手つかずの自然に抱かれる― アメリカ西部大絶景エリアを旅する
雄大な景色を流れるコロラド川。グランド・キャニオン国立公園は、1979年に世界遺産に登録された。
隣り合うカリフォルニア州とアリゾナ州は、ヨセミテやグランド・キャニオンなど、国立公園が密集する絶景の宝庫。ロサンゼルスやラスベガスといった都市からアクセスしやすいことも大きな魅力。このエリアを、美しい写真とともにご紹介します。
(写真:小林廉宜/文:安藤菜穂子)
写真家プロフィール
こばやし・やすのぶ
「世界の森」や「未来に残したい風景」などをテーマに、希少な自然や文化を取り続ける。近著は『森 PEACE OF FOREST』。
http://www.yasukoba1116.com
Point 1 広大なヨセミテ国立公園で心を潤す風景に出合う
正面に見えるのは、ヨセミテのシンボルである「ハーフドーム」。1984年世界遺産に登録された。
切り立った山々、すがすがしい高原、深い森、清らかな水を湛(たた)える川と滝。ヨセミテ国立公園には、日本人にもなじみ深い、みずみずしい“緑”の風景が広がります。しかし、異なるのはその規模。面積にしてなんと東京都の1.5倍もの手つかずの大自然が広がっているのです。そこでは、富士山よりも高い4000m級のシエラネバダ山脈の山々や、高さ2700mのドームを半分に切ったような形の岩壁「ハーフドーム」がそびえ、北アメリカで最長の落差739mもある「ヨセミテ滝」が轟々と音を立てます。生き物たちの楽園でもあり、公園内には、1200種以上の植物、100種類以上のほ乳類、200種類以上の鳥類が生息しています。アメリカにモータリゼーションの波が訪れる前の1890年に国立公園に指定されているため、より原始に近い形で自然が保たれているのです。また、1927年からヨセミテ国立公園の撮影を開始し、環境保護を訴えた写真家アンセル・アダムスの存在とその作品も、その後の自然保護活動を推進しました。ヨセミテの美しい風景を切り取ったモノクローム写真をアダムスの公式ウェブサイト(http://anseladams.com)や写真集で楽しんでから、実際に足を運ぶのも一興です。
Point 2 地球そのものの歴史が層をなすグランド・キャニオン
デザートビューからの眺め。
その名前を聞けばすぐに思い浮かぶ、赤土の大地グランド・キャニオン。コロラド川に沿った446kmにわたる雄大な峡谷で、その長さは、日本でたとえれば東京から京都までに匹敵します。今から7000万年前に地層が隆起し、さらにコロラド川の浸食が始まり、約200万年前に現在のような峡谷となったといわれています。浸食によってむき出しになった地球の表面そのものには、約20億年前から2億5000万年前の地層が折り重なっています。その地層の色合いが太陽の光によって複雑に変化するさまは、まさに私たちが生きる地球が、その生命をかけて、気の遠くなるような歳月ののちに創り出した自然の芸術。心を震わせる感動の景色は、一生の思い出になるでしょう。
Point 3 先住民たちが崇(あが)める奇跡の大地へ
鉄砲水が砂岩を削り取った複雑な地形が美しい「アンテロープ・キャニオン」。
2つの国立公園の周辺には、目を見張るような絶景スポットが数多く点在しています。約300mの崖の下を流れるコロラド川が馬蹄(ばてい)型に湾曲しながら約300度の自然なヘアピンカーブを描く「ホースシューベンド」。すぐそばのアメリカ先住民ナバホ族の居留地には、モンスーンの時期の鉄砲水が軟らかい砂岩を削り取って生まれる螺旋(らせん)状の小さな峡谷「アンテロープ・キャニオン」が。その年の鉄砲水の勢いによって様子が変化し、頭上から差し込むわずかな光で浮かび上がる模様は、息をのむ美しさです。同じくナバホ族居留地にあり、聖地と崇められているのが「モニュメント・バレー」。約2億7000万年前の地層が風化と浸食により、モニュメント(記念碑)のような岩山となって点在します。ほかにも、北米の“ウユニ湖”と呼ばれる濃度の高い塩湖の「モノ湖」、車で行かれるカリフォルニアの最高標高地点がある景色のよい峠道タイオガパスから、アメリカで最も標高が低く、最も暑く乾燥しているデスバレー国立公園まで。アメリカ西部は、ダイナミックな地球の息吹が感じられる絶景スポットの密集地帯です。
ジョン・フォード監督による『駅馬車』などの西部劇をはじめ、『2001年宇宙の旅』、『フォレスト・ガンプ/一期一会』など、さまざまな映画撮影が行われている「モニュメント・バレー」。
平地が突然落ち込んだ断崖絶壁の300m下にコロラド川が流れる「ホースシューベンド」。
illustration by Akira Sorimachi
