようにしています。
Q7 自分の性格を一言で表すと?
「単純」です。単純って大事。ほめられたら喜ぶ、よくないと思ったら謝る、すすめられたらやってみる。そのシンプルさは成長するきっかけになると思います。
Q8 20歳の自分に伝えたいことは?
「いい人生だよ」。大学生活は楽しかったんですが、勉強が大変でした。でも、何のためにやるのか疑問を感じる勉強も、自分が勉強したい分野にたどり着くために必要なプロセスなんですね。
Q9 10年後の自分への約束は?
デジタル化と検査施設の独立性が進むことで、患者さんが医療情報を自己管理するようになり、データを持って、診断を受けたい医師の元に行ったり、オンライン受診するようになると思うんです。そうなれば、医師はどの場所にいてもいい。海が好きなので、私は自然豊かな海の近くで暮らしているかもしれないですね。
Q10 読者へのエールをお願いします
女性の患者さんたちを診ていて思うのは、みなさん頑張るのは上手だけれど、休むのは下手。でも健康を維持するために、しっかり休みましょう。いっときでも家庭や職場の責任から解放されて、自分が楽しいと感じる時間を大切にして欲しいです。自分の人生の主役は自分、ということを忘れないで。
高尾 美穂 さん
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター

たかお・みほ イーク表参道副院長。東京慈恵会医科大学大学院修了。同大学付属病院を経て現職。産業医やスポーツドクターとしても活動。女性たちが日々をよりよく生きるための医学情報やアドバイスをテレビやラジオ出演、ブログ、ネットラジオ、セミナー、書籍などを通して明るく、わかりやすく情報発信している。最新刊は『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』(講談社)。
