Life Style
2023.04.26

「自分の体と脳をフルに使って、生ききれたら幸せです」
寺島しのぶさん(俳優)

(撮影:渞忠之/ヘアメイク:片桐直樹/スタイリスト:天津亜紀/文:宮本恵理子 衣装協力:トップスrito structure/イヤーカフRIEFE JEWELLERY)

映画『あちらにいる鬼』の演技で、2月に「毎日映画コンクール」の田中絹代賞を受賞した寺島しのぶさん。休む間もなく目下、5月に歌舞伎座での初代尾上眞秀として初舞台を控えるご子息のアテンドで忙しい毎日。「自分の仕事のほうがよっぽど気がラク」と言いながら、豪快に笑う寺島さんに10の質問。

Q1 "役を生きる人"といわれる、寺島しのぶさんにしか出来ない演技が話題。演じる極意は?

その役の「人間」を理解して撮影に臨むようにしています。役の核がつかめたら、どんなアドリブが来てもその役として返せるので。「寺島しのぶでしか、この役は演じられない」とオファーをいただけるのは嬉しいです。

気づけば俳優人生30年が過ぎ、年齢も50歳。歌舞伎の家に生まれ、芸能の道に進むには恵まれたとも言えますが、私なりに苦しんだ時期もありました。でも、苦労も含めてすべてがあったから今がある。「弱音を吐いている暇はない。前に進むのみ!」と夢中でやってきた積み重ねで、ここまで辿りつけました。

Q2 50歳という節目を迎えて思うことは?

更年期に悩むお年頃、正直、体はツラいです。先輩方からは「あなたのはただのイライラよ」と一蹴されますけどね(笑)。つい自分に鞭を打ってギリギリまで追い込んでしまう。そのツケだから、仕方がないです。これからはもう少し、自分を労ります。

Q3 長男の眞秀さんも大河ドラマや歌舞伎で活躍中ですね

来月5月の歌舞伎座「團菊祭」では初代尾上眞秀として初舞台。もう気が気ではありません。どうか無事に千秋楽を迎えられるようにと毎日祈っています。映像の演技に関してはついいろいろと口を出してしまうので、息子から「1人で現場に行きたい」と嫌がられています(笑)。彼に何か伝えるとしたら? 「賽は投げられた。もう、やるしかないよ」

Q4 子育てで大事にしてきたことは?

眞秀が小さい頃から「どんなことでもいいから、気になったことは相談してね」と伝えてきました。小学5年生になった今は性にも目覚めてきたようで、キワどい質問が増えてきました。でも変に隠すのはよくないと思うし、なんでも普通に答えます。すると、「なるほど、そういうことか」と自然に理解してくれますから。なんでもオープンに子どもと会話する文化が我が家の日常に根づいているのは、夫(フランス人アートディレクターのローラン・グナシア氏)の影響も大きいと思います。

Q5 健康を保つための心がけは?

とにかく行動! 私は立ち止まると気が抜けて体調を崩してしまうタイプ。5月の眞秀の舞台が終わったら、直ちに仕事を始めないとガクッといっちゃいそう。頑張ります。

健康のために欠かせないのは睡眠です。年齢を重ねるにつれ「食べる」より「寝る」を重視するように。夜10時には寝て朝6時までぐっすり寝ています。

Q6 日常の中でホッとできる瞬間は?

誰にもじゃまされずに1人になれる時間。サウナに入って汗をかきながら本を読むとか、車のなかもリフレッシュになりますね。

Q7 自分を勇気づける言葉は?

マキャベリ(イタリア・ルネサンス期の政治思想家)の「幸運の女神は、物事を冷静に考えすぎる人よりも、果敢に行動する人によく従うようである」という言葉です。情熱を持って進んでいると、きっといいことがあるかもと前向きになれます。

Q8 自分の性格を一言で表すと?

「やると決めたらとことん」。リリー・フランキーさんから「寺島さんって何事にも愛情をかけて全力投球だから、ちょっと心配になるくらい」と去年言われました。ところが本人は無自覚なんです。体が丈夫なんでしょうね。丈夫な体は父や母のおかげです。

Q9 20歳の頃の自分にメッセージを

19歳の頃の私は、蜷川幸雄さんに主役に抜擢していただき、俳優としてしっかりやっていきたいと覚悟を決めた頃。「お前、まだまだだな。これからもっとすごいことが待っているぞ」と伝えたいですね。

あの頃は自信満々で怖い物知らずでしたが、年齢を重ねるうちに主役が背負うものの重さを実感。今は初日なんて全身が震え上がりますもの。「無知は最大の強みだな」と、息子を見ていても思います。

Q10 10年後の自分に約束を

日本の"カワイイ文化"の中で、60歳の女性で主演を張れる映画はなかなかないけれど……演じ続けられていたら本望です。元気で気力がある限りは、自分の体と脳をフルに使って、「生ききった!」と笑って死ねたら幸せですね。

寺島 しのぶ さん
俳優

てらじま・しのぶ 1972年東京都生まれ。父は歌舞伎役者・七代目尾上菊五郎、母は俳優・富司純子、弟は歌舞伎役者・五代目尾上菊之助という一家で生まれ育つ。文学座を経て俳優デビュー。2003年公開の映画『赤目四十八瀧心中未遂』、『ヴァイブレータ』の演技で注目を集める。10年、映画『キャタピラー』で第60回ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞。23年2月、『あちらにいる鬼』(現在U-NEXTで配信中)で第77回毎日映画コンクール田中絹代賞を受賞。