Life Style
2022.10.27

「食材の一つひとつに向き合い、大切につきあっていく。そんな生き方の提案をしたいです」
枝元 なほみさん(料理研究家)

(撮影:天日恵美子 文:宮本恵理子)

ドアを開けると、「ようこそ!」と、枝元なほみさんがとびきりの笑顔で迎えてくださった。キッチンからはカレーの香りが!? 「スープの出汁(だし)に使った野菜をカレーにリメイクしたの。どうぞ召し上がってね」。遠慮なくいただきながら、ゆっくりと時間が流れる中で、枝元さんに10の質問。

Q1 新刊『捨てない未来──キッチンから、ゆるく、おいしく、フードロスを打ち返す』を発刊!

今回の本のテーマは「フードロス」。キッチンから外へ飛び出して、食材のルーツや「食べた後」まで追って伝えるのが今回の挑戦でした。私にとってキッチンは世界一好きな場所。だからこそ、ここを"嘘(うそ)の場所"にはしたくない。人にも環境にもやさしい、堂々と胸を張れる食のあり方を求めたいと思っています。

「食べる」と「生きる」はくっついているもの。だとしたら、生きるを支えることが料理の本質。農業や食品の未来について、ちゃんと考えないといけないなって思います。食材を賢く使い切ることは「生きるための技術」。難しく考えず、楽しみながら始められるフードロス解消のヒントもたくさん紹介しています。 

Q2 「食」の発信で大切にすることは?

今回の本を作りながらあらためて感じたのは、「過不足なく」の大切さ。私たちは何かと"プラス"することに頑張りがちだけれど、過食は健康を害し、環境も傷つけます。栄養過多で育った野菜は、実は傷みも早いんです。逆に、ほどよい栄養の土で育った野菜は味もおいしくて長持ちするんですよ。土壌を健やかに保つことが作物や土中微生物にとっていかに重要なのかも、農家さんに教えていただきました。食べ物の先を想像する力を養いたいですね。

食材を使い切らずに捨ててしまうのは、自分の命に対してもぞんざいになっているのかも。「もっともっと」を卒業して、食材一つひとつに向き合って、大切につきあっていく。そんな生き方の提案をしたいです。

Q3 朗らかな笑顔を保てる秘訣(ひけつ)は?

おおらかな気持ちでいることかな。料理を作る人が怒っていると、きっと料理の味もとんがっちゃう。食べる人に何かを強要するのも嫌だな。一番大切にしたいのは、そこにいる人たちが和やかであること。「おしゃべりに夢中になって、何を食べたか忘れちゃった」と言われるくらいがいいんじゃないかな。

Q4 一番行きたい場所は?

自然の中。海を見たい。星や森の木々を眺めたい。少し前に西表島に行く機会があって、滝の近くの沢を歩くアクティビティーに参加したらとても楽しかったです。澄んだ水に囲まれて、全身の細胞が喜ぶ感覚を味わえました。

Q5 これだけは手放せない道具は?

あすなろ製の菜箸です。あたりが柔らかく軽くて、自分の手のように使いやすく、しかも熱に強い。東京・九段にある「暮らしのうつわ 花田」という店で、毎年末に買い替えて使い続けています。素晴らしい道具の作り手の方々に会いに行ってお話を聞き、素材や手仕事のこだわりをうかがうのも大好きです。

Q6 お気に入りの1日の過ごし方は?

今の"大好物"は、白いスケジュール帳。仕事も好きだけれど、何の予定も入れずに、好きな音楽を聴きながら気ままに過ごせる時間は最高の贅沢(ぜいたく)です。

起きたらまずアロマオイルをブレンドしてマッサージ。フランキンセンスとラベンダーのエッセンシャルオイルをはじめ、いろいろプラス。それを馬油と混ぜています。その後は好きな音楽とともに10分くらい深呼吸をします。それから猫にご飯をあげて、野菜スープを飲んで、ケフィアヨーグルトを食べて。

Q7 ご自分の性格を一言で表すと?

マイペース。子どもの頃からそうでしたが、最近特に。「君は自由過ぎる」と言ってフラれたことが2回もあるんです(笑)。

Q8 理想とする大人像は?

今は「ドリトル先生」かな。誰に対しても真っすぐ向いて、自分の心を信じて進んでいける。魂のきれいな人でありたいと思います。

Q9 20歳の頃の自分にメッセージを。

「大丈夫」。過去の自分だけではなく、今の若い子たち一人ひとりにもかけたい言葉です。

Q10 10年後の自分への約束を。

いつか死ぬ、それまで生きる。これは友人の詩人、伊藤比呂美の本のタイトルの一部で、深く共感する言葉です。もう一つ、「勇気をもって生きていく」という約束もしたいです。私はこれまで曲がりくねった人生を歩んできたけれど、自分を守るための嘘はつきたくないなあ。これからも、のびのびとおおらかに、楽しいことを見つけながらやっていきたいです。

枝元 なほみ さん
料理研究家

えだもと・なほみ 1955年神奈川県生まれ。明治大学文学部卒業。81年、劇団「転形劇場」の研究生となり、海外公演にも参加する傍ら、無国籍レストランに勤務。88年、料理家としてデビューし、雑誌、テレビなどで活躍。農業生産者支援、ホームレス自立支援、震災被災地支援、フードロス解消など社会活動も行う。この10月7日に最新刊『捨てない未来──キッチンから、ゆるく、おいしく、フードロスを打ち返す』(朝日新聞出版)』を発刊。