Travel
2021.03.22

早く行きたい! もっと知りたい!
ヨーロッパの食事情

©Gianni Plescia

1年間あまり、自由に海外旅行に行くことができない日々が続いています。ヨーロッパの人気の旅先である各都市に暮らす人々は、制約のなかでどんな風に食と向き合っているのでしょうか。

今回は、ベルリン、パリ、フィレンツェからコロナ禍における食事情リポートをお届けします。旅することができるようになったら真っ先に試したいおいしいニュースがいっぱいです。

(構成・文:安藤菜穂子)

FROM PARIS
外食できなくても美食はできる! パリの人々の食の楽しみ方

教えてくださったのは…

大島 泉 さん
ライター、コーディネーター、通訳、翻訳者

おおしま・いずみ 東京生まれ、東京育ち。1989年、フランスに移住。現在はパリ郊外のサンジェルマン・アンレイに家族とともに暮らし、パリの食や文化を中心に取材・執筆を行っている。

昨年10月末から、レストランの店内営業が禁止されているフランス。「ずっと閉店しているレストランもありますが、パリの多くの店がテイクアウトやデリバリーに挑戦中です。ミシュラン一つ星で日本人シェフ鍋多光介氏が腕をふるう“Sola”の評判を聞き、注文してみました」と大島さん。前菜からデザートまでの料理と人気のアルコールペアリングのキットに、イラスト入りで調理法を解説した小冊子がセットされています。「料理は湯煎で温めるだけなのですが、食材それぞれの食感が見事に再現でき、味も抜群でした。QRコードで動画にアクセスし、シェフのお手本を見ながら盛り付けるとそれなりに仕上がり、うれしかったです。お皿の上で表現されているものの豊かさや多彩さへの理解が深まる、貴重な体験になりました」。

Solaのディナーセットと、5種類のアルコールセット。2週間に1回メニューが替わる。

フランスでも注目されているのが、発酵食品。「若い女性2人組が始めた“リムーン”は、不ぞろいなオーガニック野菜を使い、キムチをフレンチ風にアレンジした“ソウル・ヴェルサイユ”など楽しいレシピに仕上げています。地産地消を最優先し、近隣農家やスーパーの廃棄食品を有効利用するアプローチも新しいですね」。

リムーンのエステール(右)とリタ(左)。パンデミックを機に、昨年10月に起業。©Arthuro Peduzzi

野菜や果物の量り売りが当たり前だったフランスでは、それが米や豆類、砂糖、ドライフルーツなどにも拡大中。「量り売り専門の食材店も登場しました。量り売りのための紙袋すら資源のムダ、と小さな布袋を持参して買い物をする人も増えています」。どんな状況下でも、食をとことん追求する姿勢は変わっていないようです。

大型スーパーにも量り売りコーナーが登場。

FROM BERLIN
先進的なヴィーガンとサステナブルな食が進行中

教えてくださったのは…

河内 秀子 さん
ライター、コーディネーター

かわち・ひでこ 東京生まれ。2000年からベルリン在住。ベルリン芸術大学卒業後、雑誌やテレビなどの日本の媒体を中心に、ドイツ語圏の文化を発信。発酵やパン作りがブームのドイツで、ザワークラウトなどの漬物に挑戦中。

ヨーロッパ全体の傾向でもありますが、とくに若い女性を中心に、ヴィーガンやベジタリアンが急増中というドイツ。「ひよこ豆自体にヘルシーなイメージがあるためか、フムスが大人気。スーパーの総菜コーナーでも種類が増え、専門店もでき始めています。いろんなトッピングが選べて“映え”るのも人気の理由かもしれません」と河内さん。なんと! チョコレート味のフムスも登場したそう。

ディップではなく料理として人気上昇中のフムス。©Gianni Plescia

また、コロナ禍でバーが閉鎖され、大規模なイベントも中止、友人同士のパーティーもしにくくなった現在、アルコールフリーのドリンクが人気だそう。「ドイツ初のアルコールフリーのバーがベルリンにもオープンしました。ノンアルコールのワイナリー“コローネ・ヌル”のリースリングは、ワインの香りや風味を残しながらアルコールを抜くことに成功し、ドイツ各紙で絶賛されました。結構おいしいですよ」。お買い物は、市場と農家の直売店に人気が集中。パンデミック下の飲食業界で“唯一の勝ち組”と言われているのだとか。

コローネ・ヌルのスパークリング。©Gianni Plescia

FROM FIRENZE
伝統を守りながらも進化していくスローフード

教えてくださったのは…

大平 美智子 さん
コーディネイター&ライター

おおひら・みちこ 武蔵野美術大学卒。商社内グラフィックデザイナーを経て1993年よりフィレンツェ在住。各種メディアにて食やファッション、旅などの情報を発信中。2019年よりトスカーナで環境共生型のオリーブ農園経営にも挑戦している。

パンとパスタが欠かせないイタリアで、グルテン・アレルギーをもつ子どもが増加傾向にあるといいます。複数の大学による研究で“古代小麦”であればアレルギー反応が出ない人が多いことが発表されたため、人気が高まっているそう。「古来農耕が盛んなモンテスペルトリでは戦前まで栽培されていた小麦を作付けし、生産者組合をつくってブランド化。パン屋さんでも一般のパンと並んで古代小麦のパンが売られています」と大平さん。農薬に弱いためオーガニック栽培されていることも人気の理由とか。

古代小麦を使ったパスタやパン。ピッツェリアでもグルテンフリーがマストになっている。

フィレンツェの一つ星レストラン「Ora d’ Aria」のスターシェフ、マルコ・スタービレさんはたった一人で厨房(ちゅうぼう)に入り、テイクアウトとデリバリーでお店を守ろうと奮闘中。「この逆境でも、心を込めておいしいものを作ろうという姿勢に心を打たれ、涙が出ました」。

マルコ・スタービレさん。パスタソースなどの商品開発から行政への訴えまで積極的に活動。
マルコさんのハト料理。購入者が添付されたイラストを参考に盛り付けた写真をSNSにアップして皆で楽しんでいる。

オーガニック&自然農法などの哲学をもって運営される農園も増加中。「家畜を放牧し、野菜や果物を栽培、食材加工も行い、レストランや宿泊施設を併設したユートピアのような農園が人気を集めています」。

のどかな放牧風景が広がるトスカーナ南西マレンマ地方のパガーニコ農園。
illustration by Akira Sorimachi